【マリー・フォ・ミリエルデ】
超お久し振りです。
放置している期間が長くなりましたが再度再開致します。
放置している期間ある程度のストックも隙あらば書いてはいたのでお仕事と応相談しながら頑張ってみます。
「昨日の怪我は大丈夫でしたか、琥珀さん?」
魔物の巣を攻略した翌日の昼、俺とアルセリエは再び冒険者ギルドに来ていた。
「おかげさまで、傷は完治したしたよ。」
「それは何よりです!」
「まぁこの通り、今日も狩りに出ようと思っていたが流石にアルセリエが許してくれなかったがな。」
両手を開きヤレヤレとアクションをして普段より軽装な姿をミラに見せる。
「当たり前です!!
傷の完治云々の話以前にそもそも琥珀様は働き過ぎなんです、偶には休まなければ身体が持ちませんよ!!!」
「ぐうの音も出ないな…。」
「でも丁度良かったんじゃないですか? 明日はランク査定の日でもありますし、良い結果を残す為ならば今日休んでおいても損は有りませんよ!!」
「良い結果ねぇ…。」
アルセリエはヤル気十分だが、俺としてはヤル気がどうしても起きない。
昨日はゴブリンの群に飛び込んで大怪我を負いながら大立ち回りを演じ、その話はミラの耳まで伝わり既に街の住民まで俺の実力は渡りきってしまっただろう。
帰って来れば何時の間にか冒険者証に記録された情報らから討伐数、貢献度共に多くの冒険者の推薦もあってトップであり。
情報とはかくも残酷な物である。
その後、無茶を許した大剣の冒険者と当人である俺は仁王立ちしたミラとアルセリエの前に正座させられ一時間を越えるキツい説教が待っていたのは言うまでも無い。
閑話休題。
ここまで来たのだからいいじゃないかではない、これ以上はいけない。
ランク査定はボチボチで可もなく不可もないと言う落し所に落ち着かせたいのだ。
人の噂も七十五日。迷宮の事もある、これ以上成果を残してしまったらこの街を出た先ですら影響が無いとは言い切れなくなるだろう。
だからボチボチくらいが良いのだ。
高ランクを目指すのなら飛び級ではなく、確実に階段を1つ1つ登って行くのが定石なのである。
「準備が出来たニャ。」
「あ、御苦労様です。」
俺がそんな事をボンヤリ考えていると、猫耳の少女が来てカウンターに2つの革袋をドサリと置いた。
…此処に来た理由を忘れる所だった。
俺達が休日なのに此処に来た理由は勿論昨日の報酬を受け取る為だ。
昨日の祝勝会と称した飲み会は思ったより長くは続かなかった。俺も参加こそしたもののミラの指示アルセリエ監視の下、酒は一滴も飲ませて貰えずただ馬鹿騒ぎして酒を煽る冒険者達を指を咥えて見ているのみだった。
冒険者達は一しきり騒ぎ終わるとゾロゾロと夜の街に消えて行ったのだ。
こっそりと他の冒険者の手引きの下、付いて行こうと動いた俺をミラとアルセリエが見逃す筈もなく俺は無残に置いて行かれてしまった。
その時、明日には報酬を用意しておくから必ず受け取りに来て欲しいとミラを通じてギルド側から連絡があったのだ。
「基本報酬が一万ステラ、討伐報酬と貢献度報酬を上乗せして琥珀さんが54000ステラ、アルセリエさんが37000ステラです。どうぞお受け取り下さい。」
「……。」
「どうしました?」
ミラはカウンターに置かれた革袋を受け取らない俺を不思議そうに首を傾げる。
それはそうだろう、貰える物は貰うがこのギルドの経済事情は既に聞き及んでいるが故に素直に受け取り辛いのだ。
カウンターに置かれた革袋。ミラの口から出た金額は普段の依頼や素材で手に入る金銭感覚とは大きくかけ離れている。
「いや…風の噂で聞いたんだが、このギルドの経済事情がマズいと聞いた。こんなに貰っても大丈夫なのか?」
「ああ、その事でしたか。…確かに、以前ならこの半分も払えていなかったのですが事情が少し変わりまして…。」
「事情?」
