過去>>>未来《24》
自称神はゆっくりと口を開いた。
「君に今から2つの選択を与えるよ。どちらか1つだけ選ばせてあげる。」
俺は得体の知れない悪寒を感じながらもオウム返しをした。
「…選択……?」
こういう時は大体どちらも良くない選択に決まっている。
「そう。選択。素晴らしい響きでしょ?そして、君が生きてきて初めて自分で下す選択でもある。」
…初めてだと?
俺は今まで自分の意思で行動してきた。
今ここにいるのも自分で考えたからこそ……。
……考えた?
………俺は何を考えたんだ?
『マリアにそばにいて欲しい』
この気持ちだけで俺は行動を起こしてきた。
冷静に考えると、そこに思考等というものは一切含まれていない。
ただの感情だ。
……馬鹿か俺は…。
自分の中での一番大きな感情に気を取られて視界が狭くなっていた。
大きな感情、孤独…。
……メンヘラかよ。
「君がそうやって悲劇のヒロインぶってる間にも刻一刻と時間は過ぎていくよ。」
自称神は真っ直ぐに俺を見据えた。
…心でも読めるのか?
「んー、読めはしないけど、表情で察することは出来るかな。」
…さすが神様、何でもありだな。
「さて、無駄話はこれくらいにして本題に入るよ。」
俺は真っ直ぐに自称神を見据え返した。
「選択の1つ目、君だけの魂が解放される。2つ目、全ての人々の魂と共に解放される。好きな方を選んでいいよ。」
…何を言ってるんだ。
解放…?
なにからだ…?
「今さ、解放ってなーに?って思ったよね?教えてあげる。というか、これ知ったらもう君帰りたくなくなると思うけど…」
……帰りたくなくなる?
実を言うと、なんやかんやで居心地がいいと思っていた。
それに、血なまぐさい事も多いが、生徒会長とも天龍先輩ともマリアとも天宝寺とも茜先生とも、人付き合いは上手くやれていたと思っている。
帰りたくなくなるなんてこと、あるはずが…。
そんな俺の感情も露知らず、自称神は話を進めた。
「君がいた世界は、私が創り出した仮想空間なんだ。」
…?
あれが仮想空間…?
「……証拠はあるんですか?もしそれが真実なら、何か証拠があるはずですよね?」
…なんだ?
今俺はすごく見落としていることを言ったような気がした。
…そうだ、、、今まで証拠を見つけずに推測だけで物事を考えていたのは俺じゃないのか…?
都合よく考えていたのは俺の方だ。
もし、この人が証拠を出せるなら…俺は今までの憶測をすべて捨てなければならない。
「証拠ならあるよ。」
そう言うと自称神は、何も無い空間から小さな箱を生成した。
「それくらいなら俺でもできますよ…。」
「甘い甘い。中を覗いてみなよ。」
自称神は箱の中身を俺に見せた。
中には…。
俺の失くしたと思っていたスマホが入っていた。
「……拾ってきたんですか?」
もちろんそんなわけはない。
なぜならこれは、この時代にあるはずのない物だからだ。
俺がいた時代じゃないと拾えない。
つまり…。
「ここが君のいる仮想空間とは切り離された時間軸ということは分かってもらえたかな?」
…なるほど。
だが、あくまで自称神だ。
信用し切るのはやめておこう。
「まあ、信じておくことにします。」
俺は渋々返答をした。
「ところで、君、さっきさ…今までの自分は間違っていた。とか考えなかった?」
…もうこの自称神、心読めるってことでいいんじゃないかな?
「確かにあそこは私が作った仮想空間だよ。でもね、予想外の自体がいくつか起きたんだ。だから君を送り込んだ。そして君は役目を果たした。とても重要な役目をね。」
思考をフル回転させながら自称神の言葉に耳を傾けた。
「役目…?」
「そう。役目。君は私…いや、現実世界の敵の尻尾を掴んでくれた。」
敵と言われると思い浮かぶのが…あの女だ。
魔神や魔王も予想外の出来事に含まれているのだろうか?
「自称神様が居る世界が現実世界っていうことは、、、俺がいる世界はみんな偽物っていうことですよね…?」
「んー、まあ実際は偽物じゃないんだけどね。本物だよ、ちゃんとした。だからこそ皆の魂を解き放ってあげるっていう提案をしているんだけど?話すと長くなるから今度ね。」
でも、俺は…。
「心配しなくても大丈夫。私をベースに作られているというだけで、君という存在はもう確立しているよ。」
心読むのやめて?
「…そういうことなら、俺は後者を選びます。」
これで解放されてめでたしめでたし。
「じゃあ、お仲間と一緒に魔神倒してきてよ。倒せたら魂を解放してあげる。皆ね。」
……なわけがなかった。
「魔神なんて俺には……。」
「君なら大丈夫。私の力の半分を与えているからね。……それにあれ弱い方だし。」
最後になにか聞こえた気がしたが俺は聞かなかったことにした。
それよりも俺が気になったのは、半分という言葉だった。
半分…?
まさか……。
「『祝福』っていい名前だと思わない?私が名付けたんだよ。」
情報量が多すぎる…。
つまり、能力に目覚める時に聞こえる声も、この自称神の仕業か…。
「いい名前ですね。俺は結構好きですよ。」
お世辞でも言っておこう。
「そういうのやめた方がいいと思うよ?」
ニコニコしながら俺を見つめてきた。
目が笑っていない…。
「さてと、無駄話もここまでにするとして、また今度詳しい話はしてあげるよ。とりあえず今は…いってらっしゃい。」
自称神に軽く胸を小突かれるとはるか後方へと身体が弾き飛ばされた。
また闇だ…。
何も無い空間へと弾き出された俺は、来た時と同じように意識が途絶えた。




