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過去>>>未来《14》

「方針もまとまったことだし、今日はここに泊まっていくといいわ。魔女の里には戻らない方がいいわよ。メイ、あとは頼んだわよ」


「かしこまりました」


…戻らない方がいい?


どういう事だ…?


生徒会長はソファーから立ち上がり客間を出て行った。


まだ名前すら聞かれてないのだが…


他人に興味が無さすぎるのか…?


俺の知ってる生徒会長とは大違いだな。


「ユライアの話は長かっただろうが、少し私の話にも付き合ってもらえないだろうか。」


今まで(だんま)りだった大天使様が口を開いた。


「ユライアの事なんだが…」


生徒会長のこと…?


「未来ではどんな風なのかね…?いや、未だに私は君が未来から来たというのも信じることが出来ないのだが、もし本当に未来から来たなら元気にやっているのかと気になってしまったのだ…」


…意外と娘想いな人なのか……


生徒会長が俺の時代で大天使様を嫌悪していたのが謎だな。


まさか…それも記憶改変されているのか…?


俺はできるだけ表情に考えを出さないようにしながら大天使様に返答をした。


「元気ですよ。いつも振り回されて困るくらいです…。クールぶってるのに割と抜けてるところがあるけど、妹想いで良いお姉さんですよ。」


「……そうか。今とは大違いだな…。」


そうだ。


俺の知っている生徒会長とあまりにも違いすぎる。


はじめ見た時は別人か疑った程だ。


「なんであんなに思い詰めた表情をしているんですか…?俺の知っているユライアさんはあんな雰囲気じゃないですよ。」


「ユライアは神聖隊という天界最強の部隊の隊長をしておってな…責任感が人一倍強く、周りからの期待も厚い。友達と呼べるような仲間も居ないが故に、ユライアを孤高の存在へと高めたのだろう。」


今思い返すと、未来の俺の魔力と似たような雰囲気を生徒会長の神聖力から感じた気がする。


孤独が人を強くするとはよく言われるが、未来の俺も生徒会長も、強さの根源は孤独だったのか…。


「未来だと、俺と妹さんとユライアさんでご飯一緒に食べるくらいには仲良いですよ。他には友達いるかは知りませんが…少なくとも、俺は友達です。」


俺は言い切った。


生徒会長とはもう友達だ。


暇つぶしの相手にされるのは勘弁して欲しいが…。


「…それなら、今も友達になってやってはくれないか…?未来ではなく、今なってやって欲しいんだ……頼む……!」


大天使様が俺に頭を下げてきた。


…今のあの生徒会長と友達に……?


無茶振りにも程がある…!


「…おやめください…っ!大天使様がそこまでされなくても…!」


メイさんが止めに入ったが、頭を上げようとはしなかった。


「今のままではダメな気がするのだ…。ユライアの…娘の笑顔をもう一度見たいと思ってしまった。教育を厳しくし過ぎたのではないかと、今は反省しておる…」


ここまで言われると俺も折れるしかないか…


ダメ元でやってみよう。


「……わかりました。ただし、引き受けるには条件があります。」


「なんだね…?言ってみなさい」


「ユリを返してください…」


元々俺はこれが目的でここには来た。


これを成し遂げずには、ここに居ることなんて出来ない。


先程魔女の里には戻るなと生徒会長が言っていたが、リリーさんに、一晩だけでもお世話になった御礼を言いに行きたい。


「…ふむ。返しても良いが、この城の中で生活してもらう。彼女はそれほど重要な存在なのだ。」


今思うと、俺はユリについて何も知らない…


何も知らないが、俺はユリの優しさを知っている。


それだけで、助けにくる動機は充分だ。


だが、ここから先の行動はそれ以上知ってから行動するべきだ。


生徒会長以外のメンバーは知らないが、天界最強の部隊が絡むほどの案件…


無知で首を突っ込むには恥知らずにも程が有る。


俺はユリのことに関して大天使様に聞くことにした。


「ユリを攫った目的って魔剣以外にあるんですか…?」


大天使様は言うのを躊躇(ためら)うような素振りを見せたが、話してくれた。


「………彼女は魔神の孫なのだ…。悪用しようとしてる奴らがいるかもしれん。だからこそ、私たちが確保しとかなければいけないのだ。」


…魔人の孫……?


じゃあ、リリーさんは…


「お母さんってリリーさんですか…?」


「………わからん」


「それじゃあ、お父さんは…?」


「魔王だ。」


「…今更魔王を殺すのに躊躇(ためら)ったりはしませんが、ユリにはそのこと黙っていてください……」


「わかった。約束しよう。」


俺は自分がどれ程ずるい人間であるかを思い知った。


だが、心の中で言い訳をするしかないのだ。


世界のため…ユリのため…マリアのため…そう言い訳をするしかないのだ。


でなければ、いざという時に手元が狂ってしまう…


「私からの話は終わりだ。また長くなってしまってすまなかった。…では、メイ、彼女を解放してやってくれ。」


「かしこまりました」


メイさんはメイド服の内ポケットから小ビンのようなものを取り出した。


「これが私の『祝福(ブレッシング)』、『小人の世界(トゥーンワールド)』です。」


よーく見るとユリが瓶の中ですやすやと寝ているようだった。


「では、私は彼女を客室のベットに寝かせてきます」


そう言うと、メイさんは客間から出て行った。


「ユライアも言っておったが、今夜はここでゆっくりしていくといい。まだ夕方だから夕食まで時間がある。のんびり城や街でも見学してくるといい。もちろん魔力は抑えてな…」


「ありがとうございました。」


…そういえば、俺にはなんで魔力と神聖力が流れているんだ……?


…先代勇者が居なかったら俺が神聖力流れているのもおかしくないか…?


いや、そもそも前世が魔族ということ自体が嘘なんじゃ…


……今考えても答えが出るわけじゃない。


とりあえず今は目の前のことに集中しよう。


リリーさんのところに一度戻って泊めてもらった御礼を言いに行こう。


ついでにユリのことを聞くのも俺にとって有意義になるかもしれない。


俺は気を紛らわすように思考を二転三転させながら客間を出た。


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