「ええ、はい。名前は公表できませんが、とある方が何処かの腕利きの冒険者を雇い迷宮に潜って"霊府の布"を大量に仕入れてくれる方がいらっしゃいまして…。これからも定期的に持って来て下さるそうなのでおかげ様で以前の様な貧乏ギルドを脱却したのです。」
ああ、メイガスさんの事か。もう影響がここまで出ているとは、流石手が早い。
ミラは俺の耳元で嬉しそうに呟くと満面の笑顔を俺に向けた。
ギルド受付嬢としても、働きの報酬を冒険者達へ十分に払えかったのは気になっていた様だ。
心なしか二人組の獣人の少女達も機嫌が良さげである。
「ですから、心置きなくお受け取り下さい!」
「…そう言う事なら遠慮無く貰おう。」
俺はカウンターの上に置かれた革袋を受け取ると一つをアルセリエに向けるが首を振ったのでとりあえず鞄の中に仕舞って預かっておくとしよう。
「そう言えば、他の冒険者達も今日は休みなのか?」
「はい、きっとそうだと思います。昨日の今日ですし、きっとまだ宿屋で眠っているのではないでしょうか。昨日は相当飲んでいましたし、報酬の受け取りに来るのも夕方ではないかと。」
確かに昨日の今日だ、あれだけ働けば今日は流石に休養を取るだろう。
少なくとも俺は働かない。
「琥珀さん達は今日は何方に?」
「昨日、相当に無茶をしたから装備をゴークさんの所で見て貰おうと思ってる。」
「ええ、その方が良いでしょう。昨日冒険者証の情報を見る限り"本当に"無茶をされましたからね。」
ミラは態々"本当に"と声を強調させて俺へ更なる釘を打つ。
「次はもう少し慎重に行動するよ…。」
「勿論です!! アルセリエさん、次琥珀さんが無茶しようとしたら叩いてでも止めて下さい!!」
「はい、お任せくださ―――ああっ、琥珀様何処へ!」
それは昨日大剣の冒険者と共に正座させられて耳にタコが出来る位聞いたセリフだ。
俺はこれ以上言われまいと出口に向かって歩き出した。
「お待ちください琥珀様!」
アルセリエはミラへお辞儀をすると主人を追いかけて行った。
「二人共、楽しそうでいいなぁー。」
「なら専属にでもなればいいニャ。」
私がふと言葉を漏らすと即座に突っ込みが入るが、それは無理だ。
「それは無理でしょ。」
「何故ニャ?」
「このギルドの受付と書類整理が出来るのは私しか居ないじゃない。琥珀さんが他の街に行ってしまったら此処のギルドの私のやっていた仕事は二人にやってもらう事になっちゃうけどいいの?」
二人の獣人の少女は顔を見合わせて考える。答えはスグに出た様だ。
「流石にそれは無理ニャ…。」
(コクコク!)
「ですよねー!」
この街で受付嬢になろうと言う子は居ないだろうし、ずーっとこのカウンターから私が動く事は無いだろう。
さらば私の未来。
◇◆◇◆◇◆◇
「琥珀ちゃん、貴方相当無茶したわねぇ…。」
ゴークさんは眼の前の机に置かれた俺とアルセリエの防具を見て溜息を吐いた。
「アルセリエちゃんのはそうでもないけれど、琥珀ちゃんの防具はボコボコ。
胸当てのベルトは切れかけてるし、表面は傷だらけ。手甲も幾つか切れ目が入っているわ、無理に刃物を掴んだでしょう?」
「あはは…。」
図星である。
一度ゴブリンの剣を掴んで"出来る"と感じてしまったが最後、選択肢の少ないあの場面で少しでも選択肢を広げようと無茶に掴みまくったのだ。
「アルセリエちゃん、昨日やった琥珀ちゃんの無茶を教えて頂戴。」
「はい、勿論です。」
(…此処でもか。)
アルセリエはゴークさんへ事の詳細を事細かに説明する。
勝機を掴むために想定より何倍も多いゴブリンの大群へ単騎で突っ込み傷だらけになりながら敵の魔法使いを討伐した事。
そして、その無茶で勝利できた事。
良い所も悪い所も包み隠さずアルセリエの私情の嘆きを交えながらゴークさんへ打ち明けた。
「―――そのせいで、私も気が気でありませんでした!」
「…成程。それならこの傷も納得ねぇ。」
「たが、本当に助かった。防具を着てなかったら本当に死んでたかもしれない。」
「武具屋冥利に尽きるけれど、あまり一人で無茶はするもんじゃないわよ?
