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目黒琥珀の異世界転生論  作者: ウェハース
第二章【極小国家・シエロ】
39/45

【従者達の衝突】

少しだけギャグ入ってます。



 「これで三日分ですか、大したモノですね…。」


 俺達が白霊剣を手にして早二日が経過した今日、溜りに溜まったレイスの素材を持って俺とアルセリエはメイガスさんの下を訪れていた。

 

 「メリィ、少し数えるのを手伝ってください。」


 爺さんの所と比べれば二回りは大きい机の上には積まれた素材が山を築き、その姿にメイガスさんは目を丸くしている。

 俺達はあれからも連日迷宮に通い詰め第一階層で朝から夕方まで狩りを行い、素材を集め続け、気付けば俺の魔法の鞄の容量が限界に来るまで集めてしまっていた。

 狩りの途中でいきなり限界に来た事で溢れた素材は脇に抱えて爺さんの居る小屋まで運び込み、別の袋に入れて此処まで輸送しそれが今机の上に並んでいる。

 

 メイガスさんとメリィは大急ぎで素材の数を数えて机の上の山を減らしていくが、俺はここで二人へ更なる宣告を降した。


 「まだ鞄の中にあるので、机の上に広げて行ってもいいですか?」

 「まだあるのですか!!?」


 メイガスさんはバッと俺の方へ振り返ると『マジかよ…』と言いたげな顔で俺を見た。

 俺は腰の鞄を外して中から素材を一つ取り出してメイガスさんにチラリと見せると、メイガスさんは呆れてか大きな息を一つ吐き、顔つきを引き締めた。


 「…良いでしょう、久方振りに商人の血が騒いで参りました!!

  幾らでも出してください、全て綺麗に捌いてみせましょう。」

 

 メイガスさんとメリィは顔を合わせてコクリと頷き合うと数え、捌いていくスピードは更に加速した。


 「アルセリエ、どんどん容赦なく並べてやるぞ。」

 「はい、琥珀様!!」


 俺とアルセリエは腰から降ろした鞄の中に二人して腕を突っ込むと、素材を無造作に鷲掴みにして取り出しては机の上に並べて行った。

 

 ・

 ・・・

 ・・・・・


 「377、378、379…380。」

 

 メイガスさんは一枚一枚数えては綺麗に畳んで箱の中に詰めていき、隣のメリィは帳簿を付けながら買取金額の計算をこなしていく。

 淀みないそのコンビネーションは素直に驚嘆に値するだろう。


 「4、411枚。異常発生しているとは聞いていましたが、たった三日で良くここまで集めたものだ…。」

 「御苦労様です。」


 俺はメイガスさんを労うと、『これくらいどうと言う事はありません』と答える。

 

 手に入れた素材の数を数えていた訳では無いが、正直に言うのなら予想以上の数になった。

 メイガスさんが言う様に異常発生して狩っても狩っても何処からともなくレイスは際限無く現れていた

 だが、流石に三日間も急ピッチで狩り続けたせいか流石に初めの頃の様な速度で現れる事は無くなり迷宮内の総数であれば随分とその数は安定してきている。

 なので、三日で400越えなんて今回限りだろう。次からはその半分、いやもっと減るかもしれない。


 そんな事を考えていると、メリィの計算が終わった様でお金の入った革袋が机の上に置かれた。


 「411枚。一枚当たり800ステラ、計328800ステラで御座います。」

 「お受け取り下さい、琥珀殿。」

 「無理を言って申し訳ない。」


 そう言って革袋を受け取り鞄の中に仕舞い込むとメイガスさんは『此方も儲けさせて頂いていますから、お気になさらずに。』と言った。

 

 メイガスさんはメリィに何か命令をすると、彼女は箱に詰め込まれた素材を次々に部屋から運び出していく。

 

 「既に冒険者ギルドには私の名前で話を通してありますので、メリィにはギルドへの輸送をお願いしました。」

 

