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鬼の里  作者: 野村 ヨシ
3/8

青鬼の海司(3)

女鬼は、数が少ない。

男鬼のような力もない。


女鬼は生まれてすぐ、里の中央の花里(はなざと)に集められる。

女鬼を一カ所に集めることにより、男鬼は女鬼を守りやすくなる。


女鬼は、祝言を挙げるまでは花里で過ごし、嫁いだ後も夫の外出時など不在時には花里で留守を過ごす。


万に一でも、危険がないように。


嫉妬深く、妻に対して非常に心配性な男鬼が、仕事に用事に専念できるように。



嫁入り前の女鬼は、外部との接触が極端に少なく、男鬼の本来の姿を見ることはない。


初めての結鬼(むすびおに)で、男鬼の姿を見て恐怖に失神した女鬼を教訓に、絵姿や巻物で男鬼について、他の(あやかし)について、人間について学ぶようになったらしい。


若い女鬼たちは、今日の見守り当番の誰それは緑鬼で鮮やかな若緑色の髪らしいとか、赤鬼の誰それは宝石のような緋色の瞳らしいとか噂をする。

結鬼(むすびおに)を夢見て、将来の伴侶の姿を想像する。




牡丹(ぼたん)もまた、そんな夢見る女鬼の一人であった。


自分にも角が生え、発情期を迎えたら、念願の結鬼(むすびおに)の席を設けてもらえる。


そこには、絵姿にあるような太くたくましい角を持ち、各種の色の髪の毛と瞳の男鬼が温かく迎え入れてくれる。

彼等の中から夫となる鬼を見つけ、

逢瀬を重ねて祝言を挙げる。

鬼の伴侶への愛情はとても深く、一生伴侶のみを愛するらしい。


私は、器量良しとは思えないから、角の二本ある標準的な鬼では見向きもしてもらえないとおもうの。

力の弱い一本角の鬼しか見向きもしてもらえないだろが、一人の鬼に愛してもらえればよかったから。

でも、逢瀬の申し込みも断られるかもしれない。



鬼の伴侶は本能が決める。

一目見て本能で恋に落ちるのだ。

男鬼の強さと女鬼の繁殖力の高さ、釣り合いが取れた者同士が惹かれ合うらしい巻物で習った。


先日、結鬼(むすびおに)に参加した桔梗は、黒々としてまっすぐな艶髪、白粉がいらぬのではないかとも思える肌理の細かい白肌の凛とした美しさと、己の意見をしっかりと持つ芯の強さを持った女鬼だ。

周りの女鬼の面倒見もよく、優柔不断な牡丹はいつも彼女に助けられていた。

歳もほとんど変わらない二人は、常に共に育ち学んだ親友だ。


この度、桔梗の嫁入りが決まり、嬉しくて眠れなかったと言う牡丹に、桔梗が目を腫らしてありがとうと伝えた。


桔梗の夫は真紅(しんく)と言うらしい。


桔梗は彼がずっと気になっていたものの、見張は高台が持ち場のため、一度も話す機会を得られなかったと言っていた。


結鬼(むすびおに)前より、気になっていた男鬼と結ばれ、終始幸せそうにしている桔梗を見て、嬉しくそして彼女が眩しく見えた。



それに引き換え私は、ー女鬼の美しさの基準となるとも言われる髪も、焦げ茶色でクセがある。背も低くて、桔梗と並ぶと頭一つ分小さい。

女鬼の身だしなみとして、腰まで髪を伸ばしているが、緩く波打つ自分の髪が恨めしい。



私を嫁にほしいと心から願ってくれる人はいるのだろうか。

優しげなたれ目の大きな瞳が、不安に揺れた。






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