第六話 ー不死鳥の騎士ー
――生きている……のか……
あの鎧の巨人との戦いで、死んでいてもおかしくはなかった。実際、ベルゼブア自身は死んだと思っていたのだ。
それほど、凄まじい戦いだった。
どうやら、体力を消耗すると人の姿になるらしい……最初は動けなかったが、少し時間が経つと問題なく体を動かせる程度にはなった。
それから、ベルゼブアは、あの鎧の巨人がどうなったのかを確かめるべく、鎧の巨人が飛ばされたはずの方向へと歩き出す。
暫く進んで、巨人は見つからなかったが、人間を一人、見つけた。
最初は、たかだか人間一人と、無視するつもりだった。が、その男の顔にどこかで見た覚えがあった。
そう、一月ほど前に門が開いた際に送り込んでいた先兵。それからこちらの世界で、運命の巫女を探した時、確かこんな顔の人間が、彼女と親しくしていたのを覚えている。
それに加えてもう一つ……この体にある記憶にも、同じ顔をした人間が居る……
――そうか、コイツがカルマか……
リクトから読み取った記憶からも考えれば、間違いないだろう。
ツイている……そうベルゼブアは思った。
今使っているこの体……そして、巫女と親しいこの男……いい条件が揃っている。
少し離れ、下僕を一体近くに呼び寄せる。……目覚めた所を襲わせ、そこを助けて信用を得る。そうすれば自ずと巫女に近づく事も出来るだろう。
……そうベルゼブアは企てた。
*
「その剣……まさか、お前があの巨人か!」
「そういう事だ。……だが、今更気づいても遅いんだよ」
フェニキスは剣を構えてベルゼブアに斬りかかる。
ベルゼブアはそれを回避しようとしたが、動きが鈍ってしまい完全には避けきれなかった。
「クソッ! 力は温存しておきたかったが、こうなったら仕方がない……」
黒く禍々しい瘴気を放ち、姿を変えていくベルゼブア。
それに対し、フェニキスも剣を天に掲げて巨人へと姿を変える。
再び対峙する鎧の巨人と、黒の怪物。……だが、ベルゼブアの姿は、昼間に戦った時とどこか違う……あの時は、尻尾などなく、虫のようだった頭部も、今は角の生えた獣のようなものに変わっていた。
その変化に、何故かベルゼブア自身も戸惑っている様子だった。
しかし、フェニキスはそんな事は今は関係ないと考えるのを止め、隙が生まれているベルゼブアに対して斬りかかる。
意識がそれていたベルゼブアは、回避が遅れ、もろに攻撃を受けてしまう。
この期を逃すまいと、フェニキスは追撃を繰り返し……倒れたベルゼブアに止めを刺そうとしたその時……
「待ってくれ! 頼む、助けてくれ……」
ベルゼブアからリクトの声が聞こえてくる。
「この化け物に体を乗っ取られてしまったんだ……俺には今こうして動きを止めるのが精一杯だ。……アンタの力で、俺の体を取り戻してくれないか? お願いだ……」
「……分かった。今助けよう」
フェニキスは、立ち上がったベルゼブアに近づくと……容赦なく、その腹部に剣を突き刺した。
「助けてやるよ、地獄行きをな」
苦しみの声を上げるベルゼブアに、フェニキスはより深く剣を食いこませる。
「声真似程度で騙せると思うなよ。あの世から出直してこい」
「いいや、これで狙い通りだ……我ながら名演だったよ」
「何?」
ベルゼブアは、刺された刃の部分を掴む。
フェニキスは焦って引き抜こうとするも、かなり強い力で握られている為、少しも動かない。
ベルゼブアは、空いたもう片方の手に黒い光を集中させ、それをフェニキスに向ける。
「この距離ならば避けられまい? それともこの剣を手放すか?」
