過去>>>未来《23》
「ここは…?」
周りを見渡したが何も無い。
無だ。
方向という概念すらない程の闇が、辺り一面に広がっていた。
確か、天龍先輩の『祝福』を3人で入って…それから、、どうなったんだっけ?
天龍先輩がなにか言おうとして…聞き取れなくて…俺は意識を失って…。
多分、天龍先輩が言おうとしたのはどうせ『3人ダメだった』的な内容だろう。
実際、俺も完全に忘れていた。
しかしなんだ、この辺り一面の闇は…。
俺は神聖力や魔力を探ってみたが、なんの反応もなかった。
うーん、、、これは………。
もしかして…閉じ込められた?
いや、諦めるのはまだ早い。
俺は歩き進めることにした。
ふと、とある違和感を覚えた。
地面がないのに地面があるような、不思議な感覚を感じ始めたのだ。
正確に言うとさっきも感じていたのだが、歩き進めていく毎にその感覚がどんどん強くなっていった。
天龍先輩の『神の抜け道』も似たような感覚なのだが、あれはスケートリンクの上を歩いているような滑らかさがあるのに対し、今は土の上のようなしっかりとした弾力を感じる。
いや、今はそんなことよりこの何も無い空間からの出口を見つける方が先だ。
俺は一気に駆け抜けようと全身に神聖力をまとった。
その瞬間、突然声が聞こえた。
『お客さんかな?…ふむふむ。その神聖力は……。やっとだね。道作るから早くおいでよ。』
急に目の前に光で出来た道が現れた。
遥か彼方まで一直線に伸びている。
声の主が何を言っているのかさっぱり俺には理解出来なかったが、とりあえずこの道を行けばいいということだけは理解した。
がむしゃらに歩いたところで出口が見つかるなんていう道理は、どこにもないんだ。
鬼が出るか蛇が出るか…。
俺は突然目の前に現れた眩い光の道を進むことにした。
1時間ほどだろうか?
神聖力を纏いながら全力で駆け抜けた。
ここまで全力で走ったのは初めてだ。
もはや光の速度に等しいと言っても過言ではない。
全身を神聖力で強化しつつ、『万物の所有者』で自分の前方に空気をクッションの代わりとして生成し続けるからこそ出来る芸当だ。
今までろくに自分の『祝福』の使い道を考えてこなかったが、天龍先輩や生徒会長を見て、本格的に使い道を考えないと自分の身を守ることすらできないと思ってしまった。
それにしても、この距離から俺を感知するなんて何者だ…?
この距離を感知する程の手練を俺は知らない。
思考を回転させていると、前方に扉が見えた。
天龍先輩の扉とは全く違うデザインだった。
豪華…というわけでもないが、地味というわけでもない。
尚且つ上品さを兼ね備えた優雅なデザインだった。
俺はこのデザインを知っている…。
天界で何度か目にしたものだ。
そう…大天使さまのお城と同じ…。
扉の前まで行くと俺は恐る恐るドアノブに手をかけた。
ゆっくりと扉を開ける…。
扉の先には…。
部屋があった。
見覚えのあるこの部屋は…。
………俺の部屋?
「なんで…」
紛れもなく、マリアと過ごした俺の部屋だ。
俺が唖然としていると声をかけられた。
「やっと来たね。」
俺は声のする方へと顔を向けた。
「………えっ…」
思わず声を失ってしまった。
部屋の入り口の扉に、俺と全く同じ顔の男が居たのだ。
「初めまして私。」
男はそう言うとニコニコと微笑みながら歩み寄ってきた。
「……っ!」
俺は言い知れぬ恐怖を感じて、思わず聖剣と魔剣を具現化させてしまった。
「そこまで警戒されるのは正直ショックかな。」
軽口を叩く男を俺は真っ直ぐ見据えた。
「何者ですか…?」
「教えて欲しい?」
男は悪戯っぽい笑みを浮かべて顔を覗き込んできた。
「…別に無理に聞こうとは思いませんよ。教えてくれないなら早く帰り方教えてください。」
お腹が空いている俺は睨みつけるように男を見つめた。
こんな時でも肉汁たっぷりの唐揚げを想像してしまうのは俺が食いしん坊だからだろうか…。
いや、今日1日があまりにも多忙過ぎたのだ。
天界の料理だとお腹が膨れなくても当然だ。
「うーん、別に帰り方教えてあげてもいいけどさ、君は私と今話さないと二度と話せないよ?」
……二度と?
どういう事だ…?
「今気になったでしょ?」
「………別にそんなことは…。」
俺は心の中を見透かされたようで言葉に詰まってしまった。
「とりあえず、おめでとうと言っておこうかな。」
「え?」
おめでとう…?
何がだ……?
「ここがゴールだよ。偶然にたどり着けたにせよ、君がここに来る事に意味があったんだ。」
ゴール…?
俺はあまりにも突然の出来事に頭の理解が追いつかなかった。
「…意味わかんないですよ……。それに、あんたが誰だっていう答えにもなってないじゃないですか。」
俺は頭の中を整理しつつ言葉を絞り出した。
「わかりやすく言うとね、私は神様だよ。そして、君は私の魂の片割れ。おかえり『私』」
……俺が…片割れ…?
目の前の男の言葉を、俺は信じることが出来なかった。




