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モグラとマッピング * 依頼受け付け中 *  作者: Biz
5章 エルフの住む森
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2.大樹の謎解き

 《ウッドマン》の項は非常に充実したのだが、払った代償は大きかった――。

 思わぬ伏兵の一撃により重傷を負った俺は、後列で地図作成を代行に専念し、イライラが頂点に達しているファムを先頭にザクザクと大樹の中の迷宮を探索している。


「まだ痛い――」

「なにっ、後二十発ぐらい殴られたいのっ?」

「い、いえもう充分です……」

「むゥゥッ――おい木偶の棒どもッ、見てないでかかってこないかッ!」

「ウ……ウゥ……」

「引っ込むなッ!」


 ファムを担ぎ上げ《ウッドマン》に尻を近づけて分かったのだが、『本で見たシチュと違う』と悲鳴をあげ逃げて行くのだ。そして俺もその直後に悲鳴をあげた。

 正直、猫パンチをナメていた……超高速で繰り出されるそれは、仮に柔らかい肉球であっても凶器となる。オーバースロー気味に繰り出されるパンチ&引っ掻きに、俺はただひたすら謝るしかなかった……。


 顔を真っ赤にして怒る猫娘と、顔を真っ赤にされてグロッキーになる人間――それに立ち向かって行ける《ウッドマン》はいない。他の野菜型のモンスターは襲ってくるのだが……それも、もれなくモグラの餌となる。

 何度も同じ道を行ったり来たりしながら完成した地図は、繋がっていない部分はあるものの、人参のモンスター一家を食しているココから"及第点"の評価を受けた。


 最後に辿りついた行き止まりに足を踏み入れた瞬間――何やら一瞬視界がボヤけた気がする。

 周りの風景は変わっていない、樹の根で作られたような壁があるだけだ……でも何か違和感があった。


「モグモグ――これって」

「ふむ。転移(テレポーター)だな」

「て、てれぽーたー?」


 た、確かそれって別の場所に飛ばす罠だよな……?

 下手すりゃ壁の中とか石の中にご案内の……もしかして、超危険な罠踏んだって事か?


「次のフロアに移動と言う事だ」

「ボク、テレポーターの罠の探知だけは無理なんだよね……」


 空間や床に魔法をかけ、触れた者を特定の場所まで移動させる――何もない場所に何かあるのだ、ファムの獣の勘をもってもそれを察知する事は不可能だろう。こんな芸当が出来るのは、ここではエルフぐらい……目的地まで一歩前進と言った所か。


 ここのマップは非常に簡単だ――五メートル四方の壁に囲まれているだけだ。

 いや、中央に一か所パネルが置かれた台座だけがあり、それ以外はどこを探しても入口も出口も存在していなかった。


「と、閉じ込められたのか……?」

「どうやらこのパネルが鍵のようだ。ふむ、エルフも中々暇らしい」


 石の中とかじゃなくて良かった――。

 中央にあった台座の上には、正方形のパネルがはめ込まれている。その左隅にには赤い正方形のブロック――他には茶色の長さがまちまちなブロックが、所々に空間を開けながら並べられている。

 見たところ、スライドパズルのようだが……何でこんなのが?


「ぼ、ボクが超苦手なやつだ……これこう動かすやつでしょ?」


 ファムが赤のブロックの上にある縦棒を下にスッ移動させると――


「う、うわぁッ!?」

「わぁぁッ!?」


 突然、ガァァンッと何かがぶつかる音と同時に地面が揺れた――。

 続けては起らない。フロア全体が揺れた、その衝撃によろけ転んでしまいそうだったが……一体何が起こったんだ?


「ふむ――」


 ココが別の箇所を動かすと、今度は遠くで同じくガァンッとぶつかる音が響く。近くの場所を動かすと近くで同じ音が響く。まさかとは思うがこれって……。


「この赤い点が俺たちの居る所……?」

「そう言う事のようだ」

「何でエルフはこんなの作るの……うう、この揺れ気持ち悪い……」


 入口のアレといい、オークよけのギミックなのか?

