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魔王様は悩ましい  作者: うさぎバチ
7/7

会議、始まる

<投げやりな説明>

魔法、魔物、亜人、獣人、人間が登場します。


<簡素な用語説明>

【世界(物質界)と魔界】

 二つの世界は、同じ大地にはない。

 物質界には、有益な物質が多い、代わりに魔力は少ない。

 魔界は、その逆となっている。

 魔界人は、ファムの住んでいた世界を物質界と呼ぶ。

 又、本文にて説明。

【隠密スキル】

 本人を含む周囲の任意の人物を、認識できなくなるスキル

【魔大気】 

 本文にて、説明。

【魔王】 

 本文にて、説明。

 スケイルによって、魔王城に戻ってきたファムは客室の一つに案内されていた。


 (魔方陣が消えてしまうなんて、これからどうしよう……)


 彼は、スケイルから事の顛末を聞かされて、途方に暮れていた。


 魔界に一人、残されて色々な魔界人達に出会った。


 誰もが、伝わっていた話とは違い、自分達と姿を除き、殆ど変わらない生活の人々に、どこか安心していた。


 それでもファムは、パーティーの仲間の言葉を忘れていなかった。


 ――疑った上で信じろ、信じた上で疑え。


 ファムは、魔界の人々に心を許しつつ、警戒を解いてはいなかった。


 彼は、部屋の中を探索する。ドアに鍵は、掛かっていない。家具にも、怪しそうな物はなかった。


 そして、窓を開けると、鉄格子等もなく、堀があるわけでは、なかった。


 直ぐにでも、抜け出せそうな場所だった。


 空を見上げると、月が見えた。その事にファムは、違和感を感じた。


「月が出ているのに、暗くない……?」


 見えている月は、満月より少し欠けたぐらいの月齢だった。更に、太陽は何処にも見えなかった。

 

 それなのに、なぜこんなにも明るいのか、今までも、暗くなる様子も無かった。


 ここが魔界だからなのかと、彼は考える。


 その時だった、ドアをノックする音が聞こえてくる。


「入るよー」


 その人物は、ファムの了解もなしに、部屋に入ってきた。その姿は、【ニィ】にそっくりだった。


「君に客人だよー、ほら入りなよ」


「お、おう……」


 彼女に呼ばれて入ってきたのは、ゴブリンの少年【ボルホ】だった。彼は今、ばつが悪そうな表情をしている。


「あれれー?怖じ気づいたのかなー?」


「そ、そんなことないゾ!」


 彼女に茶化されて触発させられたボルホは、ファムに面と向き直る。


 (……もしかして、さっきの事を仕返しに……!?)


