下界>>>天界《14》
「目が覚めたみたいね」
生徒会長はアイリスの目が覚めるまで付き添っていた。
「そっかー…私は、負けたんだね…」
「貴方、あれが聖剣じゃなかったら殺されていたわよ?」
「……聖剣!?…道理で無茶苦茶強いわけだねー」
「えぇ。私とはまた今度遊んで欲しいわ」
「とか言ってやらないくせに…」
2人は仲がいいのか悪いのかよく分からない。
そんな2人を俺は眺めていた。
完全に命を奪うつもりで俺はアイリスさんを貫いた。
しかし、心臓を貫いた聖剣は実際の傷になることは無かった。
闘いが終わってから生徒会長に聞いたのだが、聖剣で天使は傷つけられないらしい。
首を貫いた魔剣の方は傷になってしまったが、運良く首の皮を貫いただけだったので止血だけで済んだらしい。
俺が殺そうとしたのは事実だ。
だけどあの時、一瞬だけ自分が自分じゃない気がした。
冷たい何かに体を預けるような…
そんな感覚を味わった。
この力は…危険かもしれない…
乱用するのは避けることに決めた。
動けるまで回復したのか、アイリスさんが座り込んでいた俺のところまでやってきた。
「君、強かったねー!またやろー。でも、今度は魔剣使わないで欲しいかな。傷残っちゃうからね。」
「俺は二度とやりたくないです」
心の底から拒絶しておいた。
「散々、殺しちゃうとか言ってたくせによく言うわ。」
生徒会長が悪態をついていた。
「じゃないと本気でやってくれないでしょー!?」
「はぁ…貴方ほんと、、、厄介だわ……」
生徒会長が心底呆れていた。
生徒会長は俺の方を見てきた。
「…助けてくれて…ありがと…っ」
生徒会長は恥ずかしいのか、俺と目を合わせないようにしていた。
「それと、名前で呼ぶの禁止…恥ずかしいから…」
焦り過ぎて名前で呼んでしまったのだ。
「あれは咄嗟につい…すいません」
「…たまにならいいわよ…」
「今、なんか言いましたか…?」
「なんでもないわ…っ!」
生徒会長が少し頬を膨らませていた。
すると、アイリスさんは俺と生徒会長に向き合うように立った。
「さてと、約束だし地獄を案内するよ」
「私達は地獄の案内より先代勇者の奥さんがいたかどうかを教えて欲しいのよ」
「それがね、あまり覚えてないんだよー。いたよーな気もするけど、誰だったか覚えてないし…不思議だね」
生徒会長は俺の方を見て言った。
「…閻魔様と同じね」
「うん。つまり、ここにいた可能性が高いね」
俺も同意した。
やっぱり記憶を消す“能力”の持ち主の可能性が高い。
「アイリス。貴方が2000年前から現在まで地獄の中で行った場所で一番違和感があるのはどこかしら?」
「違和感…?えーっとね、ケルベロスの飼育小屋かな?」
ん…?
最近ケルベロスという言葉をどこかで聞いた気がしたが、今はそれよりも案内してもらうほうを優先しよう。
「というか2000年も記憶あるんですね。」
「寿命長いからかも?それでも私忘れっぽいけどね!じゃあ、案内するね」
「えぇ。お願いするわ。」
俺達はケルベロスの飼育小屋へと向かった。
地獄は想像していた通りの場所で少し安心した。
空は赤く、池も赤い。
針で出来ている山と炎で出来ている山がある。
まさに地獄だった。
…はずなのだが、対して拷問が成り立っているふうでもなく叫び声などは聞こえてこない。
「えっと、、、地獄なのに誰も苦しそうじゃないですね…?」
「自分から望んで地獄に来たドMがほとんどだからねー。むしろ喜んでる人の方が多いと思うよー。」
…ある意味地獄だ。
「さてと、着いたよ」
俺達が案内されたのは鉄格子で出来た牢屋みたいな檻だった。
中には、ケルベロスが1匹寝ていた。
…これのどこが違和感があるんだ?
先に気付いたのは生徒会長だった。
「あら?ケルベロスの数が少ないわね」
「うんうん。そうだよー。いつからかは忘れたけど1匹だけになってたよ。」
…つまり、ケルベロスは連れ出された
なんのために?
もしかして、捜しているものがあった?
その為に地獄まで来てケルベロスを連れ出したのか…?
「ふむ…。。分かったのはケルベロスが連れ出されたということだけね。また、手がかりがなくなってしまったわ。」
「他のケルベロスの居場所なら、そのケルベロスがわかると思うけどね」
檻の中のケルベロスを指さしながらアイリスさんは言った。
「…え?」
生徒会長は驚いた表情を浮かべていた。
つまり、これでウリも探せるということか。
「ユライアがそんな表情するなんて珍しいよね。そんなに他のケルベロスを探せるのが嬉しいのー?」
「…えぇ……」
生徒会長は少し安心したような表情になっていた。




