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魔王様は悩ましい  作者: うさぎバチ
3/7

少年のスタートライン その2

<投げやりな説明>

一部個人的な、解釈、考察があります(主に用語説明)


<簡素な用語説明>

【錬金術】

固体、液体、気体などの物質を分解、結合を操作する事ができます。


【感覚魔法】

自身の五感を他人の同調、交信できます。


【転移魔法】

任意の物を転移させる事ができますが、生物を転移させる場合は、数が多くなるほど使用者の脳に負担がかかります。


【道具】

照明用水晶玉・魔力を動力に動く照明、自動で点灯する物もあります。

視覚同調アイマスク・感覚魔法の視覚同調魔法を集中させる為の物、本来、視覚同調魔法は目をつぶるだけで可能ですが、これを付けると開けたままで使用できます、但し、使用中は周囲に気を付けなければなりません。

 少年ファムは、瓦礫と共に暗闇に落ちていく。


 と、思われたがファムの下の瓦礫はすぐに落ちるのを止めて――、


「ふべっ!」


 珍妙な声を出して、その瓦礫の上にファムが落ちる。


 顔を抑えながら、自身の落ちてきた穴を見ると、既に仲間たちは転移した後で誰もいなかった。


 途方に暮れて上を見つめていると、先ほど四人が戦いを挑んでいたドラゴンが顔を覗かせる。


「……あっ」


 しまった、とは声に出る前に、ファムはその場から走り出す。


 その様子を見て!すぐにドラゴンが穴から降りてきて、その衝撃で、更に床が崩れて逃げるファムの後ろが滑り台の様に傾き――、


「えっ?あっ!?ちょっまって!!?」


 踏ん張りも虚しく、斜面を滑り落ちていく。


 滑り落ちた先でファムは水にザブンと、落ちる。


「みっ水!?」


 慌てて水面から顔を出すとそこは大きく空間が広がり、床いっぱいに彼の腰より、やや上の辺りまで四角く窪んでなみなみと水が張っていた。


「何でこんなに水が……?」


 考えを巡らせるが、そんな時間は無かった。


 上からドラゴンの、震えるような咆哮が聞こえてくる。


「どっどうしよう!?……あっ!」


 焦りながら周りを見ると、水面の四角の一方だけ壁に続いていて、その壁の下の水中に、更に四角い窪みがあった。


 (先がありますように!)


 息を吸い意を決して水中に潜り、四角い窪みへと泳いでいく。


 窪みはファムが、ほぼ通れるぐらいの広さで続いている。


 その時、大きな音と共に水中が激しく振動して、急かされる様に水流に押される。


 (ドラゴンが降りてきた!?)


 彼はそう直感した。


 しかし、これは好機とばかりに水の勢いを利用して、壁にぶつからない様に一気に先を急ぐ。


 水流も収まりかけて、息も持たなくなるころ、水の中の通路が終わり――、


「ぷはぁ!」


 水面から顔を出すとそこは先ほどの部屋よりは狭く水の張った窪みもファムが横になると、すっぽりと収まるほどの大きさだった。


 窪みの横にはかまどがあり、火をくべるとその熱がかまどの後ろを流れる水路を伝って水に熱を加える構造をしていた。


「……まるで銭湯だけど……?」


 今は!そんなことよりと、周りを見渡す。すると、すぐ近くに通路があるのに気付く。


 ファムは急いでその通路に走る。


 部屋から出ると通路は左右にとても長く,等間隔で照明用の水晶玉が通路を照らしていた。


 通路の片方は、すぐそこに十字路があり、もう片方の通路はずっと奥に続いていた。


 しばらく、十字路の方を見つめていたファムだったが、


「……こっちにしよう。」


 そう言って、踵を返して奥に長い方の通路へ走る。


 (…多分、十字路の曲がった先はドラゴンがいる方と繋がってる)


 そう、考察して通路を走ると、


「へっくち!」


 ファムはクシャミをした、濡れた服で体が冷えてきていた。


 (さっきの、かまどで乾かせたらなぁ……)


