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目黒琥珀の異世界転生論  作者: ウェハース
第二章【極小国家・シエロ】
30/45

【魔物憑き】



 「琥珀さん、昨日(さくじつ)は申し訳ありません。」


 今日、俺とメイガスさんは隠された地下室で発見された子供達を助けて、あれから一日が経過していた。

 

 昨日、子供達へポーションを与えると程なくしてメイガスさんが数人の奴隷達を連れ大慌てで駆け付け子供達を連れて行った。

 俺はと言うと、メイガスさん達を手伝い最後にポーションを与えた白髪の少女を抱えて地下から出ると事前に用意されていた寝床へ連れて行く。

 そこにはメリィと数人の奴隷達が子供達を受け入れる為に待っていて、彼女達に子供達を任せると俺は部屋を出た。

 

 メイガスさんが部屋を出ると待っていたが、俺の顔を見ると用事は明日にして今日の所は宿へ戻り身体を休める様に勧めてくれた。

 きっと、余程傷心した表情をしていたのだろう、普段は明るく帰りを迎えてくれるエルザさんですら宿に戻った俺の顔を見ると、一歩引いて俺に話しかける事は無かった程だ。


 寝床へ戻ると沈む様に眠り、それでも次の朝がやってくる。

 目を覚ますと昨日起きた事が脳裏を巡り、また傷心してしまいそうになるがそれ以上に昨日助けた者達の安否が気になり寝床から重い身体を上げて顔も洗わず、朝食も取らずにまたメイガスさんの下にやって来た。


 そして、現在に戻る。


 「いえ、それより昨日の人達は?」


 俺は一番に気になる事を聞くとメイガスさんは笑みを浮かべて俺に答える。

 

 「それは御安心下さい。元気はどうかと聞かれればまだまだこれからですが、皆命に別状は有りません。特に地下に監禁されていた子供達は琥珀殿の処置のお陰か回復が早く、既に起き上がり、自身の手でで食事が出来る子も居る程です。」


 その言葉を聞くと、心の底から安心感が沸き上がる。

 重く圧し掛かった肩の荷が下りたのか、俺は大きく息を吐くとメイガスさんも昨日に比べて余裕があるのか言葉が昨日比べ随分と流暢に出て来る様だ。


 「漸く何時もの顔に戻りましたな。昨日、部屋から出て来られた琥珀殿はそれはもう酷い顔をしておりましたからなぁ。」

 「誰しも、何の罪も無い人が死ぬのは見たくないモノでしょう。」


 メイガスさんは"ハハハッ"と笑うと真面目な顔で"確かに"と言葉を紡いだ。


 「所で、昨日は何か私に御用事があった様でしたが?」

 「ええ、昨日までは仲間を増やそうと考え、その手段として下見に来たのですが…昨日あんな事があった後ではメイガスさんも今すぐに商売の話など出来ないでしょう?」


 俺がそう言うと、メイガスさんは真っ直ぐと俺の瞳を見つめその心境を語る。


 「いえ、実は私はそう思ってはおりません。」


 メイガスさんの答えは俺の考えていた物とは違う。


 「以前、この街へ向かう道中で琥珀殿に話したと思いますが、奴隷になった者達には未来があり、その売り手である私はこの眼で買い手を見極める。購入された奴隷をぞんざいに扱う輩には絶対売ったりはしません。」


 それは以前奴隷の認識に偏見を持つ俺に自身の商人論を熱く語ってくれた時の話だ。

 あの時はその熱意に当てられて現世では真っ黒である認識であってもこの世界では更に悪い物と良い物が存在し純粋に奴隷になった者達の未来を憂う者とそうで無い者が居る事を知って、その認識を少しではあるが改めた。

 

 「琥珀殿になら私は奴隷達を何時何時(いつなんどき)でも送り出せると考えています。」

 

 それはメイガスが放ったこれ以上無い位の真っ直ぐな気持ちである。


 「失礼ながら、昨日私が地下に辿り着いた際に少女を抱き涙を流す琥珀殿の姿が今だ私の瞳には焼き付いております。

  あの涙が流せるのなら、間違いはない。どうです、昨日助けた子供達に会ってはみませんか?

