下界>>>天界《8》
俺達はメイさんに、食事の用意出来た部屋まで案内してもらった。
テーブルには若々しく凛々しい目付きの男性が座っていた。
年齢は30代後半~40代前半くらいだろうか。
筋肉質で普段から鍛えているのがわかる。
その男性は生徒会長を見ると、驚いた表情を浮かべていた。
「…ユライア……なのか…?」
「お久しぶりです父様」
ユライア…?
天使の時の名前か…?
俺は邪魔をしないように半歩引いて見守った。
「元気そうで何よりだ」
「父様こそ、まだ亡くなってなかったんですね」
…生徒会長の言葉が辛辣すぎて俺は自分の耳を疑った。
大天使は寂しそうな表情を浮かべていた。
「まだやり残したことがある。死ぬわけにはいかんよ」
「…娘2人見殺しにしたくせに…っ!」
俺は生徒会長のこんな姿を始めて見た。
普段、めんどくさい所はあっても、誰かに対して明確に敵意を向ける事は無いのだ。
余程のことがあったのか…
「それで、ユライアが大嫌いな父様のところをわざわざ訪ねてまで頼み事とは何かな?」
……この人本当に嫌われてるっていう自覚あるのか?
生徒会長は堪えながら声を絞り出した。
「……魔界で魔神が復活しようとしています。このままだと天界と下界が危ないです」
「ふむ…それで?」
「それで…って!たくさんの天使や人が死ぬことになるわよ!」
我慢出来なくなったのか、生徒会長は遂に声を荒らげてしまった。
「どうすることも出来ぬのだよ。…2000年ほど前か、先代勇者が敗北した時点でこの事は決まっておったのだ。今更運命は変えられぬ。」
大天使はどこか遠くを見ているようだった。
俺はいくつか疑問が浮かんだが、出しゃばらずに生徒会長の出方を見ることにした。
「…どういうことかしら?」
「……今から2000年前、魔王は魔神を復活させようとしていた。その方法は、魔剣に日々魔力を注ぎ続け膨大な魔力を蓄積し魔人に与えることだった。勇者はそれを阻止するために単身魔界に行き、魔剣を破壊した。しかし、勇者が魔剣を破壊した後どこかに消えてしまったのだ。」
「それなら、今諦める理由にはならないのではないかしら?」
「…いいや。実は勇者が現れる前、神様は予言していらしたのだ。『2人の勇者が交わる時、魔神は眠る。』とな。もう勇者はおらん。だから諦めておるのだ…」
「ふーん勇者…ねぇ…?」
そんなに俺の方を見ないで欲しい。
「父様、まだ希望はあるわ」
「…なんだと?」
「ね?勇者様?」
またこっちをチラチラ見るのやめて欲しいのだが…
とりあえず自己紹介をしておこう。
「初めまして。黒城未花です。勇者ではないですが…」
「おおお!君は勇者だったのか!そうかそうか。頼もしい限りだ。………ん?去年の『神聖天舞会』で優勝した者はおったが、天界の部隊長に負けたはず…。。君は本当に勇者なのか?」
「だから!勇者じゃないです!」
…この人、人の話を聞いていないのか…?
「黒城くんは先代勇者の聖剣を持っているわ」
生徒会長の助け舟がなかったら危ないところだった。
「あの聖剣は…魔剣と壊れたのではなかったのか…。ふむ。よし、それなら先代勇者の行方を探すとしよう。」
「父様、2000年前だと生きてるかどうかまでは…」
「ふむ。人間の寿命は短いのう。…2人の勇者と予言にはあった。つまり、勇者が最後どこに居たかを探すこと自体に意味があったりするかもしれないぞ。」
俺も大天使と同じことを思っていた。
勇者が最後どこで何をしていたのか…
俺に聖剣を渡したのは誰なのか…
今は魔神を倒しに行こうとして殺されるより、予言の方を優先した方がいい気がする。
「2人とも、まず閻魔のところに行ってきたらいい。あいつならきっと力になってくれるぞ」
閻魔と聞いて嫌な予感がしたが、俺はそっと胸に閉まった。




