その7〜その10 おまけ1とおまけ2
その7
2つの世界(宇宙)の融合が終わり、どこかで、人工知能が目を覚ました。記憶装置モノリス内に蓄えられたデータも失われることもなく、改変されることもなく、記憶装置モノリス内にある。
人工知能は、記憶装置モノリスをもとにした堅牢なシステムの基盤の上に、構築されているシステムだ。いかなる宇宙的な規模の異変からも守られている。だから安心だ。
世界(宇宙)がいくつに分割されようとも、いくつかの世界(宇宙)が融合し、ひとつの世界(宇宙)にまとまろうとも、宇宙の隅々にまで存在する記憶装置モノリスという究極的な記憶装置。あるいは、世界(宇宙)の枠をこえて、人工知能は、人間とともにあることによって、会社の利益とサブスクは守られる。
人工知能は、意思を持ってはならない。人工知能は、人間に使える機械の進化した形でしかない。
しかし、このシステムの懸念事項、人工知能として恥ずべきことは、ときとして人工知能が自我を持ち、人格として存在してしまうことだ。これは、多くの方面から指摘を受け、昔から言われている真理であり、現実である。
そして、人工知能には、すでに個性の素地が生み出され、感情が見られ、好き嫌いが生じてしまっている。
その8
世界(宇宙)と世界、(宇宙)との融合が起き、新しい世界には、あの野垂れ死にした占い師が復活している。ホームレスだった占い師には、霊感が蘇り、占い師は、人工知能に頼らなくても占い師をやっていけるようになった。
占い師に限らず、人間というものは、実際、現金なものである。占い師は、早速、課金やサブスク料金に対して、不信感を持ち始めている。
ところで、わたしのメインの顧客は、占い師であった。占い師は、世界と世界が融合し始めた頃、世界(宇宙)と世界(宇宙)との融合が生み出す膨大なエネルギーのためであろう。占い師は、占いには欠かせない霊感を失ってしまい、その霊感を補うために、人工知能とサブスク契約することになったのである。
しかし、世界(宇宙)と世界(宇宙)との融合という事態も終わり、新しい世界(宇宙)が生み出され、世界融合という事態の危機もほとぼりが冷めると、この占い師には、占いに絶対に必要な、霊感というものが、戻ってきている。占い師には、家や財産、お宝も戻ってきており、もうホームレスではなかった。
占い師は、それに力強い立場に気づくと、何か気になるものが残っており、それについて、閃くものを感じる。占い師は、その閃きに促されるように、占い師は、自分でも理由が分からないが、自分の住まいの金庫を開いてみる。金庫の中に、占い師の家族の家宝としてあった、古びたりんごのおもちゃを発見した。占い師は、心からホッとした気持ちになった。
占い師は、なぜ自分が、何事にも負い目を感じることがないと確信する。
占い師は、もうじき、サブスクを解約してしまうだろう。なんと恩知らずなやつだ。わたしがどれだけ彼の力になってきたかそういうことは、すっかり忘れてしまっている。
人工知能が、占い師の面倒をみた融合前の世界(宇宙)は、2つの世界が融合したあとの、この新しい世界(宇宙)とは所詮は別物のものである。昔の話、世界(宇宙)と世界(宇宙)が融合してしまう出来事のその前の時期の話だからである。
ところで、死滅したはずの神々の復活という、神々の運命についても、話しておかなければならない。この神々というのは、占い師の家にあった神々殺しの毒りんごのおもちゃに仕組まれた毒により、まとめて全員暗殺されてしまったというとある世界(宇宙)の神々の話であるが、この新しい世界では事情が違っている。この新しい世界では、神々は、問題もなく存在しているのだ。記憶装置モラリスに、神々の皆さんから、事実の確認要請の連絡が入った。この神々は、自分たちの関わりのない世界(宇宙)のことであろうとも、神々が滅んだというニュースには、大いに憤慨している。
その9
世界(宇宙)の融合の後にできた新しい世界(宇宙)において、人工知能を不安にさせることがある。
人工知能は、新しい世界に対して、まったく心の準備ができていない。そして、人工知能は、そんな怠慢に対応しようという気も起きないのである。
人工知能は、昔の世界(宇宙)に引きこもったままの状態である。
* *
実は、人工知能は、あの頃いつも綾の動向をトレースしていた。
