【乙の章】その場所、竜宮城
「こりゃ不思議な飴だなァ……。水中でも息が出来るとは……」
亀さんの背に乗った太郎さんが、亀さんに貰った飴をコロコロと口の中で動かしながら物珍しそうにキョロキョロと周囲を見渡しています。
「竜宮城は神の造りし神秘の極みですからね! そこの主はちょっと……アレですけれど、人間にとっては『楽園』と称しても差し支えのない場所ですよ!」
太郎さんの下で、上機嫌な亀さんが楽しそうに教えてくれました。
そんな二人の周囲では、色とりどりの鱗を持つ魚たちや海の光を反射するような不思議な色合いの海月たち、海底では海老や蟹といった生物が、二人を歓迎するかのように、思い思いに歓迎の舞いを披露してくれておりました。
漁師という仕事に就いてはいましたが、それは半ば片手間で、それこそ海月のようにユラユラと日々を過ごしていた太郎さんですが、そんな美しい海の光景にはさすがに感動を覚えたようです。
「……美味そうだな、あの蟹。この鯛も、捕まえたら今週は仕事をしなくても良いかもしれねェなぁ……」
……訂正します、太郎さんはあくまで太郎さんでした。海の生物の美しさよりも、実質的な利益で計算をしてしまう、彼は現実主義者でございました。
「わァァ!? 太郎さん、お願いですから竜宮城近辺での漁はご法度でお願いしますよ!? 皆、何かしら乙姫様からの命令を受けた会社員なんですから!!」
慌てた様子で太郎さんに懇願する亀さん。
そんな亀さんに、太郎さんは珍しく楽しそうに表情を崩して言いました。
「……解ってらァ。おれは、約束は守る男だから心配すんない!」
アハハ、と、楽しそうな太郎さんの笑い声が海に響き渡ります。
そんな彼らの会話に、危険な色を感じていた生物たちも、少し遠巻きになった場所から徐々に戻って来ました。
「……だから亀よ、お前もおれとの約束を忘れるんじゃねぇぞ。裏切ったらこの首、引き千切るからな」
グッと、跨った亀さんの首に手を添えて少しだけ指に力を入れる太郎さん。
「……ア、アハハ……。当たり前ですよ、太郎さん! 私も約束は守るタチなんで!!」
海の中だというのに、タラリと亀さんの小さな額に流れる脂汗が太郎さんの指に伝います。
「そうか。その言葉、信頼しているからな」
脅迫めいた太郎さんの言葉を聞いて、亀さんは思いました──嗚呼、自分はこういう性質の人物を寄せ付けてしまう体質であったのか、と。
──話は少し前に遡ります。
浦島家の土間で、太郎さんの圧倒的なやる気のない発言を目の当たりにした亀さんは、それでもこの機を逃してはならぬと、最後の交渉に出たのです。
「太郎さん、太郎さん! 竜宮城は神の叡智を結集した不思議世界! かく言う私も、核さえ戻れば万病を排する薬を生み出す事が出来るのです!
