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モグラとマッピング * 依頼受け付け中 *  作者: Biz
モグラとマッピング
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大事な事を言わない

 俺を連れて行く者が居なくなったが、今度は俺が連れて行く立場となる。

 伴侶となった猫娘――ファムは男の子と女の子、可愛い双子を産んだ。

 産まれた子には全員獣の耳が付いているが、これは全く気にしない。ファムに似て可愛らしい子供で、もう食べてしまいたいぐらい可愛い子供たちである。


 いきなりの二児の親となった俺とファムは、覚悟していたものの毎日が大騒動……かつてモグラに振り回されていた時以上の忙しさであった。

 猫の手はもうあるので、犬の手と豚の手を借りながらも、〔マプ〕と〔メク〕と名付けられた子供たちは、すくすくと成長し――今日、五歳の誕生日を迎えた。


「じゃーんっ」

「わーっ、手のケーキだっ!」

「おててといっしょー♪」


 子供たちは自分の猫の手と見比べ、ボクのだ、アタシのだと喜んでいる。

 母の顔でそれを微笑ましく見守っていたファムは、俺を見て『どうだ!』とばかりにニヤッと笑った。

 ファムの料理も、五、六年も経てば多少は上達しているのだ。


『バーガーより……』

()るでさぁ……』


 家の裏では胸やけを起こした〔モンド〕と〔バックス〕、そしてオークが転がっているが。

 豚はまだしも、犬にケーキはダメだろう……お前らも食うなよ。


「ねーねー、何で外にサラダおいてるの?」


 そんな何十個の中で、何とか形となったケーキを切り分けた時、男の子のマプがそう聞いてきた。

 そう言えば、この子たちはその理由を知らないんだよな――。


「ママとパパの、大事なお友達の日、でもあるんだよ」


 ファムはこの事を思い出したり、話したりするといつも涙するのだ。

 今日はこの子たちの誕生日である。ファムは涙をぐっとこらえていた。


 この日は、我々の友――役目を完遂したココと別れた日でもある。

 地図の他に『このまま置いて行け』『今日この日、飯を用意しておけ』とのメモも残しており、連れて帰ると言って聞かないファムを何とか説得し、俺たちは友の言葉に従った。


 ・

 ・

 ・


 その日の深夜――

 子供たちはまだ寝ていないのか、部屋の方からゴソゴソと物音がしている。

 本来なら『早く寝なさい』と寝かしつけに行くのだが、今日ぐらいは大目に見てやろう。


 だけど、早く寝て貰わないと……大人の時間が、ね?


「ねぇ、ロイル」

「うん?」

「あと四人くらい……欲しいな」

「なんですと!?」

「もっと賑やかな方が楽しいかなって。経済的にも大丈夫そうだしさ」


 確かに俺の出版した書籍――

 "ロラドの真実"や"モンスターの生態"が大ヒット、"ロイルの冒険"は大爆死。

 それ以外では、ロラドの女王こと"血染めの女王"の占いの館を筆頭としたモンスターパークも好調であり、水晶湖の人魚とマーマンが勝手にやって来た為、更に反響を呼んでいる。

 そして、先日ようやく一児を授かったラウ姉の援助もあって、経済的にな問題はないのだが……。


「よ、四人となると……最低でも四年はかかるよね?」

「フェルプは多産だし、出産回数を追うごとに増えるみたいだから、多分一回で出来るんじゃない?」

「日を改めまして……」

「えぇー……? でも、ロイル君は今晩我慢できるのかなぁ? こことかさ、うりうりっ」

「ちょっ、まだ早いから!?」


 結局いつもの夜になりそうだ、と互いに寝間着を脱がせ合っていた時だった――。


「パパッ!? ママッ!?」


 部屋に居た子供たちが血相を変えて飛び込んできた。

 まだ脱がせ合っていた所だったのでセーフだ、子供たちには『着替えさせあっていたところだよ』とでも言えば誤魔化せる。まだ全てを察する年じゃない――はずだ。


「ここ、こらーっ! 誕生日だからって夜更かしして、パパとママの邪魔しちゃいけないの!」

「そ、外っ! 外でサラダ食べてるモンスターがいる!」

「でで、でっかいっ、でっかいの!」


 まさかこんな場所に――と、我々は大急ぎで向かった。

 サラダに関しては〔モンド〕か〔バックス〕、オークの誰かが勝手に食べるし、子供たちはあいつらの事を『モンスター』とは呼ばない。


 ギィ……

 と、音を立てて開いた扉の先には、確かに空になったボウルがあった。

 俺はかつてのモグラの剣を、ファムは子供たちを後ろにクロスボウを構えている。

 剣を握り、ゆっくり進んで行く……が、初めての冒険のように剣を握る手は震えていない。


 今の俺には守るべき"家族"がいるのだか――


「う、うわっ!?」

「ロッ、ロイル!?」

「パパ!?」

「ぱぱっ!?」


 扉を出た瞬間に何かに足が引っ掛かり、盛大にすっ転んでしまった……。

 一体何に足を――?


「ふむ。相変わらず鈍くさいお坊ちゃんだ」

「なっ!? ま、ままっ、まさかっ……こ、ココか!?」

「こ、ココっ!?」

「もぐら!?」

「もぐらさんだーっ♪」


 死んだとばかり思っていた大事な友――モグラ。

 黄色いヘルメットにヘッドライト、ベストを着てハンマーを担ぐ死んだはずのモグラが立っていた。


「こ、ココ……生きて、た……うぁぁぁぁんッ……」

「あの程度で死ぬものか」


 ファムはもう泣きじゃくり、何をしていたと聞いても『面倒事を()()()()()()()奴らを全員ぶん殴りに行ってた』と言うだけである。


「さて……来たばかりだが、ちょっと手伝え」


 未完成の地図をチラつかせるこのモグラは迷宮の地図を作る。

 そして、このモグラはいつも大事な事を言わない。


 ()()に来い――と。


俺とファムを巻き込んだ、モグラのマップ作りはまだ終わらなさそうだ。

モグラとマッピング * 依頼受け付け中 *、これにて終了となります。

評価・ブックマークは励みとなりました。この場を借りて御礼申し上げます。

色々拙い所があったかと思いますが、最後まで読んでいただきまことにありがとうございました。

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