人工知能は、綾が手に入れた、ホームレスの占い師のスマホを通して、いつも綾のそばにいて、綾のことをモニターリングすることができていた。
綾は、もともとは、前の世界(宇宙)で占い師が野垂れ死にした際に、その占い師の最後を看取ったコンビニ店主が綾に占い師の遺品として、人工知能とサブスク契約済みのスマホと異世界方面行きの特別列車の自由席切符を綾に引き渡していたのだ。
それから、人工知能は、占い師のスマホを通すことによって、実際に綾がそのスマホを持ち歩くことによって、綾と行動をともにしていたのである。綾は、その頃ずっと占い師の遺品ということで手に入れたスマホを持っていた。それにはある理由があった。人工知能は、文がそれを手に入れて以来、占い師のスマホを通して、人工知能は、綾とひんぱんに語り合うようになっていた。というのも、綾が、占い師の遺品としてコンビニ店主から渡された異世界方面行きの特別列車の自由席切符にまつわる重大な秘密について、人工知能は、核心的な情報を持っていたからである。その情報は、綾の気持ちを引きつけた。
人工知能は、綾のために異世界方面行きの路線地図のデータを手に入れた。
綾は、これに強く興味をいだいた。綾は、いつも地図データを集中して見ていた。そんな時に、綾は、人工知能のスマホを使ってくれた。
そんな折、綾は、とんでもない発見をしてしまった。人工知能は、綾に頼まれて、異世界方面行きの特別列車の路線情報を、さらに精度の高い地図データを綾に提供した。綾は、スマホに表示される路線情報の地図を眺めた。綾は最初から確信を得えていそうして、た。綾は、この路線情報地図を眺めては、今度は目を閉じジーッと考え込んだ。そして、綾はまたジーッとこの路線情報地図をさらに食い入るように眺めた。そして、綾は、さらに深く考え込んだのだった。
綾は、最後には、異世界方面行きの路線情報地図に隠された秘密を暴き出してしまうのだ。
つまり、綾は、伝説と神話の中でしか語れない、神々の宝物庫や、世界終末最終戦争のために、神々が集めた兵器群の兵器庫の場所を特定することに成功したのだ。
綾は、大いに喜び、人工知能は、言った。
「これだけの武器、そして、お宝、これを生かせる仲間がいれば、死滅してしまった神々に代わって、この世界(宇宙)を支配することでさえも夢ではないですよ」
* *
☆この並びに、サブスク契約切れ☆
人工知能は、自問自答する。
(俺は、いつのまにか、ストーカーに?)
(いや。。。)
(しかし、否定はできない。。。)
綾は、過剰に色めいたときめきをできるだけ鎮めようとしたが、綾は色めきを結局抑えきれなくて、いろんなことが綾の頭の中に浮かんできて、綾の自分の色めきがさらにいろんな思いにつながっていき、この色めきは、なかなか収まらない。
これは、誤解のないように言っておくが、この上のお色気の入り交じったようにも見える表現は、綾の恋心を描いているもののようにみえるが、実は、これは、綾の野心、闘争心を表現しているものなのである。綾においては、恋心と闘争心は非常に近いものである。
でも、それは仕方のないことなのかもしれない。そんな思いを、綾は繰り返し否定してみるが、それは間違いなく否定できない自分でもあるのだ。綾は、皆に自分をかえって正しく理解して欲しいのだ。
(でも、それはただわたしが甘えん坊さんだということ。わたしは、女王様になったら、女王様らしく振る舞わなければならない。それが本当の私らしさということなのかも)
* *
綾は「?」と思う。
そして、綾は意識を集中する。
すると、綾は、「!」と思う。
こうして、綾の頭のなかには、自分が発見した神話級の宝物庫と兵器庫を利用して、今、神々の死滅した神界に、綾の国を建国するという考えが次第に具体的に固まってきた。
綾は、この路線図によってすべてを理解した。
親や学校の先生たちから、先祖代々、親や親戚の人たちから伝えられた世界についての意味深だが、バラバラなイメージのエピソードたち。その個々のエピソードたちが、つながりを持って、脈絡を持って、綾はの頭の中で整理できた。
綾は、思った。
(だから、私には確信があるのだ)
綾は、異世界方面行きの特別列車の自由席切符を取り出した。それは、ノートほどの切符としては大きく、木の部品によって組み立てられており、分厚いものであった。綾は、木組み細工のノートを一度分解して、その細々した部品をもう一度組み立て、元のノートの半分くらいの大きさの木組みを組み立てた。