 そんなことを考えたものの――、


 (今はあのドラゴンがいるし、なるべく見つからない様にしないと)


 足を急がせると、そこに通路がT字路になっていた。そこを曲がろうとした時、目の前で、


「……何の騒ぎだ?、たくっ」


 ――と、悪態をつきながら、歩いていた人物にファムはぶつかってしまう。


「はぶっ!?」


「とっとと?」


 お互いに、妙な声を出して、


「おい、大丈夫か?」


 その人物は、ファムの両肩に両手を伸ばして、優しく離す。


「あぁっ!すいません」


 妙に硬さを持った甚平を着たその人物から離されてその顔を見ようとして、顔を上げると――、


「――!!?」


 ファムは固まった。


 その人物には顔はなかった、皮膚は無く、肉も無く、骨だけがあり、


 目の窪みの奥に、小さな光を灯した骸骨が甚平を着て立っていた。


「……ん?……お前、誰だっけ?」


 ファムの肩から手を離し、今度は自身の顎に手をやり考え始める。


「……うわぁぁぁ!!」


 ファムは叫び、手を離した隙をつくように骸骨を押しのけて通路の奥へと逃げる。


 その行動に、骸骨は少し間を空けて、


「……あっ!?おい、待て!」


 叫んで、骸骨はその骨だけの手を壁に伸ばして魔力をこめる。


 すると、ファムの足元に小さな窪みが空き、ファムがその窪みに足を下ろそうとする。


 しかし、ファムは気づいたかのように、小さくよろめき窪みを避けて、何事もなかったかのように走る。


「あっ?あらぁ!?」


 その光景に骸骨は、素っ頓狂な声を出して再び壁に魔力をこめる。


 すると今度は、ファムの前方の壁が動き出してファムの行く手を阻もうとする。


 それもファムは避ける。


「お?おぉ?」


 それに骸骨は驚き、更に魔力をこめる。


 今度は床から石で出来た腕を伸ばし、避けられ、次に壁から細く伸ばして巻き付くようにすると、


 これも避けられる。


 幾度かの手を使って(少し意地になりながら)、ファムを捕まえようとするが、


 それを、彼は全て避けられてしまい、最後には見失ってしまった。


 走りながら、ファムは後ろを見ると骸骨の姿は見えなくなり、走る速度を落として、疲れた体を上下に揺らして休ませながら――、


「もう、いな……い?」


 呼吸を整えて、走ってきた通路を見ながら安堵のため息をつくと――、


「お前さん、凄いなぁ?」


 後ろから、先ほど聞こえていた声が聞こえて、


 ファムが、恐る恐る後ろを振り返ると、さっきの骸骨が立っていた。


「なああぁぁ!?」


 再び叫び声を上げて、ファムは来た道に逃げようとするが、


「待て待て待て」


 今度はがっしりと、肩を骸骨に掴まれてしまう。


 ファムが抵抗してバタバタと、していると、


「そのままだと風邪をひくぞ?」


 そう言って骸骨が、ファムの濡れた服に魔力をこめる。すると濡れた服から小さく湯気が立ち、服が乾く。


「……えっ?な、何で……?」


 それに対してファムはキョトンとする、なぜなら、



 ――骸骨がなぜこんな事をするのか、それ以前にこれは錬金術(聞きかじりの知識)では――、


 そうだとしてもかなりの高技術の、なぜ甚平を着ているのか、よく見たら下駄を履いてるし――、


 そもそもここに住んでいるのか、ここがどこなのか、そういえばあのドラゴンは、逃げるべきなのか、みんな無事かな。



 そういった考察や疑問、心配事が頭の中で、重なって絡まって―…、


 ファムは混乱していた。


 骸骨はファムの様子を見て、何かを察して、


「……だいたい何があったか想像がついた、とりあえず、巨悪の根源に謝罪させる」


 そう言って今度は、ファムと自身に魔力をこめる。


 すると二人は、光に包まれて消えていき、どこかの部屋に移動する。


 そこには丸いテーブルが置いてあり、テーブルの上の皿の上に数種類のお茶菓子、その横にティーセットがあった。


 そして、それの前で椅子に黒いドレスの角の生えた女性が座っていた。