剣を失えば、恐らく巨人の力も失ってしまう事だろう。それだけは絶対にできない。
だが、今のままでは攻撃を食らってしまう。
「道は二つに一つだ。どうする?」
「いいや、そうとも限らない」
フェニキスは剣を握る手に、力を籠める……すると、剣の刀身が徐々に光と熱を帯びていく。
「今度こそ消えてもらうぞ、ベルゼブア!」
そう言い放つと同時、剣から光線が放たれた。
深く剣を刺されていたベルゼブアは、避ける事も出来ずにそれを受けてしまい、光線に押し出されるように後ろへと飛ばされて光に飲まれていく……
倒れて動かなくなったベルゼブアを見て、フェニキスは力が抜けたように剣を支えにその場に膝をつく。
回復もままならない状況での連戦に、流石のフェニキスも疲弊しきっていた。
だが、諸悪の根源であるベルゼブアは倒したが、まだ取り逃がした魔物達は残っている。
こんな所で倒れるわけにはいかないと、無理にでも立ち上がろうとした時……
「いけませんフェニキス! それ以上戦う事は許しません!」
リンナの声が聞こえた。
かなり急いで追いかけて来たのだろう、リンナは肩で息をする程に息が上がっていた。だが、それでも彼女は精一杯声を張り上げていた。
「死んでしまっては元も子もありません! 戻ってきなさい! もう、魔王は倒したのでしょう!」
無理に声を張り上げたからか、咽るリンナ。
リンナは呼吸を整え、両手を大きく広げてる。
「疲れているでしょう? 大丈夫、私が貴方を守りますから。安心してください」
先ほどまでと比べて小さな声だったが、それでもフェニキスには充分に聞こえていた。
まるで、母親が自分の子供に向けるような、そんな優しい笑みと声……自分だって相当疲れているだろうに……とは思いながらもフェニキスは、嬉しいような、どこか悔しいような、そんな複雑な思いを抱いた。
正直、リンナの姿を見たその時から、安心している自分が居た。
自分が自分の意思で生きていると、確信できた今だからこそ分かる。
フェニキスは、彼女を……リンナを守りたいと、その思いから戦っていた。ただ、これはカルマにとって彼女が大切な存在だったからだろうと思っていた。
だが今は違う、このリンナに対する思いは確実に自分のモノなのだと分かる。だからこそ、彼女が自分を通してカルマを見ていると思えたのが嫌だったし、今、彼女が自分に気を向けてくれている……そう思うだけで、胸が高鳴る。そして、まるで子供のように見られているのが、少し悔しい。
ただ、今はそれでもいいのだと思える。リンナが『自分』を見てくれているのなら……そう思ってその手をリンナの方へと伸ばしていた。
だが、その手はリンナへと届く前に止まってしまう。
背後から感じる吐き気を催してしまうほどの、邪悪な気配……そんな筈はないと、最初は思った。
しかし、それ気づいたらしいリンナが、表情を見る見る曇らせていくのを見て確信する。
フェニキスは振り向くと同時、剣を盾にするように防御の体勢を取る。
すると、前方からフェニキスよりも一回り体の大きい黒い猪が突進をしてきた。……フェニキスはそれを受け止めるも、あまりの力に踏ん張りも効かず押し飛ばされてしまう。
「ベルゼブア……なのか? さっきとはまるで姿が違う……」
『自分でも驚いている所だ。今度こそ死んだと思ったからな』
耳から聞こえるのではない。頭の中に直接響いてくるような声。
ベルゼブアは、視線を落としリンナの方を見つめる。
『お前が運命の巫女か。ようやく会えたな』
この隙にと、フェニキスは斬りかかろうとするも、ベルゼブアはこちらに目をくれる事もなく横に首を払うだけで跳ね飛ばしてしまう。