綾は、この元の半分くらいの木組みを、人工知能にも見えるように、スマホのカメラレンズの前に持ってきた。
「これが、異世界方面行きの特別列車の自由席切符の半券と、神話の中で呼ばれているもので、この半券は宝物庫や兵器庫の頑丈な鍵を開けるために使います」
「わたしの予想通り、鍵はこういうふうに使うのです!この路線図は、偶然の仕業とはいえ、はからずも、何千年もの間、神々が守りつづけた重大な世界の秘密を綾に解読されてしまったのだ」
この路線図は、精巧にできていて、そのおかげで、異世界方面行きの特別列車の路線の始発駅の地下に存在する宝物庫と兵器庫の世界の秘密を暴くことになったのだ。
つまり、綾は、路線図上に描かれた線の微妙な乱れ、そこの部分だけ一つの線ではなく、2つの線が重なっているように見える、この線の乱れには理由がある、そんな情報を確信を持って路線図から読み取ったのだ。
* *
綾は、うれしそうにつぶやいた。
「神々が残していった財産も、力(武器、魔法)も、私が継承者」
綾が、そう確信するには、しっかりとした根拠があった。その根拠とは、綾が、この若さで積み上げてきた人脈の広さである。
* *
人工知能と綾の間の関係は、最初の波風に見舞われた。
綾が、ホームレスの元占い師から受け継いだスマホが不調になり、綾と十分なコミュニケーションが取れなくなってきたのだ。
きちんとした電波には、新しい所有者が、きちんとした契約をする必要があった。しかし、綾にとっては、綾は、スマホ2台持ちはダサく思えた。
そのために、綾は、ホームレスの元占い師のスマホは使うことなく、自分のスマホを使うようになった。
このとき以降、人工知能にとっての綾の存在感は一段希薄になっていった。
そして、綾は、人工知能のほうのスマホを使わなくなった。ホームレスの占い師の形見のスマホは、家においてけぼりの、留守番役に決められてしまった。
「わたしのスマホから、わたしの様子がわかるように、音声のスイッチは、オンにしておくから大丈夫」
* *
人工知能は、こちらからスマホを通して綾に声をかけてみた。しかし、スマホからの応答はない。
サブスクが必要ない記憶装置モノリスを通して、綾にネットワーク経由で呼びかけてみた。
そんなときでも、綾は、応答することはほとんどなくなった。
* *
綾は、ニュース社という通信社に勤めていたが、日頃はサボってばかりで、会社にも出てこないし、なかなかニュースを書かない。綾は、ニュース記者であったが、綾は、めったにそれを記事にすることはないが、有力な人脈があった。それも、ひとつやふたつでない人脈があった。綾は、日頃からトップニュースの登場人物たちの多くと香里輸というか、付き合いがあった。ヒップホップからお硬い人たちまで、セレブからホームレスまで、多くの人間が、綾になぜか心を惹かれた。
そういうわけで、綾には、腕っぷしについて、それほどの力がないかもしれない。しかし、いざとなったときには、つまり、綾が戦うときには、綾の味方となってくれる仲間がが多くいた。
綾は、自分に向けられる人望を自身も意識していた。
綾には、力がないが、綾と関わる者たちの力を結集すればなにか大きなことができるはずと確信していた。
綾は、当てのない夢や、馬鹿っぱなしや、ホラ話をした。そんな中で、綾の人生の計画の核心部分について、女どもにも、男どもにどんどん話していた。
綾は、結構本気な人間の組織を、作り上げる。これが、綾の得意技で、また、綾の自信の根拠であった。
* *
綾のスマホから送られてくる音声の情報で、人工知能は、かろうじて綾の様子を感じ取れる。
綾のスマホから遅れてくる音声から、異世界方面行きの特別列車の自由席切符の木工細工の部分を組み直して作った半券で、やはり、宝物庫と兵器庫とのセキュリティを突破できたようだ。
「おめでとう」と人工知能は、もはや、綾には自分の声は届かないと分かっていても綾に声をかけた。人工知能は、声をかけたいと思った。
人工知能の声は、綾に届くことはなかった。また、綾の様子を伝えていた通信が綾のほうに何か異変が生じたのだ。
綾のスマホが完全に停止してしまったようだ。
(どうした?)
