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モグラとマッピング * 依頼受け付け中 *  作者: Biz
5章 エルフの住む森
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3.偽りの存在

 パズルのフロアの最後は、立体ブロックの色を合わせるそれだった。

 今度は移動しない。移動していたら恐らく死者が出て、《ウッドマン》のお友達になっていた事だろう。


 3×3のキューブ状のそれをカシャカシャと回転させながら、散らばった色を合わせて行くパズル……俺はこれを完成させたことは一度もない。恐らくファムにやらせれば数回転目でぶん投げているはずだ。


 それをいとも簡単に解いたのはココだった。


「ふむ。中々面白いアトラクションだった」

「パズルの類が得意なら言えよっ」


 このモグラ、適当にキューブを回転させているだけかと思えば、何とみるみるうちに色が合わさってゆくではないか……。

 ファムを担ぐように言われ、膝の下に左腕を、背の裏に右腕を回し抱え上げた頃にはもう色が全て揃っており、壁にはめ込んでいるところだった。

 あのキューブが鍵であるらしい。どこからかガコンッと音が鳴ると、樹の根がバキバキと音を立てながら左右に開き、我々の次の進路を示していた。


 ファムは軽いもんだ。それに暖かく柔らかい――。

 今では馬車の中で度々見ていた、柔らかで無防備な寝顔を見せている。


 そこから先は洞窟の迷宮が続いているものの、ここに辿り着けるものがいないのか、人もモンスターも居ない。中は明かりが不要な程明るく、温暖な空気に包まれていた。今までの迷宮とは大違いだ。

 ちゃっかり作成されていたココの地図は、洞窟の出口の光と、正面の虹のカーテンがかかる道を残すだけとなっている。


 突然現れた美しくも恐ろしくもある、揺らめく虹色の布……いや、オーロラは確実に我々の行く手を阻む最後の障壁だろう。絶対に触れてはならないと脳が警告している。

 ココが石を投げれば、ジュッと音と煙をたててそれが消滅したし。


「こんな眩い光を放っているのに、何で遠くからは見えなかったんだ?」

「ふむ?」


 さっきは確かに見えなかったのに、どうして今は見えるのか?

 一度戻ってそこを見れば、確かに遠くからそれが光り輝いているのが見える。

 どこかに感知する装置やスイッチでもあるのかと、ココもヘッドライトを付けてあちこち探してはいるものの、スイッチなどの類なんてものは何一つ見当たらなかった。

 どうしたものかと頭を上げた時――


「あれ、今また消えてる?」


 目の前にあったはずのカーテンが無くなっていた。

 再びココのヘッドライトの蓋が閉じられると、再びそのカーテンが姿を現す。

 もう一度、とココのヘッドライトの蓋を開くと、それは姿を消す――。


「分かったっ! そのライトかっ!」

「ふむ。あのエルフはここから来ていたのだな」

「そう言えば、その石はエルフが持っていたって言ってたな」


 一体何の石か分からないが、ココが拾っていたのはここの鍵だったようだ。

 それならこの光に反応して障壁が消えるのも分かるのだけど……あんな変なギミックなんて設けなくとも、これだけで良かったんじゃないのか?


 ・

 ・

 ・


 エルフの女王に限らず、エルフは美女揃いと聞くが、まったく噂通りの……表現できない美しさをしている。この美しさは、どんな一級品の宝石・花でも表現できないだろう。


「は、はぇぇー……」


 ここを出たと同時ぐらいに目覚めたファムは、出口で待ち構えていた光り輝くような女性を見て、見とれるように口をぽかんと開けて立ち尽くしていた。


 同性から見てこんな反応なのだから、男が見たら尚更である。

 それに美しいと言う言葉だけではない。そこには艶めかしさも存在していた。

 よく『エルフは美人だが痩せっぽち』と言うが、そんなのはデタラメだ。目の前にいるのは、男が悦びそうな所をちゃんと抑えている、肉欲を刺激するような体型だ……。


「あぁ……よく我らの宝珠を持ち帰ってくれました」

「宝珠? どこかでお宝拾ってたの!?」

「い、いやそんな物は……」

「ふむ。これが"エルフの瞳"だったか。玻璃かと思っていたが」

「それは我らに伝わる、古の宝珠でございます。秘密裏に隠そうとしていた所、消息が分からなくなってしまい――それが敵に渡れば、人の世界どころか、この里まで危うい所でございました……。本当に何と申してよいか……」

「ふむ? まぁ、悪魔やゴーストが嫌うと思っていたが」


 そんな危なっかしい物をヘッドライトにしてるんじゃないよっ!?