 その女性は、厚めのアイマスクの様な物をゴーグルの様に目元に付けていた。


「んー、どこ行ったかなー?次は右の部屋、探してくれる?」


 などと、呟いている。そんな彼女に骸骨が、


「あー、お楽しみの所、悪いんだけどな……?」


「ちょーっと、待って今いいとこだから」


 彼女に骸骨が軽くあしらわれて、


「おーい、【ルナテア】?」


 近づきながら更に声をかけるが、返事は帰ってこなかった。


 その時、骸骨は右手(骨)を振り上げて、ルナテアと呼ばれた女性の脳天に手刀を下ろした。


「おぶっ!?」


 彼女が衝撃に変な声を上げて、少し悶絶し、頭を抑えながらアイマスクを外して、


「ちょっと【スケイル】、なにすんの!?」


 痛みにつぶっていた目を開いて、スケイルと呼ばれた骸骨を見ると、その後ろで呆然として立っていたファムが視界に入って、


「見つけたぁー!!?」


「連れて来たんだよ!!」


「!!?」


 ルナテアがファムを指差して驚き、スケイルがツッコミを入れ、ファムが更に呆然とする。


「……魔王」


 あまりの光景に固まっていた口を開いて、ファムが呟く。


 その言葉にルナテアは、怪訝そうな表情で、


「私は、魔王じゃないわ……」


 と、むくれる。するとスケイルが


「とりあえず、だな……」


 彼女が静かになったところで、事の流れを聞き出す。


 事の話の説明が終わる頃、部屋のドアからノックが聞こえ、何故か縮んだ体になったドラゴンが、部屋のドアを前足で器用に開けて、


『ルナテア様、交信がとだえましたが……?』


 言葉の途中でファムに気が付き、あっとしてからため息をつく。


 そして、ドラゴンの体がひかりだして、更に縮み、一糸まとわぬ人の形になる。


 更に直ぐ様、衣服が体の上に表れて、執事の恰好をした男性になった。


「ごめんねぇ、余興は終わり。ありがとね、【サウザ】」


 サウザと呼ばれた執事(ドラゴン)に、ルナテアは手を振り、それに彼は一礼をする。


「いやいやいや!謝るなら、まずこっち!」


 スケイルが声を上げて、ファムを前に出す。


「えっ?たのしくなかった?結構いい感じに指示できたとおもうんだけど……?」


 彼女が疑問の表情を浮かべると、三人は呆れた顔になる。


「かなり命懸けだったんですけど……」


 ファムがため息をつき、


「手加減はしましたよ?」


 と、サウザが答えると、ファムは困惑して、


「あっあの!僕、帰れますか?みんなが心配で……」


 ドラゴン戦の事を思い出して、焦り始め、


「ちゃんと魔法陣は発動してましたよ。ただ…この魔界に来ることは難しいですよ?そもそもあなた方が、どうしてここまでこれたのか……」


 彼は、ルナテアの方を見る。


「私じゃないよ?」


 そう返されて、今度はスケイルの方を見る。彼は、ばつが悪そうに眼の光を泳がせている。


「……スケイル様、何かしましたね?」


 サウザが、スケイルを問い詰める中、


「ごめんなさい、今日は少しやり過ぎたわ」


 ルナテアはファムに謝り、続けて、


「戻ったら、彼らにもよろしく伝えておいて」


 ――と、歓迎の意を示す。それに、ファムが返事を返そうとした時――、


「ちょ、ちょっと待ってくれ!君は何故、魔王と呼んでた?」


 サウザから逃げるように、スケイルが質問をする。それに対してファムは、


 ――おとぎ話の魔王


 ――と答えた為にファムはまだ、この場所から帰れそうになかった。

「前話より少し長くなりましたがここで、とめます」


『ところで、少年のクラスとか能力はまだですか?』


「とりあえず、次で」


『考えが、まとまってないだけでは?』


「うっ……ちゃんと考えはあるよ」


『なら、いいんですけどねぇ……』



 次回、しばらく時間、空けます。

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