下界>>>天界《6》
「貴方には今から早速魔界に向かって欲しいわ」
「今からですか…?」
「…時は一刻を争うわ…お願い…!ウリを助けてあげて……!」
生徒会長が頭を下げてきた。
手が震えている…
ウリからの最後の連絡を聞いた時、生徒会長は悔しさを必死で堪えているようだった。
「こんな時に『なんで俺なんですか?』なんて聞いたら怒られそうですけど、敢えて聞きます。なんで俺なんですか?」
「貴方は魔王に勝った。だけど実際、貴方が魔王に勝てるわけがなかったのよ。聖剣を使えたとしても…ね。未熟な能力者だったとはいえ、それだけ魔王の“能力”と力は絶対的よ。私が例え全力でやっても無事では済まなかったでしょうね…。その敵に貴方は勝ったわ。だからこそ、私は貴方に賭けてみたいと思った。」
「…わかりました。。。先生、天宝寺に『マリアを宜しくお願いします』って伝言お願いできますか?」
「わかったよ〜伝えておくね~」
「それで、俺はどこ行けばいいんですか?」
「校長室よ」
「この学校って、、、校長先生いたんですか…?」
生徒会長が呆れたような表情を浮かべた。
「貴方ほんとに何も知らないのね……。校長先生が唯一この学校で天界と下界を繋ぐ門を作る“能力”を持っているわ。早速行くわよ」
天界に行ってから魔界に向かうのか…?
「先生はお留守番だよ~無理はしないでね~」
茜先生が緩く手を振って送り出してくれた。
俺たちは校長室へと向かった。
生徒会長が扉を軽くノックした。
「失礼します」
「うむうむ。待っておったぞっ!勇者よ!今こそ魔王を討ち取るのじゃ!」
小学生くらいの女の子が部屋の真ん中で決めポーズをしていた。
「ふっ…1回言ってみたかった事がついに言えたのじゃ」
生徒会長は必死で笑いを堪えながら指摘した。
「魔王ではないですわ。」
「え?」
「魔王ではないですわ。」
「…言い直しても良いかの?」
「ダメです。早くして欲しいですわ。」
「うーっ……。では、付いてまいれ…」
明らかに肩を落としながら校長室の更に奥の部屋へと案内された。
その部屋から地下への階段が伸びていた。
地下はひんやりとしていて薄暗かったが、かなりの広さだった。
校長先生はこっちを向き声をかけてくれた。
「さて、、、今は急を要するということで、帰ってきたらまたじっくり話そうではないか。勇者様。」
そして、校長先生は門を作り扉を開けてくれた。
「行ってこい!そして世界を救うのじゃ!」
俺と生徒会長は扉の向こうへと足を踏み入れた。
「ここが…天界」
建物は西洋風のものが多く、花や木が道の脇に植えられとても美しい街並みを作っていた。
空を見上げると下界と同じ雲が広がっていた。
俺達はそんな街並みの一角に放り出されていた。
「本当に天界なんですか…?」
「えぇ。昔はもっと緑の方が多かったみたいだけど、今はこのとおり下界の文化を少しずつ取り入れてる真っ最中だわ。天使達は寿命が長い分、娯楽とかには触れないようにしていたのよ」
「どうしてですか…?」
「天使達は他の種に比べて数が少なく寿命が長い。だから、1人でも娯楽に触れてだらけてしまうと天使にとってかなり痛いわ。でも最近、その考えが見直されてきたのよ。『程々に娯楽に触れるなら問題ないんじゃないか』という思考が急速に広まったわ。その結果が下界の文化を取り入れようとしたこの街並みよ。」
「つまり、天界も楽しい場所にこれからなるってことですね。」
「ふふふ。ちなみに、娯楽が広まった原因の一つに、ある天界最強の一人の少女が娯楽に触れ堕天したあげく処刑されたという逸話があるのだけど。また話してあげるわ」
「…結構です」
生徒会長の昔話に興味が無い訳では無いのだが、普段の生徒会長の行動からしてきっとロクな話ではない。
「長話もなんだしさっさと行くわよ」
「行くって…どこにですか?」
「決まってるじゃない。大天使様のところよ。あの大きな城に大天使様がいるわ。」
生徒会長は立派な城に指を指した。
白を基調とした派手ではないが決して地味でもない。
絶妙な黄金比でその城は存在していた。
「立派ですね」
「当然よ。神様が直接作ったんだから、美しくない方が有り得ないわ」
「…神様?」
「…また機会があれば話すわ。それより、早く行きましょう。」
俺達は馬車に乗って城へと向かった。