貴方にはもう隣を歩く可愛い従者が居るんだから。」
「…それもそうだ。」
「それじゃあ、しんみりした話はお仕舞!!!
二人の武器も机に出して頂戴、一緒に見てあげるわ。」
ゴークさんの言葉に従って俺とアルセリエは各々の武器を外して机へ置いた。
「あら…あらあらあら。二人共とっても良い武器を持っているのねぇ。」
「私の短剣は琥珀様からの借り物です。」
「あら…成程成程。鉄の剣にミスリル製の短剣、それも不思議な力が宿っている様ねぇ…。」
「わかるのか?」
「えぇ、これでも私はこの街に来る前は中々に名の通ったの鍛冶師だったのよ?
普通と違うって位は理解出来るわ。」
ゴークさんは机に置かれた二振りの剣をじーっと難しい顔で見ていたが、スグに顔を戻して俺達へ振り返る。
「まぁ、詮索は止しましょう。
明日はギルドランクの査定だったわね?」
「ああ。」
「多分剣を使う事は無いだろうけど、提げてないと格好が付かないものね。
明日の朝までに整備を終わらせて一番でギルドに届けてあげるわ。」
「それは助かるよ。」
「残念だけど琥珀ちゃんの防具だけはもう半日だけ頂くわね。
くれぐれも無茶をしない事。」
「ああ、約束する。アルセリエにもな」
「はい!!」
そう答えるとゴークさんは腰に手を当てて微笑ましそうに俺達の姿を映した。
「それじゃあ早速作業に取り掛かりましょうかね。
琥珀ちゃんとアルセリエちゃんも今日はお休みなのだからしっかりと明日に備えてくれぐれも怪我なんてしない様に!」
「はい、わかりました!!」
「宜しく頼むよ。」
後ろ手に俺達へ手を振りながら店の隅に備え付けられた作業場に向かうゴークさんへ別れを告げると俺とアルセリエは店を後にしようと歩き出す。
「そう言えば琥珀様、今から何処へ向かわれるのですか?」
そんな他愛のない話をしながら店の扉に手を伸ばすと、それより先に扉が開け放たれた。
店の扉が開き、開いた扉の先に目線を上げるとそこに立っていたのは一人の燃える様な赤髪を腰まで伸ばし炎をイメージする様な髪留めをした少女だった。
服装はオフである俺とアルセリエの様にラフで、武具屋に来たと言う事は彼女は冒険者か何かなのだろう。
俺がそんな事を考えて固まっていると彼女は偶然鉢合わせて固まる俺を見て、少しだけ慌てた様なあどけない顔を一瞬するとスグに眼をキツくさせピシャリと言い放つ。
「邪魔ですわ。」
「…ああ、すまないな。」
彼女に道を譲る様に身体を隅に退けるとアルセリエも俺に合わせて彼女に道を空けると、彼女はまるで自身の存在を誇示する様にゴークさんの所へ歩き出していく。
こんな歩き方をする奴がどう言う奴か自身の生前の記憶に覚えがあったが下手な詮索をしない様に思考をシャットアウトした。
「あら…?」
俺達の前を通り過ぎる刹那、彼女はその歩みを止めてアルセリエの前で止まる。
「どうして"魔物憑き"がこんな所にいるのかしら?」
赤髪の少女はアルセリエの白髪を睨みながら忌々しく吐き捨てるが、アルセリエは眉一つ動かさず何も言い返しはしない。
アルセリエにとってこんな事を言われたのは初めてではないのだろうが、言われて気持ちい物ではないだろう。
「うっ…。」
何も意に介さずゆっくりと顔を上げて真っ直ぐ閉じた目線を向けるだけのアルセリエを見て赤髪の少女は後退る。
きっと俺の命令が無ければアルセリエは事を荒げる事は無いだろう。
だがこのまま放置すれば互いに無駄な時間を過ごすだけだろうと思い、俺はアルセリエの頭の上に手を置いて助け船を出す事にした。
「先程聞き捨てならない言葉がその口から飛び出した気がしたが、俺の従者に何か用か…?」
そう言って少しだけ彼女に怒気を込めて言うと、彼女は驚愕表情を浮かべた後大きく笑い飛ばした。
「じゅ、従者…? アハハハハ、貴方良い趣味をしていらっしゃるのね!!!
