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モグラとマッピング * 依頼受け付け中 *  作者: Biz
7章 トンモーバ
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1.死者の嫁探し

【 トラブルとは連続で起る物だ。

  休む間もなく、平穏と言う名の扉を殴りつけて来る。

  逆に、古い友が扉をノックするのは大歓迎だ。墓参りも歓迎だ。

  ただでさえ、骨が折れる問題を抱えていると言うのに、

  さらに骨が折れそうな問題が起きるとは、夢にも思わなかった――。 】



 それから半日が過ぎていた――。

 どうにかして寝室で寝かせたいファムと、テコでも動かない眠れるココのバトルが始まったが、勝敗はココに軍配があがり、今は台所で横になってイビキをかいている。モグラに動きがあるとすれば、時々イビキが止まり腹をかくだけだ――。

 なら鬼の起きぬ間に、と俺の懐中時計を探しに回ったファムなのだが、見つからないどことか、泥をまとって帰って来ただけだった。どうやら落とし穴のトラップにかかったらしい。


「ココの落とし穴は、穴を塞ぐ方法じゃないから見つけにくいんだよぉ……」

「と、と言うと?」

「地面からこうやって――上に掘って行くの」


 ファムの説明を聞くと、言うなれば地盤沈下による空洞化のような穴の掘り方をしている。その罠は計算しつくされており、何かを担いで帰ったら落ちるように作られていたりと、多種多様な落とし穴があるのだとか。……よほど暇なのだろうか?



 日が落ち始め、もう今日は諦めて宿屋に戻ろうかとした時だ。

 血相を変えた事件――もとい、双子のコボルドの片割れが飛び込んできた――。

 せめて一日ぐらい待とうよ、な? 体力も回復したし、今日こそはって思ってたんだぞ?


『な、何で、火急の知らせを持って来たのに睨まれるんでさ!?』


 ファムの同じだったのだろう。いつもはニコイチで行動しているはずの〔モンド〕と〔バックス〕なのに、今回はえーっと……多分〔モンド〕一人で来たんだ? しかも何か背負ってるし。


「〔バックス〕、どうしたの?」

『そ、それが……それがっ……』


 〔バックス〕だったらしい……。こいつらの見分けが本当につかない。

 何やらすべてを一気に話そうとして言葉がバラバラだった。それぞれのワードを合わせてみると、トンモーバでとんでもない事があったようだ。その国の人は色々巻き込まれて大変だなぁ……。


「なに他人事でいるのさ!? そこの国の王子でしょ!?」

「王子らしさ皆無だから忘れてしまうんだ……」

『そ、そうだ――トンモーバ、トンモーバがヤバいんでさぁッ!』

「で、何があったんだ? 結婚が破談になってラウ姉が暴れ回ってるのか?」

『そそ、それに近い……とと、トンモーバが陥落の危機にあるんでさッ!』

「へぇー……」

「な、何落ち着いてるんだよっ!? ロイルッ、ロイルッしっかりして!」


 ファムに身体をゆさゆさとされるけど、何と言うかそんなサプライズ聞きたく無かったよ――。

 何度も言うが、そんなヤバい話を持って来るならもう一日遅く来いと。全部やりきった後で新たな第一歩を踏み切らせてくれ。頼むから。


「何でだよ!? 何でそんな事になったんだ、言えッ!」

『む、胸毛掴むのやめてっ……。

 あっしらにもそれが分からないんでさ……あった事と言えば……』


 犬が言うには、婚約者が『婚約指輪に』とローアイン近郊の迷宮で指輪を見つけ、贈って来てから異変が起きたのだと言う。


 トンモーバ近郊を《スケルトン》が徘徊するようになり、それを討伐すべきかとの軍議中に、大軍となった《スケルトン》が城に向かってきた、と。

 ラウ姉が軍を率いて《スケルトン》軍を轢き潰したものの、いくら倒しても復活するそいつらに成す術がなく、トンモーバの騎士団は殲滅を諦め、暴れる猿を捕えて撤退したのだと言う。


 色々ワードがおかしいが、あの人が単騎で突っ込んだのが想像できるよ……。

 恐らくその"婚約指輪"が原因はだろうけど、それは実は『呪われたアイテムだった』とかか……?


「ろ、ローアインが贈って来たのってま、まさかアレじゃないよね……?」

「アレ?」

「ふむ。"死者の指輪"だな。ファア……」

「ココッ、何で今頃起きてんのさ!」


 "死者の指輪"? 名前からしておっかないけど、何でそんなのを送りつけて……いや、それよりもその指輪が戦争引き起こしたのか?


「金の指輪に『我が永遠なる愛』と書かれていたはずだが」

『はいっ、書かれてたと聞いてやすっ! あのボス猿がウキウキしてやした』

「ででで、でもそれと限ったわけじゃないからっ、違うからぁっ」

「ローアインとそれと、スケルトンの軍と言えばそれしかないだろう。諦めろ」

「やだぁぁぁぁッ、ボク留守番ッ、留守番してるッ!」

「ふむ。却下だ」


 ファムの悲鳴が洞窟中に響き渡った――。

 あんな伝記のお化けとか嫌いっぽいけど、モンスターの《スケルトン》も嫌いなのか?

 しかし、それとローアインとどう関係してるんだ?


『ああ、あそこ死者の宮殿ありやしたね。

 満月の夜に骨の王が現れ、指輪の持ち主を花嫁にするとか何とか。

 なるほど。その指輪が花嫁の婚約指輪――でやしたか。

 確か最終的に身内は全員死ぬとかの』

「そうだ」


 コイツら相当おかしな事言ってるけど、大丈夫か?