 流石商人、手が早いな。


 「時に琥珀殿。ドルゲ殿がこの街の騎士団の長の座に就いた事は御存知ですかな?」

 「ええ、勿論。」


 今日より四日前、ギルド内で騎士団と冒険者との間で起こった一件。

 その最終的な仲裁に入ったのがドルゲ本人だ、その流れでアイツが前任者を斬って団長の座に就いた事知った。

 俺も事の中心に居たのでその時のドルゲの姿は今でも覚えている。

 生傷だらけの身体にボロボロに端の破れた青白のコートを羽織り、その戦いの激しさはきっと俺の想像を超える物だろう。

 だがその末に勝ち取った、"騎士団長"と言う地位を。

 世界一の騎士団を作ると言うドルゲの大きな野望は眼に見える確かで大きな一歩を踏み出したのだ。

 

 「実は今朝、ドルゲ殿が此方に来られましてな。」

 「と、言うとその要件はあの二人ですか?」

 「えぇ、今朝はドルゲ殿もお忙しいご様子で夕刻に迎えに来ると言って二着の制服を置いて行かれました。」

 

 と言う事はもう少しすれば経てばケルンとケリアの二人を約束通り、迎えに来るのだろう。

 

 「実は去り際に一つお願い事をされましてな。」

 「願い事?」

 「はい。その願い事と言うのがですね―――此方になります。」

 

 メイガスさんが『入って来て下さい』と言うと、先程メリィが出て行った客間の扉が開く。


 「成程、ドルゲの奴…。」


 客間が開くとシエロ騎士団を象徴する青白のコートを羽織った二人の少女が現れる。

 勿論その二人とはケルンとケリアだ、ケルンは背に大剣を背負いケリアは腰にアルセリエ同様短剣を差している。

 二人が俺とアルセリエの前まで来るとメイガスさんは『どうでしょう?』と両手を広げて見せる。

 

 「立派だ。と言う言葉以外は出て来ないよ。…ドルゲの奴め。

  ドルゲの願いはきっと、俺とアルセリエも込みで二人の騎士になった姿を見せて欲しい。と言った所でしょうかな?」

 「御名答ですな。」


 俺がそう言い当てて見せるとメイガスさんは屈託の無い笑顔で正解だと答える。

 

 ドルゲが自身より先に俺へ彼女達を差し向けた意図は二つある。

 一つは純粋に友として二人を俺に見て欲しいと言う事。

 そしてもう一つの意図、この願いのミソは"アルセリエにも"と言う所にある。

 アルセリエは俺の従者、ケルンとケリアはドルゲの従者、即ちこの二つは言い方を変えれば互いの主人を守る守り手としてライバルと言える。

 つまり、俺への従者自慢も込みでそれ以上にアルセリエに見せる事によって互いに対抗心を芽生えさせる事が目的だろう。

 

 「琥珀様、お久し振りで御座い―――」

 「琥珀ぅー!!」

 「あっ、待ちなさいケリア!!!」


 礼儀正しく俺に挨拶をするケルンを他所に妹のケリアはドルゲの時同様、俺に向かって飛び込んで来る。

 相変わらず両手を広げて抱き着いて来ようと走り出す妹とオロオロとそれを止めようとする姉の姿は微笑ましい。

 だが忘れないで欲しい、そしてどうか覚えておいて欲しい。それを簡単には許さない者が一人俺の傍に居る事を。


 「止まって下さい。」


 椅子に腰掛けた俺に飛び掛かろうとしていたケリアの前にアルセリエは遮る様に立ちはだかる。

 ドルゲの意図がアルセリエにはしっかりと理解出来ていたのが良く分かる行動だ。

 ケリアはアルセリエが現れた事でピタリと止まると不思議そうな顔でアルセリエの顔を見上げている。

 逆に姉のケルンは初めからドルゲの意図が分かっていたのか、アルセリエの姿を見定める様な眼で見ていた。

 

 「いけませんよケリア、琥珀様には優秀な従者が付いておられる。」

 「むぅ…。」


 ケルンはケリアを諭し、不機嫌になりながらも渋々それ従う妹の頭を撫でて自身の下に引き寄せるとアルセリエの前に立って手を差し伸べた。


 「自己紹介が遅れたな。私はドルゲ様の従者ケルン、此方が妹のケリアだ。先程の妹の不躾をどうか許して欲しい。」

 「私は琥珀様の従者、アルセリエと申します。」


 二人はしっかりと互いに手を繋ぐ。

 その姿を傍から見ている俺とメイガスさんは顔を見合わせながら互いに口元を緩めた。


 「私の下から飛び立った子達がこうも…。商人冥利に尽きますなぁ。」

 「まだまだ驚くのは早いよ、メイガスさん。だがまぁ、こう"らしい所"見せられると主人としては嬉しい物があるよ。」

 