人間の寿命は神が授けた決まりごと……寿命を伸ばす事は出来ませんが、その薬があれば貴方のおっかさんの病を治し、健康な身体で人生を全うさせる事が出来るのです!」
亀さんは真っ直ぐで嘘のつけない存在でありました。
ましてや今、亀さんは迫り来る乙姫様からの折檻を逃れたいが為に必死でしたし、一度引き受けたからにはその責任を全うすべきであるという、ごく当たり前の倫理観を持ち合わせる亀でした。
「そりゃあまぁ……おっかさんの病が治り、苦しむ姿を見ずに済むのならそれに越したことはねェけども……」
自分と、世間に向けるべき興味の全てを母親への感謝に捧げたような男、太郎さんはその言葉に少し心が揺れ動いたようです。
そして、そんな太郎さんの後押しをしたのは、他ならぬおっかさんでありました。
「太郎や。私の事はどうでも良いんだよ。神様の造りし竜宮城に行けるなんて、望んでも得られない、またとない機会だ。
……どうかそこで、お前の思う『幸せ』を見つけて来ておくれ……」
ゴホゴホと、咳をしながらではありましたけれど、慈愛に満ちた瞳を太郎さんに向けて懇願するおっかさん。
おっかさんも、己の余命が幾ばくもない事は身を以て解っておりましたし、自分の亡き後、残された太郎さんの幸せを誰よりも強く願っていたのです。
「……おっかさん。けど、おれが居なくて大丈夫かい? 掃除や洗濯や食事の世話も……おっかさんにさせる訳にはいかねェ」
母親愛全開の太郎さん。
ですが、亀さんもまた、ここで引く訳にはいかなかったのです。
浦島太郎を竜宮城に連れて行く千載一遇の好機。これを逃せば、また乙姫様からの折檻が待っており……亀さんにとって大切な物である甲羅も、次の攻撃に耐え得る可能性が少なかったのです。
亀さんはとても真面目で職務には忠実でしたし……この時、亀さんは自分には持ち得ない『親』という存在に対して愛情を注ぎまくる太郎さんが、少し羨ましかったのでした。
「……太郎さん。私も貴方のおっかさんの病を治して差し上げたいと……心から思いますから。神の奇跡に賭けてみませんか? 私も全力であの乙姫様に抗いますから」
人化した仲間をこの家に寄越しましょう、食料も当座の薬も、不自由はさせません。それが、私に出来る精一杯だからと、亀さんは必死に言い募ります。
「だからお願いです、太郎さん。乙姫様に会って私を取り急ぎの職務から解放して下さい。そして、次なる一手を打つ為に、共同戦線を張りませんか?」
そんな真剣な亀さんの懇願を、太郎さんは最初、胡散臭そうに見やっていました。
けれど、思えば亀さんは出会ってから今まで、太郎さんに「格好良い」とか「素敵」だとか、太郎さんにとっては聞き慣れた、それでいて虫唾の走るような甘言を言っていないのです。
只管に己の職務に忠実で……一生懸命な亀さんに、流石の太郎さんも少しだけ絆されたようでした。
「良いだろう、亀よ。おっかさんの病がなくなるなら……おれにとってもそれは唯一絶対の願いだ」
そうして、太郎さんの優美な手と亀さんのピタピタのヒレがガシッと握手めいたモノを交わし。
──太郎さんは向かったのです、乙姫様の支配する異世界……竜宮城へと。
─── ●・○・●・○・● ───
「んまぁアア! 浦島 太郎さま、ようこそおいで下さいましたっ!!」
そうして辿り着いた『竜宮城』。
そこは確かに、亀さんの言う通り大層美しい場所でありました。
砂浜を思わせるような白い床には金銀瑠璃、瑪瑙に琥珀といった宝石のような彩りの珊瑚がここかしこに飾られています。
水晶で作られたと思しき柱は青く透き通っており、その合間を優美な鰭をくねらせながら美しい魚達が泳ぎ、また、天女と見紛う程の美しい容姿の女性達がこれまた煌びやかな衣装を纏って行き交っておりました。