『今すぐにでも、お前の力を手に入れたい所だが、まずはあの邪魔者を先に片付けるとしよう』
ベルゼブアは再びフェニキスに向かって突進するが、フェニキスは空へと飛んで回避する。
地面を抉りながら止まるベルゼブアは、空を見上げ、
『流石に同じ轍は踏まないということか……ならば、これはどうだ?』
と言うと、ベルゼブアは体を変化させ、豹のような姿へと変わる。
そして、跳躍してフェニキスに噛みついた。
『散々邪魔してくれおって……楽には死なせんぞ』
咥えたフェニキスを地面に落とし、何度も踏みつけるベルゼブア。
抵抗する力も残っていないのか、フェニキスは全く動かない……そんな彼を再び咥え、空へと打ち上げると、また猪の姿へと変わり、その牙を落ちてくるフェニキスに向ける。
「させません!」
牙を突き刺そうとした時、ベルゼブアが包み込まれるように光る。それによって身動きが取れなくなり、フェニキスはそのまま地面へと落ちる。
『運命の巫女、貴様の力か!』
リンナは苦しそうに胸を押さえながら、フェニキスの元へと走る。
「フェニキス……死なせたりなんか、しません……絶対に……!」
なんとかフェニキスの元まで辿り着いたリンナは、彼を治癒しようと力を使う。
意識がないからか、光の灯らないフェニキスの瞳。……ベルゼブアを抑えながらでの治癒では、とてもではないが回復が間に合わない。
「どうしたら……どうしたらフェニキスを……」
自分の力が尽きていくのを感じていた。
――私はどうなってもいい、せめて……いいえ、違う。一人にさせないと、孤独に刺せないと誓ったのです。フェニキス、私は貴方の傍に居ます……だから……
「だからフェニキス、目覚めなさい! 生きて、私の傍に居なさい!」
強い光が、フェニキスとリンナの周囲を包み込む。
ベルゼブアを拘束していた光は解けたが、眩い光に思わず目を伏せる。
『なんだ、何が起こっている!』
ただならない力を感じた。ベルゼブアにとっては不快極まりない、『光の力』を……
「全く、無茶をする」
目を開くと、そこには赤いマントをたなびかせ、眩く輝く赤と銀の鎧を纏った巨人が居た。
その巨人は、ベルゼブアには目もくれず飛びあがり、離れた所に降り立つと、その手に抱えていた何かを地面に降ろす。
「ありがとう、リンナ……君はオレが守る」
眠る彼女にそう言い残し、巨人は宙に浮かんで身を翻す。
巨人の背後から上る太陽の光が零れる……そして、巨人……フェニキスはその光と共にベルゼブアまで一直線に飛び、突撃する。
そして、その突撃で倒れたベルゼブアは、立ち上がると背後に回っていたフェニキスを向く。
『フェニキスゥ……まだ生きていたか。なんなのだ、その姿は!』
「それは、お前の方が詳しいだろう? これは、お前が求めていた力だ」
『何……? まさか、巫女の進化の光だったというのか』
「そういう事だ」
そう言って、フェニキスは腰に携えていた剣を引き抜き、それをベルゼブアに向けて斬りかかる。
ベルゼブアは咄嗟に避けようとしたが、フェニキスは剣の刀身に太陽の光を反射させた為、それに目が眩んで一瞬怯む。そして、その一瞬で脚を斬られて、ベルゼブアは立っていられなくなりその場に倒れる。
「その脚では豹の姿に戻ろうと、飛べはしないだろう」
『おのれ、フェニキスゥ……!』
憎々し気にフェニキスを見つめるベルゼブア……当の本人はそんな事意にも介さず、剣を天に掲げる。
背後から受ける太陽の光から、力を受け取るように輝く太陽の剣……それを構えたフェニキスは、ベルゼブアを頭から尾の先まで一直線に飛んで、一文字に斬る。
