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モグラとマッピング * 依頼受け付け中 *  作者: Biz
8章 続・リノリィの迷宮
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1.トラブルが日常

【 リノリィの迷宮――やはり我々の終わりであり、新たな始まりだった

  いつも大事な事を言わないモグラは、去る時も来る時も突然である。

  どうしていつも、こちらの都合も考えず急にやって来るのだ。 】


 あれから約九か月が過ぎようとしていた――。

 ココはティアラを見つけた夜、『さようなら』も言わないで、突然ここトンモーバを去った。

 残された俺とファムはそのまま残り、これまでの騒動とは無縁の平穏な日を送っている。それまでトラブル続きだったからか、何もない日がつまらなく感じる時もある。

 毎晩の(さか)る声に、遠回しに諌められる事はあったものの、それ以外ではいつも通りの生活なのだが……。


「ろ、ロイル――あのね」

「お、おぉ……どうしたんだ?」

「え、いや……えへへ、どうかな」


 やはり、たまには変化があった方が良い――。

 ファムは、いつものショート丈のタンクトップ&ホットパンツ姿ではなく、ここでのロングスカートにカーディガンの、"清楚"と言う名の地味ファッションだった。

 街では最近、ファムに触発されてか冒険する女性もチラホラ出てきているが……こ、これはこれで何かいいなぁ。ギャップと言うか何と言うか――。


「あ、あのねそのボク……じゃなくて、わ、わわ」

「わ?」

「わわ……わた……わ、私ねっ……」

「お、おぉ――可愛いぞーっ」

「わっ、こ、こらーっ抱きつくなーっ」


 実際の所、毎日こんな感じだった。

 いつもの腕やお腹の毛のモシャモシャ感が少ないのは残念だけど、これはこれで新鮮でイイ。

 この匂い、そしてこの包む衣を剥ぐと、最近ちょっとだけ大きくなった丘陵が――。


「い、今はダメッ!?」

「あぐっ――!?」

「あ゛!? ろろ、ロイル大丈夫!?」


 バチが当ったようだ……。

 久々に喰らった猫パンチはやっぱり――痛い。


 ・

 ・

 ・


 気がつけばベッドの上だった。どれくらい気を失っていたか分からない。

 懐かしいようなデジャヴのような光景だが、久々のハードパンチに頭がまだぐらぐら揺れているようだ……。

 しかも幻覚まで見えている――あのモグラは最近どうしているか、と考えていたせいだろうか?


「こ、ココ!?」

「ふむ。変わりはないようだ。じゃあ、《モール》に乗って少し手伝え」


 今まで何をしていた――と聞く間もなく、モグラは部屋を出て行った。

 しかし、『モールに乗れ』と言われても、あれはココが去ってから動かなくなったんだが……。

 何とか場所を移し、その道に詳しい者を集めて中を見てもらっても、構造が全く分からないままであった。

 唯一分かったのは『何かをはめ込む部分に、それが無かった』と言うことぐらいだ。その部分は懐中時計のような形らしいが――まさかな?


 《モール》を保管していた倉庫に行くと、〔モンド〕と〔バックス〕が雑巾とハタキを持ってそれの掃除をしていた。


『リノリィの迷宮に』

『行くって聞いたんでさぁ』


 え? そうなの?

 でも確かに、あそこの地図は全部作れてなかったらな――

 この《モール》の材料となったゴーレムが鎮座してた先、アグレッシブな植物が我々の行く手を阻んでいて断念していた。

 ついに、そこの突破方法を見つけたと言う事か。相変わらず何も言わない奴だ……。


 ココが何かいじくり回していたと言うので、起動するようになったのだろう。

 九か月ぶりに操縦席に座ったが……非常にフワフワした感覚だ。

 ガコンッと音を立て、久しぶりに命を吹き込まれた《モール》の懐かしい感触――上手く操縦できるかと逆に不安にもなる。


「お、おぉ!?」

『あーあ』

『いったー』


 ガシャーンッと音を立て、盛大に正面の棚に突っ込んでしまった……。

 メイド長に怒られてしまいそうだが


「〔モンド〕、〔バックス〕!