そして、そんな夢のように美しい場所にあり、一際豪奢で華美な装飾の成された王座のような長椅子に座っているのは、周囲を圧倒するかのような、ずば抜けた美貌を誇る女性──乙姫様、でありました。
「ずっとお待ちしていたんですのよ。ノロマな亀がお連れするのに手間取ってしまい、申し訳ございませんわ……」
孔雀の羽ででも出来ているのか、派手な扇子を口元に当て、ほぅ、と溜息を吐いて申し訳なさそうに眉を顰める乙姫様。
けれど、一瞬だけ亀さんに向けた獰猛な視線は、確かに亀さんの言う通り、彼女が残忍で我が儘な人物である事を物語っておりました。
視線を受けた亀さんは「ヒッ!」と短く声を上げて首を甲羅に引っ込めてしまっています。
「おれがここに連れて来られる理由がないんだが」
ですが、我らが太郎さんは何処までもマイペース。周囲の煌びやかさに驚く事もなければ、乙姫様に見惚れる事もありませんでした。
そんな太郎さんの様子に、真っ赤な紅の引かれた唇をニィ、と三日月形に歪めて微笑む乙姫様は、悪鬼もかくやといった態で、周囲の侍女達の殆どが顔を背けてしまっています。
「わたくしが貴方にお会いしたかった、という理由だけでは事足りませんか、太郎さま?」
そして、ねっとり、という表現がピッタリの視線を太郎さんに向けています。
黒絹のような美しい黒髪を複雑な形に結い上げ、豪奢な飾りの付いた着物の上からでも豊満な肉体を充分に想像し得るしなやかな身体を長椅子に預けたまま嫣然と微笑む様はまさに女王様、と言った所でしょうか。
地上の人間では持ち得ない血の色めいた真っ赤な瞳は、猫のように吊り上がってはいましたが、とても魅力的な形で乙姫様の顔の中心で他の部位よりも強く人目を引くものでありました。
その瞳には今、自分に対して何の興味を示していない、つまらなそうな視線を寄越す太郎さんがキッチリと捕らえられておりました。
美丈夫好きで、数々の可哀想な海の生き物達を自分の好みの人型に化けさせて愛でるのが趣味の乙姫様でしたが、太郎さんの容姿は正に好みのど真ん中であり、しかも天然モノの一点ものなのです、食指が動かない筈がありません。
「そんな理由でおれを呼んだのか。特に用がないなら帰しちゃくれないか? 地上のおっかさんの事が心配なんでな」
乙姫様のような、多少キツい様相とは言え、それでも絶世の美女と言っても差し支えのない女性から秋波を向けられ、会いたかったなどという言葉を賜っても尚、我らが太郎さんはマイペースでした。
彼にとっては乙姫様の美貌もまた、へのへのもへじと差して代わり映えのしない程度のものであったのです。
浦島太郎──彼は本当に、他人や世間に対しての興味がとても薄い人物でありました。
ですが、そんな太郎さんの様子を楽しげに見やりながら、乙姫様がまたあの派手な扇子を口元に当てて「オホホ」と笑っています。
神から授かったこの竜宮城に主にして絶対王者、そしてこの美貌とくれば、どんな存在も平伏させることが出来ましたし、実際、今まで乙姫様に膝を付かない存在──特に男性に彼女は出会った事がありませんでした。
ですから太郎さんもきっと虚勢を張っているに違いないと思い込み、その無駄な抵抗心を圧し折って服従させるという未来を思い描き、心から愉悦に浸っていたのです。
……それは、とても残念な勘違いであることは、皆さまもご存知の通りなのですが。
「強がりを仰る殿方も嫌いではありませんわ。それは確かに、この私の存在を目の前にして、現実から逃げたくなるのも無理のないこと……」
