下界>>>天界《18》
「……こそこそしてねぇで早く出てきたどうだ?」
部屋の静寂を魔族の声が掻き消した。
私達は校長室に恐る恐る入った。
しかし、奈々ちゃんと先生はその声の主が誰なのか知っているらしく、2人とも困惑した表情を浮かべていた。
「…そ、その声……まさか…ウリくん?」
「久しぶりじゃねえか。天宝寺、先生。あと、なんだ?そのガキ。」
奈々ちゃんの知り合いとは思えないくらい口が悪かった。
「…ウリくんがいるってことは魔神は嘘なのかな〜?」
「嘘じゃねぇけど本当でもねぇよ」
嘘じゃないけど本当でもない…
それなら私が考えている事と辻褄が合う。
ただ、気になるのはミカくんと“能力”がそっくりなあの魔族…
いや、今はそれよりも目の前の2人に集中しないと。
先生がウリとかいう魔族に質問を続けていた。
「つまり、生徒会長さんと黒城くんをここから引き離すためかな〜?」
「いちいち言わなくてもわかってんじゃねぇか」
「念の為にだよ〜。それに、もう帰ってくるからね〜」
「はぁ?んなわけねぇだろ。俺達が用意した筋書きだとあと30分は帰ってこ…」
突然、目の前に門が現れた。
門から現れたのは、ボロボロになったミカくんと…誰だろう?私と同じ綺麗な金髪の女の人が出てきた。
「やっぱり…貴方達が仕組んだことだったのね…信じたくはなかったわ。」
女の人は怒りと失望を混濁させた複雑な表情を浮かべていた。
「ウリ…終わりだよ」
ミカくんは淡々と言った。
ミカくんの雰囲気が少し変わってる気がしたけど、気のせい…?
「てめぇに終わらされるほど俺も弱くねぇんだよ。今すぐ俺が殺し……て…。…え…?」
ミカくんの聖剣がウリの心臓を貫いていた。
「うるさいよ。俺がウリを殺すのをためらうとでも思ったの?」
「…てめぇ本当に、黒城…か…?」
その場にウリは血を流して倒れ込んだ。
もう1人いた魔族はひたすら沈黙を続けていたが、ウリが殺られたのを見て口を開いた。
「ここにこんなに早く帰ってきたっていうことは、私の正体にも気付いているの?」
「正体というか、、、あなたに関しては散々振り回されましたよ。前世のお母様。」
「ふーん…。。じゃあ、魔界であれも見たのね?」
「…はい」
「……そう。。。なら、せいぜい劣化品は劣化品らしく私達の邪魔をしないことね。」
そう言い残すと、ミカくんの前世のお母さんは自害した。
目の前の光景に誰もが言葉を失っていた。
俺は生徒会長と2人で魔界に行き、とある人を見た。
そして、確信を得た。
先代勇者の奥さんは記憶を消す“能力”ではなく書き換える“能力”で、そのとある人のために1000年以上も前から計画を立てていたのだと…。
魔界で見たのは、しわだらけになって生きた化石となった先代勇者と、膨大な魔力を含む魔神の心臓のようなものだった。
微かに呼吸はしていたが、体はミイラに等しく体そのものがほとんど風化していた。
そのミイラのような体に、杭で魔神の心臓のようなものが打ち付けられ鎖で巻かれていた。
つまり、あれは自分を犠牲にすることで魔神を封印した呪いに近いものだった。
ここからは俺の仮説に過ぎない。
先代勇者は、そもそも魔王ではなく魔神の存在の方を恐れていた。
そして、魔神復活を阻止するために、魔剣…そして自分を犠牲にして魔神そのものを封印した。
先代勇者の奥さんは、勇者を解放することだけを考えて動いた。
解放するための方法は2つ。
1、魔神を復活させ勇者を自由にする
2、そもそも勇者がなぜ死なないのかを突き止め、勇者の息の根を止める
あの体の状態だとどっちみち死しかないが、生き地獄よりはマシだろう。
もし、俺が彼女の立場ならこうする。
1を裏で進めて2を表向きに進める…だ。
魔神復活のために魔王を犠牲にしたのは保険だろう。
なぜなら、校長先生を連れ去った理由から考えて2の方を優先しているらしい。
つまり、『神の恩恵』が不死に繋がっていると考えるのが妥当だろう。
校長先生はそのうち帰ってくるはずだ。
だが、もし魔神復活を進めるなら…
俺は全力で止める。