 彼とは先ほど、争っていた所をスケイルに止められたばかりだった。


 ボルホが動いた、それに対してファムは、防御体制をとった。


「さっきはごめん、オレの早とちりだった!」


「……えっ?」


 ボルホは、腰を直角に曲げて頭を下げる。思わずファムは、拍子抜けた声を出してしまった。 


 それに、初めて対峙した時とは違い、ファムの知っている言語だった。


 あの時は、ファムがニィを襲っているように見え、彼女を盾にしたと早とちりをし、気が荒ぶっていたのた。


 その為、慣れている普段の言語で喋っていたのだった。


「い、いやいいよ。あの時は……」


 そんなボルホに、困ったように返すファム。彼自身も似たような心境だったのだ。そして、思い出す。


 それは、【ニィ】の事だった。彼女は、ファムを庇ったことで死んでしまった。


 今ここにいる彼女そっくりな女性は、ニィの身内の方なのだろうと、彼は悲しい気持ちになる。


「……あの……もしかして、ニィのお姉さんですか?」


「あたしが、【ニィ】だよ?」


「……えっ?」


「あぁー、違うかな。……うーん、【あたしも、ニィ】ってこと」


 彼の質問に対しての彼女の返答に、更にファムは困惑してしまう。


「つまり、あたしは【ニィという個体の分身体】って事」


 ニィが自分の事を、一言でまとめる。彼女が続けて、説明をする。


「それで、あの時のニィは、ちゃんと魂が本体に戻って再生するから、そんなに気にしなくていいよー」


「そうなの?」


「そっ。でもね、君が悲しんでくれていた。ありがとね」


 その事をニィから伝えられて、ファムは少しだけ、ホッとした。


 しかし、魂が戻るとはどういうことなのかと、ファムが訊ねようとすると、


「お前、人間なんだって?ストラ様から、聞いたゾ」


 ボルホが、話に割り込んでくる。


「そうだけど……、もう、村から往復してきたの?」


「おう、ストラ様も一緒だゾ」


 ファムは、不思議に思った。彼が、数時間をかけてストラを村に送って、ニィと共に戻ってきたばかり。


 そこで初めて、ボルホと対峙した。ファムが、この部屋に案内され、再び顔を合わせた今までに、


 転移魔法の効かないストラを連れて、ボルホは戻ってきた事になる。


 それに、ストラは村に着いたのに、また戻ってきた事になる。


「……それは、あたしが説明するよ」


 ニィの説明によると、


 まず、ボルホはスケイルに、村の近くまで送ってもらい、ストラを連れてくる。


 ストラは方向音痴であるものの、道案内さえあれば、数分で村から城へ辿り着ける脚力があった。


 ボルホは、彼女ほど速さは無いものの、充分なほど脚力はあった。


 ストラがファムと同行した際に、それが出来なかったのは、彼が道を知らない事と、あの時のニィが速さに耐えきれない為である。


 そして、ストラが呼ばれた理由をニィが答えた。


「……それと、これから会議があるんだよー」


「……会議?」


 彼女が言うには、各地の魔王が集まり、会議を始めるとのこと。


「気になる?」


「うーん、すこし」


「じゃあ、聞きに行こう!」


 ファムは、魔王同士の会議に興味が湧いていた。そんな彼、をニィたちは連れていく。


 あっさりとしている二人に対して、そんな簡単に見せていいものなのかと、ファムは少し困惑していた。


 ――道中、ファムは魔界の月に関して聞いていた。すると、ニィが説明を始める。


「あれはねー、【ルナテア】様が起きてるからなんだよー」


 彼等の世界では、【魔大気】と呼ばれている、魔力を帯びた空気が存在していた。 


 それを通じて、魔法のような術を使うことが出来る。


 魔界の魔大気は濃く、太陽の光を吸収してしまい、本来ならば昼間であっても真っ暗なのである。


 ファムの居た世界では、魔大気が薄く、その影響が小さかった。


 では何故、魔界が明るくなるのか。それは、ルナテアの力の影響だった。


 彼女は、魔力を吸収することが出来る。更に、魔大気に含まれる魔力が反作用を起こして、逆に暗闇を明るくしてしまう。


 その為、夜でも明るく、本人の持っている魔力によって、その範囲は広くなっていく。


「それでも、建物とか洞窟の影は、あるんだけどね」


 不思議な事に、魔大気自体が光っているわけでは無いと、ニィは付け加えた。


 そして、ルナテアが眠りに着くと、その力は弱まり、再び魔大気によって真っ暗になる。


 魔界の人々は、この時を夜として認識していた。この力は、魔界に数人だけ存在し、各地に城を築いている。


 その力を持つ者と、同等の力を持つ者達を総じて【魔王】と呼んでいた。


 しかし、ニィはそれに一言、付け加えた。


「でも、ルナテア様には【魔王代理】って呼んでね?」


「えっ、どうして?」


「うーん、まぁ色々あるんだよ」


 ファムは、その理由を聞こうとすると、ニィに軽くはぐらかされてしまう。


 そして、城の二階の廊下の途中で三人は、立ち止まった。


 城の壁に隙間があり、そこから会議をしている部屋が覗けるのだった。


 三人が、隙間から覗く。ファムは、部屋の様子を見ると壁には、補修用の作業台が残っている。


 会議室は一階にあるようで、天井はまだ無く、吹き抜け状態になっていた。


 部屋の中心には円卓があり、周りに幾つかの椅子が並んでいた。


 その内の四方の椅子に、対角線を描くように、それぞれ座っていた。ファムは、その内の三人に見覚えがある。


 一人は、この城の魔王代理の【ルナテア】。


 彼女から、時計回りに【スケイル】。


 ルナテアの対角線上の席に【猪人王(オークキング)ストラ】。


 そして、スケイルの対角線上の席にいる人物は、見覚えがなかった。


「あの人は……?」


「あの方はー、【夢魔王(ワンダードリーマー)アイリム】だよ」


 ――あの人も、魔王。


 ファムは、戦慄を感じる。自分の目の前に魔王が、四人。


 正確に考えると、ルナテアは代理で、ファムはスケイルに関して、よくわかってはいなかった。


 少なくとも、ここに居るのだから、魔王と同等の力はあるのだろう、と彼は考えていた。


 そんな中、ルナテアは虚空に対して手を振った。彼女の様子に、スケイルは首を傾げた。


「誰に、手を振っているんだ?」


「んー、何か視線を感じて」


 ファムは、思わず見つかったのかと思った。しかし、ボルホは大丈夫だと言った。


「オレの【隠密スキル】で、見つかってないゾ」


 彼のスキルのお陰か、気づかれていないようだ。


 だが、紅茶を持って来たメイドが座っている四人に、配膳し終えると、チラリと此方を視ていた。


「うっ……やっぱり、【ミリオ】さんには気づかれるか……」


「ミリオ、動物っぽい感が働くからねー」


 (あの人が、ミリオさんなのか)


 長い髪を頭の後ろで丸く纏め、眼鏡をかけたメイド服の女性。以前、ニィから名前だけ聞いていた人物だった。


「さて、積もる話もあるだろう。……が、本題に入るぞ」


 スケイルは、勿体振るように話し始める。どうやら、ファム達が来る前に少し話をしていたようだった。


「恐らくだが、物質界と戦争が起きる可能性がある」


 ――続く。

「かなり、間が空いたけれども、第七話は以上で」


『それにしても、城がボロボロですね?』


「これから、もっとボロボロになるよ」


『それ、次回予告ですか?』


「さてー?。これから、どうなってしまうのか!?」


『あっ、はぐらかしましたね?』



 以上と、なります。

 ここまで、読んでいただきありがとうございます。

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