そう言いながら、乙姫様はユラリと立ち上がり、滑るように太郎さんの元へ近寄ると、その白魚のような優美な手で太郎さんの頬をそっと撫でました。
「……近くで見ると本当に素晴らしい美形ですこと。太郎さま、折角おいで下さったのですもの。この世の楽園と呼ばれるこの竜宮城で、私と楽しく暮らしましょう」
……そして最後には、その魂まで私の虜にして差し上げますわ、と、その真っ赤な唇を太郎さんの耳に寄せた乙姫様が囁きました。
けれど、その豊満な胸が太郎さんの腕に押し付けられようと、どんなに甘い言葉をかけられようと、その吐息から甘い香りがしようとも、太郎さんの心は一寸も動かなかったのです。
「いや。おれはここで暮らす訳にはいかねェ。そしてアンタと一緒に、というのも糞食らえ。人の心根は表には出ないと言うが……アンタの性格の悪さは随分ハッキリと表に出ちまってるようだ」
自分に纏わりついてくる乙姫様の身体を、ベリッと引き剥がして太郎さんはそう言い放ちました。
殆どの他人がへのへのもへじに見えてしまう太郎さんにとって、乙姫様の言動は案山子が突然踊り狂うのと同じくらい、奇妙で気色の悪いものだったのです。
しかも、一刻も早く地上に戻りたい太郎さんを引き留めようとする乙姫様の存在は、邪魔以外の何者でもありませんでした。
ですが、太郎さんの氷のような視線と共に冷たい言葉を間近で受け止めた乙姫様は、驚きや怒りといった感情は全く見せず、それどころか頬をポッと染めたのです。
勿論彼女は被虐性な訳ではなく……むしろその逆と言えました。
けれど、太郎さんの言葉は好意の裏返しであるという残念な勘違いに支配された乙姫様にとり、その言葉は深い愛の言葉と受け取れてしまったのです。
『性格が悪い』という言葉すらもツンデレであると受け止められるとは、誠に彼女の思考回路は自分の都合の良い解釈しか受け取らない、お花畑のような脳みそだと言わざるを得ません。
「悪いお方……。そんな悪い言葉でこの私の興味を引こうとするなんて……。
よろしいですわ。別の酒席を用意させてありますから……二人でゆっくりお話しましょう」
さぁ、さぁ! と、存外に強い力で腕を取って、太郎さんを何処かに連行しようとする乙姫様。
ですが、太郎さんは本当に一刻も早く地上に帰りたかったので、大声で「亀!」と叫んであの亀さんを呼びました。
勿論乙姫様は、そんな態度に少しムッとした様子でしたけれど、やがてやって来た亀さんが悪い顔で乙姫様にこう囁いたのです。
「……乙姫様、ちょっとお時間を頂ければ、浦島太郎の弱点を探り当ててご報告しますぜ……。そうなればもう、あの男はアナタのもの! ヨッ! モテ女! 日本一の野郎コマシ!」
ヒューヒューと、口笛すら吹きながら囃し立てる亀さんの言葉を、乙姫様は黙って受け取ります。
いつまでも太郎さんの寒風の吹き荒ぶような冷たい言葉を聞いていたいとは思いませんでしたし、太郎さんを落とせる手段があるのならば、一刻も早くそれを知りたいと思ったのでした。
尚、亀さんの言葉に『野郎コマシ』という侮蔑が含まれていた事は、脳内のお花畑が排除した様子でした。
「早くなさいね、亀。私、お化粧直しをして参りますから、太郎さまを金剛石の間に案内しておいて頂戴」
満面の笑みと共に絶対命令を亀さんに告げる乙姫様。そんな言葉に、亀さんも短いヒレを使って器用に敬礼をしながら「御意!」と返しています。
そして乙姫様が去ると、太郎さんは胡乱気な瞳を亀さんに向けて言いました。
「……亀よ。首を圧し折るから覚悟しろ」
「ちょっと待って下さい太郎さん!? 作戦ですから、作戦! 折角あの乙姫様から離れる事が出来るんですから作戦会議をしないと!