私の名に懸けて訂正は致しませんわ。"魔物憑き"、そう私は言いましたの!!!
何か文句が御座いまして?」
「…そうか。」
そう言って俺はゆっくり手を動かすと少女がビクリと身体を震わせる。
「あまりそんな言葉を口に出さない方が良いぞ、アルセリエが気にしていないのなら俺は気にしないが他の奴ならそうはいかないだろうからな。」
俺は動かした左手をポケットに突っ込み残った手で頭を撫でて諭すと、店の外へ踵を返し続く様にアルセリエも歩き出す。
「えっ…?ちょ、ちょっと待ちなさい!!!」
「何だ、何かまだ用があるのか?」
「あ、えっ…」
俺の思い掛けない行動に戸惑っている彼女の更に向こうにはゴークさんが何故かニヤニヤしながら此方を見ている姿が見えるがこの際無視しよう。
いくら待とうとも彼女から言葉が返って来る事はなかったので今度こそアルセリエを連れて店を後にする。
何やら後ろから声が聞こえるが、一々気にしていたら時間がいくらあっても足りないだろうから無視を決め込み俺とアルセリエはシエロの街へ姿を消した。
◇◆◇◆◇◆◇
「ちょっと待ちなさいったら!!!」
いくら言葉を叫んでも眼の前から去って行く人の歩みを止める事は叶わず静かに店の扉は閉められた。
「……ハァ。」
「もう気は済んだかしらお嬢ちゃん?」
「ひっ…!」
彼等が去って溜息をついた私の後ろに何時の間にか立っていたエプロンを付けた巨漢に急に声を掛けられて驚いて声が出てしまった。
「私の名前はゴーク。赤髪と焔の髪飾りから察するに貴女がマリーちゃんでいいかしら?」
そう言いながら頬に手を当てて首を傾げる眼の前の男に私は驚きを隠せずにいた。
「う、嘘よ…!! 貴方の様な人が彼の鍛冶師ゴーク・ベルフなわけ…っ!!」
「あらあら、初対面なのに随分な物言いねえ。
まぁいいわ。キルド長さん伝いに頼まれた注文の品は既に用意出来ているからカウンターに来てくれるかしら?」
そう言って私を先導する目の前の男に付いて行くとカウンターの上には既に私が注文していた杖とローブが既に用意されていた。
赤と黒で燃え盛る炎を彷彿させるようなデザインのローブに加え、杖は透き通る様な蒼い水晶と朱い魔法石で装飾がなされていた。
「どうかしら? 折角のお客さんだものデザイン料はまけておくわね。」
「み、見事だわ…。」
その出来に思わず息を呑んだ。
まさかこの条件内でこれ程の物を用意してくれるとは思っていなかったのもあるが、予想が予想を超え過ぎたのだ。
私は無言で懐から通貨の入った袋を取り出すとそのままカウンターに置くと、眼の前の男の認識を改めないといけないと感じた。
「先程の非礼をお詫び申し上げますわゴーク様。」
「いいのよいいのよ。初めて会った人の反応は大体そう言うものだから気にする事はないわよ。」
笑いながらそう言うゴーク様の懐の広さを感じる、従者を馬鹿にされてあまつさえ私の頭を撫でてまるで子供の様に諭して来た男とは大違いだ。
「文字通り、貴女の注文通りに作ったからあまり無茶はしない様に。」
「ええ、承知しましたわ!!!
…それと、この件は御内密に。」
「ええ、隠しておきたい秘密は誰にでもあるものね。」
私はついに自分の物になった杖を自分でも分かるくらい上機嫌で掴んでその具合を確かめていると、ゴーク様から質問が飛んで来た。
「そう言えば、もう一人はどうしたのかしら?
