ニート生活>>>ラブコメ《3》
俺は教室に向かって廊下を進んでいた。
隣には金髪美少女が軽い足取りで並んで歩いている。
「そういえば、名前まだ聞いてなかったよね?」
“ネックレスの妖精”という認識だったのだが、きっと名前があるに違いない。
「なんだったかなー、、、忘れちゃった。てへっ」
露骨な嘘だ。
目を合わさない。
とても気になったのだが、問い詰めないでと言わんばかりの顔をされると聞きづらくなる…。
きっとそれなりの事情があるのだろう。
今は聞かないようにしておこう。
我ながら誤魔化しきれないと思っていたけど、案外誤魔化せた。
内心ガッツポーズをしながら私はこの男について行く。
そう。
私は嘘をついた。
名前なんてない。
先代勇者が使っていた聖剣の頃の呼び名はあるけど、決して名前と呼べるようなものではない。
先代勇者が呼んでいた私の呼び名を、この人には呼んで欲しくない。
あの頃の私は、切るしか能がない物でしかなかった。
あの頃の名前では呼ばれたくない。
我がままかもしれないけど、いつか、私の主として新しい名前を与えてくれるって信じてる。
だから今は、嘘をつく…。
私の“能力”は目を一定時間お互いに合わせることで相手から夢と現実の境界線を奪う“能力”。
解除方法はただ一つだけ。
夢の中の私に触れること。
任意発動ではなく自動発動だから目を合わせないようにしてたわけだけど…。。
…かわいいって、、、言われた…。。
今はお金しか見えてないけど、、、
黒城くんと話すの楽しかったな…
優しかったな…
もしかして、黒城くんは私が好き…?
そうだ…きっとそうに違いない!
だから捕まえて私だけのものにするの。
今日も可愛いって言ってもらうために。
私は寝ている黒城くんを抱きしめながら夢の中へと潜った。