  彼等も琥珀殿にお礼を言いたいと仰っていました。」


 そう言ってメイガスさんは俺に提案する。

 彼は俺へ精一杯手を伸ばし、俺の背を押してくれる。

 ここまで言わせて、真っ直ぐ俺を見据えるメイガスさんの瞳に嘘は付けなかった。


 「俺も子供達には会ってみたいと思っていたんだ、是非宜しく頼むよ。」

 「ええ、では。」


 メイガスさんは笑顔で俺に返答を返すと共に立ち上がり、客間を後にした。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 どうやらこの部屋に、お客さんが来た様だ。


 先程まで食事をしていた子供達がワラワラと一人の人の下へ集まって行くのが、私には確認できた。

 この部屋に来た人は、メイガスと呼ばれる人でも彼が抱える奴隷達のどれとも違う。きっと、昨日私達を助けてくれた人なのだろう。

 ありがとう、ありがとうとお礼を言って泣きながら抱き着く子供達を諭すように困ったような声色を奏でて律義に一人一人の頭を撫でている。


 私もあの場所に向かい、お礼を言わないといけないのだけれど…私は眼を閉じてただ椅子に座っているだけだ。

 私はあの場所に向かう事が出来ないだろう。いや、向かうべきではない。他の子供達に嫌われている事もあるがそんな事は然したる理由ではなかった。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 俺が部屋に入ると子供達の目線は見慣れない俺へと注がれていた。

 どうやら俺の事は事前に聞いていたのか、食事中であったのに関わらず、食事をそっちのけで俺の下へ次々に抱き着いて来る。

 こんな事は初めてだったので困惑してしまうが、立ち膝になって目線を合わせ一人一人の頭をしっかりと撫でながら子供達のお礼の言葉に不器用ながらも応える。


 まだまだ子供達の身体は痩せ細り、体調は万全とは言えないが昨日の事を振り返ればその眼にもその肌にもしっかりとした生気が宿っている。

 どのような経緯が子供達にあってここに居たのかは知らないが、あの所業を見るに碌な方法で連れて来られたのは間違い無いのだろうが子供達の眼に生きる意志が宿っている所を見るとメイガスさんの手腕は流石と言わざる得ない。


 「ねぇねぇ、お兄さん。一緒にお話しをしましょ、外のお話を聞かせて欲しいわ!」


 一人の少女がそう言って俺の手を握ると周りの子供達もそれに呼応する様にワラワラと集まり瞬く間に両腕をと服の袖を取られてしまう。

 メイガスさんを見ると、彼は笑顔で"是非聴かせてあげて欲しい"と言ってくれるのでその言葉に甘えてる事にする。


 俺は子供達に手を引かれるがまま部屋の奥まで連れて来られる時、景色の隅にある一つの姿を"見た"。

 

 それは俺が昨日、最後に助けた白髪の少女だ。

 彼女は俺の事など一切気にせず、壁際で椅子に腰かけ眼を閉じてぽつんと一人佇んでいた。

 同じ部屋に居る筈なのに彼女だけまだ一人であの地下の中に居る様な感覚に囚われ、まるで彼女は"この場に居ない"と言う体で子供達が過ごしている様にすら見える。

 

 視線を彼女に注いでいると、一人の少年がその少女について教えてくれた。


 「あいつは"魔物憑き"なんだよ。」

 「"魔物憑き"?」


 俺が聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべていると後ろに付いていたメイガスさんが説明をしてくれる。


 「"魔物憑き"、それは彼女の様に異様に白い髪を持つ者達の事を言います。

  そして、嘗て勇者の従者が魔王への仇討ちの末…共に滅んだ際、強大すぎた魔王の力の一部がこの世界に降り注いだと言う嘘か誠かも分からない"逸話"が事の発端だと言われています。その影響でこの世界には稀に通常の白髪とは異なる、異様に白く、決して穢れぬ髪を持つ者が産まれる様になり彼等は特に魔王の被害を受けていた貴族や支配者層達の的になり、強く差別され弾圧されたと聞いています。」

 「それが、この子供達にまで?」

 「ええ―――」


 そこまで言うとメイガスさんは子供達へ聞かれぬ様に俺を立たせると、その言葉の続きを耳打ちした。


 「―――ここに居る子供達は元々貴族やそれに近しい支配者層が間引いた子供達、特に"魔物憑き"については厳しい教えがあったのでしょう。」


 正直言うのなら、メイガスさんの話を聞いて俄然彼女に興味が湧いた。


 そして俺はとある決心を決める。

 そして、子供達の眼やメイガスさんの言葉を聞いた上で彼女に向かって一歩を踏み出そうとした時、その心の内を理解したのかメイガスさんは俺の腕を掴み歩みを中断させた。


 「あ、いや…これは申し訳ない。」

 