 お前たちは隠ぺい工作と、オークにメイド長とイケない事させておくんだ!」

『あいあい』

『あーい』


 物分かりの良い奴らで助かる。

 この地に定住を決めた二匹は、今では自分の店を持ち、畑で採れた野菜・平原で狩りをして得た肉などを適当に売って毎日を楽しく過ごしている。

 最初こそ恐れ慄いていた街の人も、時間と共にこいつらを受け入れ、無くてはならないマスコット的な存在となっていた。


 マスコットと言えば、あの"血染めの女王"もそれに近いか……。

 ココが去ってから、この双子のコボルドが"女王"を運んで来たのだが、


【私、占いができます】


 と言って、この街で週一で占いのコーナーをオープンした。

 すると、最初は見た目の恐ろしさなどから予想通り閑古鳥が鳴いてたものの、次第に『良く当たる』との噂が広まり始め、今では長蛇の列を作っている。噂を聞きつけ、他国のお姫様もお忍びで来たぐらいだ――。


 俺も最近見て貰ったが、人生の大きな転機が訪れる時らしい。

 どんな事までは教えてくれなかったが、切り札は最後まで取っておくようにと言われた。


 で、オークの方だが……メイド長に春を与えてくれたのだからいいか。

 先日など『メイド……イイ……オンナキシ……ダメ……』と、何か洗脳された様子で部屋から出てきたが……まぁ大丈夫だろう。女騎士は現実アレなんだし、間違ってない。


 そのアレな人は、ティアラが戻って来た次の週に式を挙げた。

 相手側のお父上――ローアインの陛下から『我々は、貴殿の国と戦争を起こすべきかね?』と尋ねられるぐらい息子の結婚を喜んでいるようだった。

 だけど、誰も本気で事を起こそうなんてしないだろう。トンモーバの新たな女王に目をやりながら『勝てる見込みがあれば』と返事すれば、『息子が早まったマネをしないよう見張っていてくれ……』と、うなだれながらお願いされた。


 早まったマネとはアレか、もう吹っ切れたように三日に一度はラウ姉を抱いている事だろうか? 王子の目が、日に日にスケルトン化してるのはきっと気のせいだろう。


 ・

 ・

 ・


 何度もバランスを崩しながらやって来たが――これはもしかすると、慎重さを失っているのもあって、キャリオン峡谷に行った時以上にダメなんじゃないか?


「あ、あはは……ぼ、ボクは身体が大事だし、歩いて行くよ……」

「ふむ。無理に来なくても良いのだが」

「あ、あそこまで行っておいて、最後の仕上げに立ち会えないのはゴメンだよ!」

「そうか。まぁ無理はせんようにな。私は個は守れても、多は守れん」

「う、うんっ!」


 この国の格好をしたファムを堪能したかったが……ああ、どうしてこういつもタイミングが悪いのか。

 今は、いつもの見慣れた格好ではないにしろ、ハーフパンツに七分丈のシャツにジャケット――露出こそ少ないが、動きやすい恰好を好むファムらしい姿だ。

 ああ、あれもいいなぁ……。


「な、何か変な事考えて無い?」

「いい、いえ何でも――」


 ここの所、ファムの活発さが失われてるような気がしていたが、ココが戻って来たからか、いつもの様子に戻っている。

 ココが戻って……ああそうか、こっちに来てからトレジャーハンティング出来てないから、身体が動かせていないからかもしれないな。

 本人は元気に飛び跳ねているけれど、これまでの様に戦争だ何だと、全力で駆け回るようなのしてなかったし……。


「戦いを忘れた――か」

「お前のは単に運動不足だ」

「な、何ですと!?」


 運動はちゃんと……ってあれ、ここ一週間外に出たっけ?

 ロラド城の真実、フェルプの一族の話をまとめに没頭していた記憶しかない……。

 いや、お日様浴びた記憶はあるし、出たはずだきっと。


「一か月はメインストリートまで歩いてないよ? 身体動かすのは腰ぐらいだし……」

「もはや猿だな」

「は、ははは……明日から頑張る……」


 そ、そう言われれば、季節の移り変わりを感じていない――。

 大丈夫だ……このリノリィの迷宮で多分何となるはずだ……。

※次回 5/30 19:22~更新予定です

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