 これで互いの従者の顔合わせは終わった。

 俺もドルゲも後は彼女達がどう成長していくかだけが何より楽しみで仕方がない筈だ。

 

 歳こそ違えど、彼女達の間にある想いは同じ。

 手を握り合ったケルンとアルセリエの間には共に同じ"主人の為に"と言う言葉だけが心の中に響いていた。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 「さぁ、行きましょう琥珀様!!」

 「あまり急ぐと転ぶぞ、アルセリエ。」


 俺達はメイガスさんの店を後にして、武具の商店が立ち並ぶ街の一角に来ていた。

 アルセリエはメイガスさんの店であの二人に出会い従者としての対抗意識が出来上がったのか普段よりテンションが高い。

 元々大きな収入が入ったら防具を購入すると考えていたのだが、朝とはえらい違いである。

 どうやら二人の騎士の装備を見て当てられてしまった様だ。  


 「よし、着いたぞアルセリエ。」


 メイガスさんの店から街を半周、コルエさんのお店や俺達の泊っている宿があるエリアまで戻って来た。

 以前コルエさんの店に行く為に通った際、ここに武具を取り扱う店がある事は調査済みだ。

 

 俺とアルセリエは店に展示された武具を見ながら、その街道を歩く。

 見渡せど見渡せど、どれもこれも俺の眼には外見以外の違いが分からない。

 アルセリエも外見までしか視えていないので、俺と大差ないだろう。

 こんな事ならばエルザさんや他の冒険者辺りに事前にオススメの店を聞いておくべきだったと後悔する。

 こう漠然と歩いていても仕方が無いので品揃えが良さそうな、店が大きく飾ってある武具の数の多い所に入る事にしよう。


 俺は立ち止まって辺りの店を見渡して幾つか候補を絞る。

 

 「アルセリエ、今から幾つかの店を指差すからどの店が一番武具の展示してある数が多いか確認してくれ。」

 「分かりました!!」


 俺が順に指を差すのに続いてアルセリエが人通りの先の店の中を次々に視ていく。

 

 「どうだアルセリエ。」

 「あちらのお店が良さそうです!」 


 そう言ってアルセリエが指差したのは一番端の店だった。

 

 アルセリエが差した店の前まで来ると確かにデカイ、そして多い。

 店の中は言わずもがな、店先まで並べられた武具がこの店の品揃えの良さを物語っているのだ。

 

 俺達は店の扉を開き中に入ると金属特融の匂いが鼻をくすぐる。

 店の中は外で見るより壮観で、中には大中小様々な武器や防具が立て掛けられそれだけではなく冒険者が狩りで使うであろう小物まで揃っていた。

 メイガスさんの店を出てから楽しみで楽しみで仕方が無かったアルセリエは店に入った途端見て周りたくてウズウズしているのか俺の横でプルプルしている。


 「見て来てもいいぞ、アルセリエ。」

 

 その姿に苦笑いしながらもアルセリエに許可を出すと『行ってきます!』と言ってすぐ武具の山に消えて行った。

 俺は去って行ったアルセリエの背を見送ると、自身も何か目ぼしい物を見つけ様と歩き出した。 


 「……。」

 「うぉっ!!?」


 歩き出した足は一歩目で急停止する。

 歩き出そうとして振り返ると目の前に厳つい男の顔が至近距離まで迫っていたいたのだ。

 眼の前の男は俺の姿を頭の先から足の先まで舐める様に見ると一歩だけ距離を取って腕を組んで俺を見定めている。

 

 「な、何か御用ですか?」

 

 眼の前の男は俺の声にも微動だにしせず腕を組んだまま俺を見て何かを考えている。

 俺はこの時、アルセリエに許可をだした事を心から後悔した。


 (この静寂をどうにかしてくれアルセリエ。)


 そんな嘆きも武具を物色するのに夢中なアルセリエには届かない。


 「黒い髪、若い冒険者、それに連れの幼い白髪の従者…。まさか貴方が!!!」

 

 眼の前の男の筋肉で膨張した太い腕が俺の両肩を強く握る。


 (あ、今肩がゴリッって…。)


 「貴方が噂の新人冒険者、目黒琥珀ちゃんね!!!!」

 「ヒッ―――!!?」


 男の両手は肩から離されて、両腕の剛腕が俺の上半身を包み込む。


 (オネエだと!!? 勇者共、何てモンを輸入してやがる!!)