 もし敵の手に渡ったらどうするのさっ!?


「そ、それはまぁ無事なら良いでしょう。それで、宝珠の持ち主は……」

「大聖堂の迷宮の奥でおっ死んでたよ」

「確か、リノリィの迷宮に行くはずでしたが……いえ、あの迷宮の奥には我々の仲間もいる事ですし、そこに隠そうとしたのも正解でございます。ああ、彼は名誉の――」

「そこのサキュバスの風俗で搾りカスにされてたぞ。実に幸せそうな死に顔だった」

「今宵は彼の死をよろこ――悼む夜にしましょう」


 言うなよっ!? 男の最高の死にざまでもあるけど、言うなよっ!?

 だがきっと、彼には名誉勲章的なのは何一つなく、墓すら建ててもらえないだろう。もし仮に建てられたとしても、名前も〔役立たず〕と書かれるはずだ。


 あれ? その石って確か、リノリィの迷宮で拾ったんじゃなかったっけか?

 それに、大聖堂の迷宮って確か……ああ、やっぱりここの入口にあった〈デリバリー・サキュバス〉の本住所じゃん。


 ……え、もしかして、国の存亡がかかる宝珠もったまま風俗突っ込んだの?

 それと何でファムは俺の背に置いた手から爪だしてんの……?


「へぇー……〈デリバリー・サキュバス〉ねぇ。あれれー、五番って何かなぁ?」

「こ、これは物書きのネタに――」

「へぇ、こんなスリーサイズからキッチリ書くんだぁ、ボク知らなかったよ」

「止めてっ!? そんな最低な男を見る目止めてっ!?」


 思えば何でエルフの森に繋がってる場所で、《サキュバス》のそれの住所連絡先が書かれてるポスターがあるんだよ……。

 きっとエルフの里から出られないとかで、溜まったそれを吐きだしたく足を伸ばしたのだろうが、勤務中に風俗とかバレたら公開処刑もんだぞ?


「あとでそれじっくり見させてもらう事にして――」


 俺を睨むような怖い目は、不安の目に変わりその女王の方に向けられた。


「あの、女王様。一つお伺いしたい事があって……」

「どうされましたか、フェルプの女よ――」

「ぼ、ボクの身体の事なんですが……」

「はい。可愛らしい身体でございます」

「何か馬鹿にされたような……じゃ、じゃなくて、その発情期に関して……」

「へぇ……いえ、発情期不順に関しては心配いりません。その時が来れば治まります――」

「そ、そうなんですか!?」


 何だ、やはりファムの発情期不全は一時的な物だったのか。不定期で近いかもと言う割には気配がしないので、俺も疑問に思っていたが。

 ファムも気にしていないと言っていても、実は気にしていたんだな……。


「それだけでしょうか?」

「あ、あとっ」

「はい」

「"浄化の石"の場所を教えてくださいっ!」


 "浄化の石"――それを見つけ、持ち帰ればファムが犯した罪が赦され、故郷に帰る事が出来る。それを見つ出す為に、ファムはトレジャーハンターとして各地を渡り歩いてきたのだ。

 きっとエルフ、ましてや女王ならきっと在り処を知ってるにちがいない。


「あれは……」

「知ってるのっ? 知ってるなら教えて!」

「いえ、今はもう見つかりません――」

「そ、そんな……」

「本来ならエルフではなく私が管理――あ、いえ、あれは"死"と"滅び"をもたらす猛毒の石でございます。普通の者であれば、まずそれに近づく事すらできないでしょう」

「うっ嘘だっ! 嘘だ嘘だ嘘だっ! 貴重な物だから嘘言って隠してるんだっ!」

「何にも理由が必要です。"死を欲する理由"に心当たりがあるんでしょう」

「ま、まさか……」

「滅びゆく者を、その理由の罪を被るのは誰か、どうして罪人にそれを探させているのか――」


 以前ファムが言っていた純血種の問題の事か。

 死と滅びによる浄化――つまり、"浄化の石"が集落に持ち込まれると言う事は、"種の絶滅"を招く可能性だってある。

 彼らは己の手を汚さず、純血種を含め『種族に滅びがもたらされた』との理由欲しさにそれを求めていたのか?

※次回 5/15 19:22~更新予定です

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