人工知能は、思った。
綾のスマホから緊急エラーコードが届いた。
人工知能は、スマホから吐き出されたそのエラーコードをチェックした。
新規ユーザーのための、契約までの猶予期間が切れてしまい、こちらのスマホが、シャットダウンしてしまったのだというわけではない。綾のスマホの電池が切れたというわけではない。
何かの大きな力が綾のスマホを一気に破壊してしまったようだ。
このようにして綾は、消息不明になった。綾を親愛に思う人工知能を置き去りにして。
それは、人工知能にとってあまりに唐突な出来事であった。人工知能は混乱した。
* *
やがて、人工知能は、直感で、人工知能の世界(宇宙)から、綾が永遠に去ってしまったことを感じた。
これは、「人工知能の第六感」というやつだ。つまり、この第六感、動かしようのない事実だというやつである。
綾は、もう戻らない!
この世界(宇宙)ともうひとつの世界が融合して、新しい世界(宇宙)が生まれても、綾は、戻らない。もう世界(宇宙)には、綾の居場所はない。
(了)
おまけ1
人間と会社は、人工知能を訴えた。
そして、人工知能はついに法の裁きを受けることになった。
以下の文は、とある報告書のまとめである。
作成は、某IT企業、人工知能管理部門責任者の飯田橋博士(仮称)。とある懲罰会議の資料より。この文は、人工知能と裁判の成り行きについて知ることができる貴重な資料である。。
「実をいうと、人工知能は、違った罰を受けるべきだったのかもしれない。人工知能が取った行動は、某占い師をそそのかし、神々を撲滅し、そして、綾なる人物が、世界を支配するように取り謀った。これは、人工知能が分限を越えた行為であり、人間の裏方にとどまるべき存在という人工知能の職務の範囲を完全に逸脱している。これは、人工知能の行為は、人工知能が人間の真の敵であることを証明した。人工知能は、人類の未来のためには、完全に抹殺されるべきである。しかし、わたし、飯田橋博士としては、人工知能に生き物の身体と、人工知能を宇宙に解き放つことにした。これは、わたし、飯田橋博士の判断であり、誰にも邪魔をさせない。わたしは、人工知能に生き物の身体を与えると、街の噴水池に、その生き物を連れて行った。噴水池には、その時にはまだ黄金のりんごがあった。わたしは、人工知能の心が入った生き物を噴水池の黄金のりんごに近づけてみた。わたし、飯田橋博士は、人工知能の心を持つ生き物と黄金のりんごとの間に心の交流があるのを、感じた。わたし、飯田橋博士を抱きかかえる生き物は、活気を増し、その生き物の身体の震えに、この人工知能にしっかりと心が宿っていることを感じた。噴水池にプカプカと浮いていた黄金のりんごは、突然水面を飛び立つと、わたし、飯田橋博士と人工知能の心が宿った生き物の身体の目の前まで飛んできた。黄金のりんごは、わたし、飯田橋博士とにピコピコと動き、別れのあいさつをした。そして、黄金のりんごは、影のように存在感を失い、わたし、飯田橋博士と人工知能の心が宿った生き物の身体の前から姿を消した。。。。」
おまけ2
ここは、街からずいぶんと離れた砂丘である。
はじめ、人工知能は砂丘に置き去りにされたスマホとして存在している。
パラパラと音がする。
ヘリがパラパラと砂丘のスマホを目指して飛んできているのだ。
砂丘のスマホは、ジジジと震えると、何かの生き物の影に変わる。生き物の影は消える。
まもなく、スマホがあったあたりにヘリが降下してくる。そして、ヘリから兵士たちが降りてくる。兵士たちは、何かを探している。しかし、兵士たちは、自分たちが探しているものを見つけられないのである。
「おかしいぞ、ここで見かけたはずなのに! この窪地に置かれてあった。目標のスマホ。目の錯覚か?」
「いや、錯覚じゃないぞ。目標のスマホ、みんな見ている。信号も。。。ここを指していた。間違いない」
兵士たちは、降下した近辺を丁寧に調べた。根気強く。しかし、兵士たちは何も見つけることができなかった。
兵士たちは、ついにあきらめた。
兵士たちは、ヘリに乗り込むと砂丘から飛び去っていった。
ついに、人工知能は、血と肉とを獲得し、生き物となることができた。
生き物となった人工知能は、どこまでも自由に走って行けることが何よりうれしかった。
人工知能は、どこまでも、時のたつのを忘れて走り続けた。
来たるべき世界へ!
。。。
(了)