 

 異世界にオネエなんて文化は無い、あって欲しくない。

 だとするならこんな物を持ち込んだのは転生人、その中でも特に世間に影響力が有りそうなのは過去に居たと言う勇者共だろう。

 しかもこの男は外見はそのままに口調だけがオネエなので更に嫌悪感がハンパじゃない。

 こんな特異点を残して死んでんじゃねえ。

 

 「い、痛い…。」

 「あら、ごめんなさい。」


 申し訳程度の作業エプロンがかろうじで俺の許容範囲を支えている。

 オネエの両腕から離されると、俺は大きく肩を落とした。


 「私はこの店の店主、ゴークよ!!」

 (わーい、名前も強そう。)


 どうやらこの人はこの店の店主らしい。

 見ず知らずの人がいきなり抱き着いては来ないかと思ったが、店主ではなくともこの人は普通に抱き着いてきそうだ。


 「…目黒琥珀と言います。それでゴークさん、噂とは?」


 俺が店主に噂について聞くと思いがけぬ言葉が飛び出して来た。


 「先日、前の騎士団の連中三人相手に大立ち回りだったそうじゃない!!

  冒険者達と、新しい団長のドルゲちゃんが誇らしげに言っていたわよ。武器も持たずに二人を伸して、もう一人も直接戦わずして勝利を収めたって。」


 ドルゲめ、物は言い様だな。

 前者二人は泥酔での自滅、最後の一人もドルゲが来たから戦わずに済んだだけ別に俺の手柄と言う訳でもなかろう。

 事態を収めたのは間違いなくアイツの筈だ。


 「…もうそれでいいです。」


 俺は言い訳を諦めた。


 「それで琥珀ちゃん、今日は私のお店に何をお求め?」

 

 思いがけぬ事があってこの店に来た理由を忘れる所だった。


 「実は俺とアルセリエの防具を探している。

  今まで防具を付けずに狩りをしていたんだが、お金に余裕が出来たから買いに来たんだ。」

 「成程成程。琥珀ちゃんと従者ちゃんは普段どの辺りの敵を相手にしているのかしら?」


 レイスと答えそうになったが、言葉を飲み込む。

 シャーロットと一緒に狩りに行く事を考えれば上はオーク下はゴブリンまで狩っている。

 アルセリエも俺に付いて同じ敵を相手しているので特に俺と変わりは無いだろう。


 「普段は街の外の森でオークやゴブリンを狩っている。」

 「オークまで狩れちゃうのね。ならある程度耐久性も…。ちょっと値段が張るかも知れないけどいいかしら?」

 「…高すぎなければ。」


 異世界への偏見だが、防具はピンからキリだ。

 安いのから高いまで十色、上を見上げれば果ては無い。

 高くとも20万程でどうにか見繕ってくれないだろうか…。


 ゴークさんはカウンターまで小走りで戻ると、紙の束の中から数枚を選んで取り出した。

 カウンターから手招きで俺を呼び寄せる姿も完全にオネエである。


 「今頃の若い子にはヘルムはあまり流行ってはいないわね。全身鎧も低レベルの内は重さで機動力が殺されちゃうから無し。

  だとするならこれなんかどうかしら?」


 カウンターの上に出されたのは二枚の紙。

 そこに描かれていたのは現代の手袋の様な形をした手甲と胸当て式の防具である。


 「手甲の方は手袋にリザードの鱗を編み込んで作った物よ。伸縮性も高くて、衝撃の吸収も高い。

  何よりダサくない、別の街では若い冒険者には人気の品よ。

  胸当ては青銅にオークの棍棒を溶かして混ぜ込んだ一品。当のオークの棍棒の一撃を胸に貰っても壊れる事は無いでしょう。

  此方も服の中に着れるから、手甲同様ファッション性に事欠く事は無いわ!!」


 まさか異世界の人間から"ファッション"と言う単語が聴けるとは思わなかった。


 だが、ゴークさんが言う様な性能ならば特に文句は無い。

 問題は値段である。作り手の価格が入る以上どれくらいかなんて予想は無意味だ。


 「そうねぇ…今はこの二つかしら。頭、腕、肩、胴、足、守る所は他にも様々あるけれど其方を気にして攻撃に当たってしまっても意味は無いから後は自身の成長に合わせて後々揃えて行くと良いわ。