 ファムがズラした棒の下に◎が描かれており、左下からそこへ移動させろと言っている様にも見受けられる。

 戻る方法が無ければ、進む方法はこれしかない――つまりこれを解かねばならないと言う事だろう。


 横棒は左右に、縦棒は上下に……赤い四角は上下に移動できるが、どれも任意の場所では止められないみたいだ。移動させれば何かにぶつかるまでその方向に進む。

 となると、出来るだけ短い手順でクリアしなければない――ぶつかった時の衝撃、いやその後の余韻がヤバい……。


「ここがこう動いて、ここに隙間を作れば……ああ、袋小路になるな――」


 実際に動かせれば良いのだが、やり直しが効かないので、下手に動かしてしまうとハマって身動きが取れなくなってしまう為、頭の中である程度動かして行かねばならない。


 ・

 ・

 ・


「ろ、ロイルお願いぃ……早くぅ……」

「わ、分かってるっ」


 何度目かのやり直しに、ファムは力ない声でそう言った――。

 衝撃よりも、その後の揺れがヤバいのだ……宙に浮いてるような浮遊感の中でのこれは酔う。ファムはもう地面に寝そべり、動くことも考える事も止めている――。

 なお、モグラは石を積み上げては崩れるのを楽しんでいた。死後の世界ごっこでもしてるのかこいつは……。


 幾度かの失敗をメモに書き記しているお蔭で、何とか正解が近づいてきているように思えるんだが……如何せん、謎のカウントダウンがあるせいで思考がまとまらない。


 こことここは確実に動かすはず――そして、さっきはここを動かして失敗したから別の場所を……よし、今度は別のスペース……おお、何とか行けそうだぞっ!


「よしっ、道筋が見えたッ!」

「ぼ、ボクには天国への道が見えるよ――」


 ガンガンガンガンッとフロアが前後左右に動き、ぶつかり停止する――。

 来た時は真っ赤だったファムの顔がもう真っ青だ……左隅◎に我々のブロックが到着すると、何やら奇妙な音を立てながらそれが下降し始め、再びガコンッと音がして止まった。

 パネルを見ると、今度は恐らく最大数48の数字が書かれた正方形のブロックが順不同で並んでいるが……。


「ファムはここで死ぬかもしれない……」

「な、何……何があるの……? おェッ……」

「えー、ここに1~48までの番号が書かれたパネルがあります。順不同です」

「ぼっボク、バカだからわかんない……そんな順番に並べるパズルなんて知らない……」

「骨は拾ってやる――」

「や、やだやだッ! それ絶対酷い事になる――」


 とにかく一度ここを右下に移動させ、左上から順番に数字を並べてゆくに限るんだ、うん――。

 上・右・下・左……と俺たちのいる部屋が先ほど以上のハイペースで揺れ動いて行く。振動だけなら大丈夫だが、この前後左右に振り回され、ファムの悲鳴が途絶えた――。


 気絶したのだろう……後ろを向いているので分からないものの、ココの『千年の恋も冷めるだろう』との冷静な現場検証に、どんな酷い事になっているのかが容易に想像できる……。

 正直に言うと、俺もヤバい。想像以上にガンガン揺り動かされて脳みそがシェイクされていた。


 必死で解いた――とにかく必死で解いた。身体がこの衝撃に対して拒否反応を示しており、手を止めたらきっと二度と動かせなくなる……。

 この順番に並べるパズルは最後の二列以外は簡単に並べられる。下の数列が散り散りにならないように気を付けるだけ。

 先に我々のいる赤いブロックを一番下に持って来ておけば良かったんじゃないか……と今更気づいたのだが、後悔するのは後だ。


 蛇が蛇行するようなその動きに耐えながら……ようやく全ての数字が順番通りに並ぶと、再びそれが音を立てながら降下し始めた――。


 もうこれ以上は嫌だぞ……?

※次回 5/14 19:20~更新予定です

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