 まぁ、親族が死ぬなら問題ないだろう。うん。大丈夫だ。なんとかなる。


「ならないよ!? ロイル逃げようっ!

 ボクとどこか遠くの国に駆け落ちしよう!」

「意味が違うから!?」

「まぁ避けては通れんな。私もそこに用事があるのだし」

「用事?」

「古い約束があるのだ」


 トンモーバにもモグラがいるのか? いや、今はそんな事よりも……その倒せるかどうか分からない《スケルトン》の軍勢をどうするかが問題だろう。

 満月の夜に現れる王でも倒せば良いのか? だけど今から行っても満月はまだ先だろうし。


「満月が過ぎたばかりだし、まだ半月ぐらいは時間あるだろ?」

「え、エルフの森で見た満月は紛い物だよ……?」

「なんだと!?」

『犬の勘でやすが、向こうに着く頃にはちょうどでやすかね』

「い、行くにしても武器がないじゃん」

「そ、そうだよっ、ここは大人しく駆け落ち――」

「"鎮魂の鐘"、"エルフの瞳"があるだろう」

「わー……準備万端―……じゃ、じゃあやっぱここの留守番!」

『この方に任せやしょう』


 そう言って〔バックス〕が取り出したのは、額縁に飾られた一枚の絵


【ここの留守はお任せください。退屈で死にそうでした】

「アンタもう死んでるじゃないっ!? 何でここに来るのさ!」

【うるさいです、泥棒猫】


 ロラドの"血染めの女王"だった――。

 向こうに置いてきた女王の日記に、『今何してる?』『暇?』的なメッセージが大量に残されていた辺り、相当暇だったようだ。

 妹がいるとは言え、これまでずっと一人。そこにようやく話し相手が来たのだからしょうがないが……。


「ふむ。別に留守番はいらんが、まぁ構わんだろう。

 さて、〔バックス〕よ来たばかりですまないが、ローアインの野郎に事情を話し、兵を送るように伝えてきてくれないか? 渋ったら城を爆破すると言え」

『あいあいっ!』

「う、うぅ……」


 ファムはもう何かを諦めきった目をしている――。

 ふと思ったのだが、その王子がどこかでラウ姉の正体を知り、事故に見せかけて葬ろうとしているのではないか……もしくは、王族を殲滅し国を奪おうとしているのではないか……と、様々な裏事情が頭をよぎってしまう。

 うん、やはり俺は王族に向いてない。可能性を考えすぎて行動に移せない人間には無理だ。

 それに、あんな狐と狸の騙し合いのような場で一生過ごすなんて、考えるだけで胃に穴が開きそうだし。


「う、うぅぅ、攻撃効かない奴嫌いぃ……、もう存在自体嫌いぃ……」


 ファムが嫌いなのって、お化けとかじゃなくて、"攻撃が通用しない奴"なのか……?

 確かに骨だし、復活するとか厄介っぽいけどさ――。


 ・

 ・

 ・


 "女王"に見送られ、修理されたばかりの≪モール≫で、日が落ちたばかりの夜道を歩いていた。≪スケルトン≫は夜に行動する奴らなので、この時間帯に出歩くのは危険なのだが、なにぶん時間がない……。

 このモグラはいつものように、トンモーバに向けハンマー片手にノッシノッシと歩くだけだし、よく見れば、いつもとは違い呪文のようなのが刻まれたハンマーだけど……こいつもしかして自分だけ対《スケルトン》武器持ってきたのか?

 モグラは一人でどうにか出来るだろうが、最後まで出るのを渋ったファムはと言うと――。


「なぁ、ファム……狭いし蒸し暑いんだけど」

「だ、大丈夫だよっ! こ、今晩は熱い夜になる予定だったじゃないか」

「女の子が言うセリフじゃありませんっ」

「だっだってぇ、外歩いたら怖いんだし……なまじっか夜目効くから見えたらヤだし……」


 いくら《スケルトン》が王族を殺しに来ると言っても、まだ満月にもなってないしそんな強硬手段に来る事は――。


「ふむ。《スケルトン》がお坊ちゃんをお探しのようだ」

「ひぃぃっ!? ここに居るからッ、ここに居るからボクの命だけはッ!」

「お前が非常事態にどんな行動取るか、よーく分かったぞ」

「じょ、冗談だって……あ、あははっ……」


 今のはマジだろう。この猫娘は関係が深まったとは言え、油断ならない奴だ――。

 でも関係がとは言っても明確な恋人同士、と言うわけではないんだよな。

 フェルプの種族にも、恋人になる"告白"のような物があるかどうかすら分からないが。それに、俺は言った……としても、人魚を介してだ。直接伝えていないし、関係と明確に位置づける物もない――。

 確かに今晩……しちゃうつもりだったけど、線引きがこんな曖昧なままで良いのだろうか? ファムからすれば種族的に子を残そうとする、言わば本能的なそれではないのか……うーん。


「さっきから何うんうん唸ってるの?」

「い、いや何でもない――」


 何だろう聞くのが凄く怖い――。崩れ去るぐらいなら、この曖昧な関係のままで居てもいいような気さえしてしまう。

 もしエルフの森で見た満月が偽物であるなら、次の本当の満月で再びそれが起こる。その時の俺はフェロモンに飲まれてしてしまうのか、男としてするのか……どちらになるのだろう。

※次回 5/24 19:22~更新予定です

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