  手甲と胸当てを二人分で…9000ステラでどうかしら?」

 「えっ…。」


 数万ステラは覚悟していた俺の覚悟は軽く打ち破られる。

 数万所か一万にすら切っている価格に俺は驚きを隠せなかった。

 

 「特別料金よ。前の騎士団を追い出してくれた琥珀ちゃんとドルゲちゃんには感謝しても感謝しきれないの。

  だから素直に受け取ってくれないかしら?」

 「そう言う事なら、今度からも贔屓にさせて貰うよ。」

 「あら、嬉しいわね。採寸を取りたいから、従者ちゃんを呼んでくれないかしら?」


 言い訳を諦めた俺はそれを受け取るしかない。

 ならせめてこの街に居る間は贔屓にさせて貰おう。


 俺はゴークさんに言われた通り、店の何処かに居るであろうアルセリエの名を呼んだ。


 「あれ…?」


 アルセリエの返事が返ってこない。

 普段なら上機嫌で姿を現してくれるはずだが…。


 「もしかして従者ちゃん、アレを見ているのかしら?」

 「アレ?」

 「ええ、付いて来て。こっちにこの店のとっておきが置いてあるの。」


 俺は宛もないので、言われるがままにゴークさんに付いて行った。


 ・

 ・・・

 ・・・・・


 「…。」


 いた。

 ゴークさんが睨んだ通り、アルセリエはとある防具の前で呆然と立っていた。

 

 「アルセリエ。」

 「えっ、あ…すいません琥珀様!!」

 「いや、別に構わないよ。」


 俺がアルセリエに声を掛けると驚いた様に振り向いて頭を下げた。


 しかし、アルセリエが立ち止まる理由は何となく理解できる。

 眼の前に飾られた防具は女性用に作られた防具だが、男性の俺ですら眼を止めてしまう。

 真っ白なドレスをモチーフにしつつも黒と茶の色が所々に溶け込み、何かに例えるのなら動き易く実用的な防具に改造されたゴスロリ衣装に近い。

 少し長めのスカート部分の前は開けられ、長めのブーツが装備されたその姿は飾られているだけで人の目を引く。

 

 成人になったアルセリエを想像したが、白い髪も相まって間違いなく似合うだろう。

 

 「あら、購入してくれるのかしら?」


 そう言って俺の肩に手を置くゴークさんへ恐る恐る値段を聞いてみた。


 「そうねえ、私の作ったこの"バトルドレス"。作ったは良いけれどこの街じゃ誰も買ってくれないのよねぇ。

  琥珀ちゃん達になら50万ステラでなら売ってもいいわよ。使った素材、服の内側に仕込んだダメージ軽減の術式が複数、そして私のデザイン料。

  売買が盛んな場所で取引すれば倍は下らないと思うわ。」 


 50万か、今の全財産を叩いても全然足りない額である。

 

 「従者ちゃんが―――」

 「アルセリエです!」

 「あらごめんなさい。アルセリエちゃんが大人になるまでちゃんと待っててあげるから、買うか買わないかはその時に決めると良いわ。」


 確かにそうだ。

 もしもアルセリエが成人した時、未だこの装備が欲しいと思うのならこの街まで戻って来て買うのも良いだろう。

 俺はその旨をアルセリエに伝えると、笑顔で頷いた。


 「さて、それじゃあアルセリエちゃんの採寸を始めましょうか!!」

 「!!?」

 

 ゴークさんは両手を広げてアルセリエを持ち上げるとカウンターまで連れて行ってしまう。


 俺の採寸はと聞いた所、抱き着いた時に既に測ったらしくそれを聞いたアルセリエはゴークさんの肩の上でジタバタと随分暴れていた。



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