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過去>>>未来《3》

リリーさんは先に晩御飯を済ませたらしく自分の部屋に帰った。


ユリは俺と二人分の晩御飯を作るために台所に立っていた。


「座って待っててね」


俺は木製の椅子に腰掛けた。


テーブルはそれ程大きくなく、ちょうど二人分の食事スペースが出来るほどの大きさだった。


台所は目を疑う光景だった。


どういう原理かはわからないが、薪に自動で火がつくようになっており、金属製の鍋が空中に浮かんで火に当てられていた。


…魔女の里というくらいだから何かしらの不思議なことはあると思っていたが、これは予想外だった。


だが、今この話題に触れるのはよそう。


魔女の里の秘密をさぐりにきたとおもわれてもこまるからだ。


俺はユリに当たり障りのない話題を振ることにした。


「ユリってリリーさんと二人暮らしなの?」


「うん。年齢的にお婆ちゃんって呼んでるけど、血は繋がってないよ。」


年齢的にと言われても、すごく若く見えるのだが…


「リリーさんってそんな年取ってるようには見えないけど」


「んー、500歳超えたくらいかな。魔族の中では長生きって程でもないけどね!」


500歳…もう数えるのがめんどくさくなる年齢だ。


それだけ長生きなら魔神や魔王についても何か知っているかもしれない。


明日聞いてみよう。


話してるうちに美味しそうな匂いが台所から漂ってきた。


「この匂いは…まさか…っ!カレー…!?」


「ん?カレー?…もしかして、カルアのこと?」


「カルア…?」


「うんうん。カルアの実を迷いの森で取れる調味料で煮詰めたスープなの!」


…下界とここでは物を示す言葉が違うのか…?


いや、むしろなぜ今まで疑問に思わなかったのだ。


言葉が通じていることに…!


下界とここでは言葉が違うのが普通のはずだ。


今が2000年前だなんて関係ない。


それに、今から2000年後の俺と生徒会長が行った天界でも普通に言葉が通じていた。


言葉が通じるなんて、まるで元が同じ文化だったみたいじゃないか…


そういえば、俺は魔界と天界のこと何も知らない…。


いや、今は深く考えるのはやめておこう。


俺は動き始めた思考に蓋をした。


「おまたせ!ユリ特製のカルアスープだよ…!」


ユリはテーブルに二人分のカルアスープとスプーンを持ってきてくれた。


色は半透明なのだが、匂いはカレーに近い。


俺は恐る恐る口に運んだ。


「……おいしい…」


味もやはりカレーに似ていたのだが、カレーほど刺激的ではなくマイルドな味がした。


しかし、味が薄いというわけではなく濃厚でしっかりとした味わい…こんなスープ、飲んだことがない…!


俺は無我夢中で口に運んだ。


そんな俺の様子をユリはニコニコしながらじーっと見つめてきた。


「ユリ…?どうしたの?」


「…私いつも独りでご飯食べてるから、誰かと食べるの嬉しくて…それに、男の人なんて初めてだし…」


ユリが照れくさそうに言った。


「ユリ…あーん。」


俺は自分のお皿からスープをすくってユリの口に運んでやった。


「…あーん?ってなに?」


あ〜んを知らないのか…


「自分が食べてる料理を相手にも食べてもらうことだよ」


「…同じ料理じゃない!なんの意味があるの…?」


「2人で食べてる感じがしていいでしょ…?」


「…でも、恥ずかしいかも…っ…」


俺はユリの口の中にスプーンを押し込んだ。


「…ほら、美味しい?」


「うん。美味しい…」


ユリは一瞬驚いていたが、嫌そうな顔はしなかった。


むしろ、少し頬が緩んでいた気がした。


「もう1回して欲しいな…」


「無理矢理?」


「うーん、優しく…?」


「じゃあ、あーん。」


俺はユリの口にもう1度スープを運んでやった。


「…あーん…っ!…うん。美味しい!」


同じ料理なのに味が違うなんてことあるのか…?


「俺のスープだけ別の味付けにした?」


「…?してないよ…?」


同じ料理なのに違う味…


…俺も心当たりがある。


俺はとある金髪の女の子を思い浮かべた。


気が付くと、涙がこぼれ落ちていた…


「ど、どうしたの…っ!?」


ユリが心配そうに顔を覗き込んできた。


「……ちょっと目にホコリが入っちゃって…心配してくれてありがとう」


「…し、心配なんて…してないし…」


俺とユリはスープを飲み終えた後、風呂場へと向かった。


…流石に一緒には入らないからね?


ユリがさっきから寂しそうな表情を浮かべるから脱衣所の前で待つことにしたのだ。


「…一緒には入らないからね…っ!」


ユリが浴室から声を出した。


心でも読めるのか?


一緒に入りたくないと言えば嘘になる。


ユリは黒髪で身長はそこまで高くないのだが、豊かなバストと引き締まったウエストを持っていた。


そんな女の子と一緒にお風呂に入る機会があるなら是非お願いしたいところだ。


そうこう考えてるうちにユリが脱衣所から出てきた。


髪が濡れていて妙に艶っぽい。


「じゃ、じゃあ、私先に寝るから…っ!おやすみ!」


……あれ?ほんとに何も起きなかったぞ。


俺はお約束展開なんて無いことを悟った。

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