粒子となって消えゆくベルゼブアを見つめ、今度こそ倒した……そう思ったその時、フェニキスは気づいた。……粒子が空中で集まっているという事に。
それらが一つに纏まり、形作っていく。
『そうか、そういう事だったのか……今、ようやく分かった』
ベルゼブアの声が響いたと同時、フェニキスは巨大な腕に全身を包まれるように掴まれた。
そして、そのフェニキスを掴んだ手は、その主の顔の前まで持っていかれる。
骸骨とも、竜のものとも思えるその顔は、フェニキスをあざ笑うかのように口元を釣り上げる。
『惨めな姿だなあフェニキスよ』
「ベルゼブア……何故、生きている!」
『貴様がどうして生きているのか。それを考えれば分かるだろう? 何故、我が生きているのか』
「なんだと……?」
何を言いたいのかは理解した。だが、認めたくはなかった。
――あれは、リンナがオレに使ってくれた力だ……こんな奴に、使うはずがない。
『心配するな、巫女は我に何もしてはいないさ』
「それなら、何故……」
『巫女の力が他者に進化を促すモノなら、我は自分自身を進化させる力を持つのだよ。……そう、たとえ死ぬ事があろうと、その度により強くなってまた蘇るのが、我が進化の力だ!』
そう言ってベルゼブアは、フェニキスを掴むのとは別の手で、唯一手からはみ出している彼の頭部を突き、グリグリと弄りだす。
『どうした、もう抵抗はしないのか? そんな物だったのか、お前が与えられた力は』
フェニキスよりも優位に立っていると思っているからか、それとも、進化した自分の力に増長したのか、とにかくベルゼブアは余裕そうに高笑いしていた。
――気に障る奴だ、自分を不死身だとでも思っているのか。
「たとえ、死ぬ度に蘇るのだとしても、限界はあるはずだ。死なない命など、ない!」
『ほう……ならば、それまで我を殺し続けると、そう言うのか? そんな事は……』
そんな事は不可能……と、言いかけた時、握っているフェニキスが熱を帯びていっているのを感じた。
そして、燃え上がるように炎を纏ったフェニキスが大爆発を起こし、それに巻き込まれたベルゼブアも吹き飛ぶ。
『自爆したか、愚かな事よ……そんな事をした所で、所詮減らせるのは一つの命のみ……』
復活したベルゼブアは、そう呟いた。
だが、直後に剣が宙に浮いてるのが見えた。
そして、剣を中心に光が集まりフェニキスが復活する。
『ほう、剣に魂を移していたのか。だが、それで復活できた所で、大分体力を消耗しているようだが?』
「お前を倒すくらい、これでも……充分だ……」
息も絶え絶えにフェニキスは告げ、剣を構える……
*
リンナが目を覚ました時、目の前には見たこともない怪物が何かを掴んでいた。
初めて見た怪物だが、アレがベルゼブアだというのは、気配で分かった。そして、それが掴んでいるのはフェニキス。
何故また姿が変わっているのかは分からない。
ただ、フェニキスがまた何か無茶をしそうだという事だけは分かる。目覚めてからずっと、嫌な予感がしているからだ。
「たとえ、死ぬ度に蘇るのだとしても、限界はあるはずだ。死なない命など、ない!」
その嫌な予感は的中し、目の前で大きな爆発が起こった。
直後にベルゼブアが復活し、それに続いてフェニキスも復活した。ただベルゼブアはまた姿が変わり、加えて無傷に見える。それに対して、フェニキスはかなり疲弊しきっている様子だった。
それでもなお、戦いを続けるフェニキスだったが、劣勢なのは明らかだった。
――今の私では、何もできない……戦う力もなければ、彼を癒す体力もない……ただ、見守ることしか出来ないの?