 その行動はメイガスさん自身に取っても意識していなかった事なのか、すぐに俺に謝りを入れる。

 

 「ああ、そうだ。」


 メイガスさんはワザとらしい表情でパンパンと手を叩くとメリィが扉を開けて部屋の中に入って来る。

 そしてメリィさんに何かを耳打ちすると、メイガスさんは予想だにしない行動を取った。


 「皆、今から新しい服の採寸をするからこっちに来て頂戴。」


 メリィさんはそう言うと、子供達は俺の姿を見てから名残惜しそうに彼女の下へ向かって行く。


 「それではメイガス様、後はお任せください。」

 「ええ、お願いします。」


 そう言うとメリィさんは子供達を連れて部屋の外に出て行き、ドアの閉まる音がした後その部屋の静寂の中には俺とメイガスさん…そして白髪の少女の姿だけが残っていた。


 「メイガスさん、これは?」


 明らかに急だ、明らかに可笑しい。全ての流れをぶった切り、子供達をこの部屋から退出させる意図が分からなかった訳では無いが、意図を予想した上でメイガスさんに問いかけた。


 「琥珀殿、彼女を購入されるつもりですな?」


 その言葉に全く驚かずに答えを返す。


 「ええ。」


 俺は端的に返し、何か問題でもあるのか?と言う眼でメイガスさんを見た。

 その言葉を聞いている筈の彼女は勿論反応すら示さない。

 メイガスさんは複雑な顔をした後、意を決してかなり真剣な顔をして俺を見ると、この行動の意味を説明する。


 「何時、どのタイミングで彼女を"見た"のかは知れませんが…。

  ならば知っている筈、彼女は、―――」


 彼女は―――"盲目"だ。


 そんな事は今日、彼女を見た時から承知の上だ。

 動じない俺を見て、メイガスさんは言葉を重ねる。


 「その上、彼女は"魔物憑き"。琥珀殿のこれからを思うのなら、彼女を購入すべきではありません。」


 メイガスはハッキリと彼女を前にして言い切った。

 それは俺のこれからを憂いての発言だ、だから俺も自身の意志を返さなければならない。 


 俺はメイガスさんに対して怒るではなく、悲しむでもなくただ普通に言葉を紡いだ。


 「細かい事なんて知った事か、そんな事で躓いてしまう人生なら…それは死んでしまっていると同じ事だ。」


 俺の言葉にメイガスさんは何を視たのか、それはメイガスさん自身にしか分からない。

 それでも俺の覚悟は伝わった様で、その表情は何時の間にかいつものメイガスさんの顔に戻っていた。


 「琥珀殿には敵いませんな、その眼はまるで一度死んでいるかの様な者が発する言葉だ…。」


 口には出さなかったが、メイガスさんのその見解は当たっている。

 俺は一度死んでいる人間だ。この世界に転生したのはただ少し特殊で所謂、延長戦が始まっただけである…。 

 

 「良いでしょう、では商談と移りましょう。」


 メイガスさんはそう言って俺に背を向けて、この部屋の出口に向かって行く。

 

 「どうか、まずは彼女の事をお知り下さい。」


 メイガスさんは俺にそう伝えると部屋の扉を開けた。


 そして俺は、これがメイガスさんの言う"商談"の第一歩だと理解すると、彼は『終わったらもう一度扉を叩いて欲しい』と残してこの部屋を後にした。



 ・

 ・・・

 ・・・・・



 ドアが閉まる音を最後にまたこの部屋に静寂が戻る。

 俺は適当な椅子を一つ自身の下へ持って来て、彼女の前に対峙する様に座り込むと、彼女もその顔を漸く上げて俺へと向けた。


 お互いの視線は交差していない筈なのにしていると錯覚する。


 そして俺は瞳を閉じて此方を向く彼女を知る為、二度目の"神の瞳"を行使した。



 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



 称号:該当なし

 名前:アルセリエ・ロード

 レベル:2

 種族:人間

 職業:―――

 体力:220/220

 魔力:114/114

 力  D(55)

 防御 D(97)

 知力 D(119)

 精神 D(122)

 素早さ D(91)

 器用さ B

 運気 B

 

 スキル

 魔力感知:Lv8

 魔力操作:Lv6

 魔力放出:Lv2

 身体強化:Lv1


 アビリティ

 剣術:Lv2

 棒術:Lv1

 空間把握:Lv5


 特殊アビリティ

 第六感

 盲目



 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓




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