ギルドからの伝達で聞いた話だと"明日"はもう一人居たと思うのだけれど。」
「あ、ええ…あの大男なら自分の装備を既に所持していますので既に森へ狩りに出掛けましたわ。
明日は大事な日だと言うのにあの男は…田舎者の考えは分かりませんわ。」
「…それはタイミングが悪いかも知れないわね。」
「それはどう言う…。」
ゴーク様は難しい顔をしたあと、昨日あった特殊討伐依頼についてポツポツと語り出す。
シエロ冒険者ギルド総出でゴブリンの巣へ討伐に出向いた事、それにその内容が調査と大きく違っていた事。
そして一人の新人の低レベル冒険者が百体程は居るだろうのゴブリンの群相手に大立ち回りをかまし、劣勢から勝利を勝ち取った事。
「―――そんな新人の方がいらっしゃるのですか。」
「流石の貴女も気遅れしたかしら?」
マリーと言う少女の杖を握る手には震える程の力が入っている。
それは私が良く知っている感情だ、それは気後れなどではない。
今も昔も冒険者と言う物は武勇伝を好む、そしてそれが自信と同じ"新人冒険者"であったのならそこから来る感情は"対抗心"を置いて他にない。
「ゴーク様、これは気後れ等ではありません。
むしろその様な素晴らしい方がいらっしゃるなら俄然燃えますわ!!!
そんな方こそ、このマリー・フォ・ミリエルデの名を知らしめるのに、そして好敵手に相応しい!!!!」
私がそう言うとゴーク様は先程とは違って少しだけ獰猛な笑顔を見せる。
「ゴーク様、その方の名前と特徴をお教え下さい!!!」
「ええ、良いけれど…その必要はあるかしら?」
「…?」
ゴーク様は分からない事を言った。
会った事がない、名前も知らなければ、姿もしらない。
なのにその必要がないとはどう言う事だろうか。
まるで既に会っている様な言い草である。
先程会った白髪の少女を連れた黒髪の青年の姿が一瞬過るが、それはないだろうとその考えは虚空に消える。
「名前は"目黒琥珀"」
「目黒、琥珀…。」
この周辺国では見ない珍しい名前であるが、家柄の関係上様々な事を学ぶ機会があったのでスグに思い当たったのは東国の人間じゃないかと言う推測だ。
小さい島国ながら独自の文化を持つ国の名で一度だけ東国出身の人間と会った事がある。
珍しくはあるが、この街で冒険者をしている事が有り得ないかと聞かれればそれはそれはない。
私と同じ様に様々な事情を持つ者達が何人もいるのだから何かしらの事情でこの国で冒険者をしていても可笑しくはないのだ。
「髪は黒。」
「…髪は黒。」
「外見だけ見るのならそこまで強そうには見えないわねえ。」
「…成程。」
「そしてこれが一番の特徴かしら。」
そう言ってゴークさんは口を少しだけ歪めた。
「白髪の魔法の才能に富んだ盲目の少女を従者に連れているわ。」
「…っ!!」
ああ、そんな奴探すまでも無いだろう。
「…ゴーク様も良い趣味してますわね。」
「誉め言葉として受け取っておこうかしら。」
そう言ってゴークさんは可愛い物を見る様にニコニコ笑う事しかしない。
「それじゃあ、ついでに言っておこうかしら。」
「これ以上まだ何か…?」
ゴーク様は完全に楽しんでいる、これ以上伝える事があるのなら此処まで知ったのだ教えて貰おう。
私も満更ではない、今の私は貴族らしからぬ顔をしている筈だ。
「―――明日のランク査定、琥珀ちゃんとアルセリエちゃんも参加するわよ。」
「……そう、ですか。」
「私は直接見たわけじゃないけれど、聞いた話とあの子がうちに持って来る装備を見る限りランクDスタートは固いわね。もしかしたらCスタートも夢じゃないのかもしれないわ。」
「…フフフッ、上等ですわ。
こうなればDでもCでもランクは関係ありません、明日のランク考査は目黒琥珀を打ち負かす事で私の新たな門出と致しますわ!!!」
私は杖を強く握ると全身の魔力を滾らせる。
打倒目黒琥珀、これが私の…マリーの物語の第一歩となる事だろう。
「……若いって良いわねぇ。
こう言うのは互いに研鑽を積んでこそよね。」
マリーの事情を知る一人であるゴークと言う人間は人の背を押さずにはいられない。
今は若い新人冒険者を見守るただの鍛冶師である。