体を動かす事もままならないまま、ただフェニキスが追い詰められるのを見ていることしか出来ない。その悔しさに、リンナは唇をかみしめた。
――何か、何か私にできる事はないの? フェニキスはベルゼブアが死ぬ度に蘇ると言っていた……なら、フェニキスが強くなっても、終わりがない……どうしたら……
そこで、リンナは気がついた。
ただ一つ、ベルゼブアを倒す方法がある事を。
リンナはふらふらの体で立ち上がり、ベルゼブアの方を向いて大きく息を吸い込み、
「ベルゼブア!」
と、大声で呼びかける。
二人が戦いの手を止め、こちらを向いてくる。
「貴方の狙いは、私でしょう? 私はここです! 逃げも隠れもしません、ここまで来なさい!」
『ほう……まあいい、そろそろコレにも飽きてきたところだ』
ベルゼブアは止めようと飛び込むフェニキスを跳ね除け、リンナに向かって歩き出す。
『本当に逃げないのか』
「これもきっと運命です、抗えぬ定めなら、従うまで」
強い意志の籠った目で、ベルゼブアを見る。
『いい心がけだ。ならばその力、頂くぞ』
ベルゼブアが大口を開くと、次の瞬間、リンナの視界は闇に包まれた。
*
リンナを食らったベルゼブアは、その体は黄金に輝き、大きさは天よりも高い……そして、樹木のように地面に根を張っている。
その光景は、まるでベルゼブアが世界そのものと同化したかのように思えた。
「どうしてだリンナ……どうして、ベルゼブアなんかに……」
リンナが何故ベルゼブアに身を委ねたのか、それが分からない。フェニキスはただ、悔しさに拳を握りしめることしか出来なかった。
『フハハハハハッ! これが……この美しき姿が我が究極にして完全なる姿だ! まさに世界の王……いや、神に相応しい!』
高らかにそう告げるベルゼブア。
その言葉に、フェニキスは引っかかった。
――究極にして……完全だと? それはつまり、これはベルゼブアの最終形という事か? そうだとすればアレを倒せば、もう復活できない筈……まさか、リンナはその為に?
リンナがベルゼブアに取り込まれたのは、すべてを諦めた訳ではなかった。むしろ、フェニキスを最後まで信頼していたから、出来た事だろう。
だが、フェニキスはそれに気づいても、肩を落としたままだった。
――もし、そうなのだとしても、あんなのをどうやって倒せと言うんだ。……そんなの、オレには無理だ。
完全となったベルゼブアは、あまりにも強大すぎる。フェニキスとは比べものにならない程に……何をした所で、傷一つ付けられないだろう。
そう、フェニキスは諦めかけていた……
だが、そこで何か様子がおかしい事に気がつく。
ベルゼブアが、静かすぎる……
『フェニキス……聞こえますか?』
そう思っていたところに、リンナの声が頭に響く。
「リンナ!? 生きていたのか! どこだ、どこに居る?」
『……いいですかフェニキス。よく、聞いてください。今ベルゼブアは、私が内側から抑え込んでいます。これからベルゼブアの弱点を教えます……そこに、全力の攻撃をするのです。そうすれば、この怪物は消滅します』
すると、ベルゼブアの胴体に強く光を放つ部分が現れる。
『見えますか? これが、ベルゼブアの中枢です……さあ、フェニキス止めを刺すのです!』
「……まて、それなら君はどうなる? そんな事をすれば、ベルゼブアの中に居る君も、共に消えてしまうんじゃないのか?」
リンナは答えない。……きっと、それが答え。
『何を……している……巫女よ』
ベルゼブアの声が聞こえだす。ようやく気がついたらしい。
『フェニキス! ベルゼブアが抵抗を始めました……あまり長くは持ちません! 早く止めを!』
「オレに、君を殺せと言うのか……そんな事出来るか!」
『……辛い選択を強いているのは分かっています。ですが、このままでは、私はベルゼブアに殺されてしまいます……そうなるくらいなら、せめて、貴方の手で……』
分かっていた。きっと、他に方法はなかったのだろう。
だが、例えこれが運命なのだとしても、到底納得できることではなかい……フェニキスは、その手に握る剣を強く握りしめた。
『フェニキス、私の、最後のわがままです……お願い……』
「うおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
それは、悲鳴にも聞こえるフェニキスの叫び。
天に剣を掲げ、空中に円を描くように回すと、光の輪が現れた。
そしてその光の輪をベルゼブアの弱点に向けると剣で貫き、そこから七色に輝く光線が放たれた……
『おのれ、巫女よ、離せ! 離せぇ!』
ベルゼブアは抵抗するも、まだ動けない。……もう、手遅れだった。
『フェニキスゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!』
恨みの籠った叫びが、フェニキスの頭に響く……
それを振り払うように、フェニキスは自分の持てる力の全てを、その一撃に注ぎ込んだ……
次回最終回ですが、次の金曜日は私用により更新できないので、水曜日に更新します