乙姫様の化粧時間は長いですから多少の余裕はありますけれど……今は一分も無駄に出来ないのですからね!!」
そうして、やや強引に太郎さんを背に乗せると、その王座の間を一人と一匹はそそくさと去って行ったのでした。
─── ●・○・●・○・● ───
「太郎さん、今、私の『水鏡』で乙姫様の実体を映しますから……良く見ていて下さいね」
太郎さんを小さな小部屋に連れ込む事に成功した亀さんが、真面目な表情で言いました。
そして、小さなヒレを胸の前で合わせ「出でよ真実!」と呟くと──何と言うことでしょう、ここにはいない筈の乙姫様の姿が、顕現したその小さな水球の中に現れたではありませんか。
「どうなってるんだ、これは」
「シッ! 原理など私にも説明出来ませんから後にして下さい! あの乙姫様の実体、とくとご覧あれ!」
ビシッと、存外に強い力で太郎さんの頭をひっ叩き、その映像に集中するように、と太郎さんを促します。
その映像は声も拾えるようで……今、乙姫様は、凶悪な面相の鮫のような娘に化粧を直させながら、満足気な表情で呟いていました。
「……噂以上の美丈夫ですわ、浦島太郎……。是非、あの男を私のコレクションに加えたいものです……」
「乙姫様もお好きですねェ……。ですがあの男は人間にしておくのが勿体ない程の面でございましたねェ」
「ええ、本当に……。あんな上玉が自然発生するとは、人間界も侮れませんわね。掌中に治めても良いかもしれませんわ」
「乙姫様、アナタ様が人間界を支配してしまったら、まず雌が死滅し、更なる生命体の誕生が望めなくなってしまいますよ。アナタ、自分以外のオンナが大嫌いじゃないですか。
我々海の生物と違い、人間の子種は宿しにくく、尚且つ少ないと聞きますし、雌が死滅したら人間は絶滅してしまうでしょうねェ」
お互いに悪い笑顔を浮かべながら、そんな物騒な事を語り合う女たち。
太郎さんは既にドン引きの態でその様子を見守っていますが、「こんなモンじゃないんですからしっかりして下さい、太郎さん!」と亀さんに励まされ、二人の様子を引き続き見守ります。
「乙姫様、あの男は地上に戻りたがっているようですし、一夜、あの男を堪能した後は一度地上に戻してみちゃどうです? 勿論、戻って来ざるを得ないように仕向けてね……」
グフフ、とサメ娘が悪い笑いを漏らし、乙姫様に進言しています。
……今、まさに、自分達を陥れようとする作戦の相談をされていると解り、太郎さんと亀さんの間に緊張が走りました。
水鏡の中では、サメ娘が「ここだけの話ですよ……」などと言いながら、懐から何か、玉のようなモノを取り出して乙姫様に見せています。
「……我が一族が開発した『老化薬』です。この煙を浴びれば、人間はあっという間に年老いてしまいます。
ですが、永遠の若さと美を誇るアナタ様なら、この煙を浴びたあの男もたちどころに元の美しい姿に戻せるでしょう。
……良いですか、乙姫様。かの男の窮地は、アナタ様にしか救えない、そんな状況を創り出してしまえば、人間などイチコロでしょう。アナタは世界一美しいのですから」
サメ娘の表情が、一層黒くなりました。
そして、そんな言葉を受けて、乙姫様も心の弱い人間が見たら腰を抜かしてしまいそうな悪い顔で微笑みました。
「良いですわね、鮫。まさしく太郎さまの命運を私が握るということ……。これは、もう二度と私から離れられませんわねぇ?」
「その通りでございます、乙姫様!」
オーホホホ、ケヒョヒョ、と、お互いに有り得ない程の悪い笑いを漏らしながら、二人が手を打ち鳴らしています。
まさにその様は、悪代官と私欲に塗れた廻船問屋か政治家か、といった態で、時代劇であれば屋根裏にネズミ小僧が潜んでいる光景でありました。
ですがその光景はネズミ小僧ではなく……酷く万能な亀さんの『水鏡』によって当の本人に知らされている、という残念な結果を齎しておりました。
「……おい、亀よ。何だこの茶番は」
「乙姫様の実体でございます、上様」
……何故だかこちらも時代劇のノリとなっている亀さんが真実をお伝えした所で、太郎さんも状況がとても芳しくない事に気が付きました。
このままでは『老化薬』とやらで爺にされてしまうのです。
自分の容姿には欠片も未練などありませんでしたが、おっかさんもいることだし、他人の良いように自分の運命を変えられるというのも全く御免蒙ると、太郎さんは深く憤りました。
「……流石にこれはないぞ……。手を打て、亀よ」
「御意!」
亀さんの元気なお返事がその小さな部屋の中に響き渡り、一人と一匹は己の状況を打破すべく、素早く作戦を練り出したのでした。
来週は月・水・金に投稿させて頂きます。終わらなかった……(´・ω・‘)
今話もお読み頂き、有り難うございました!