捻くれ本好きショタくんが地雷系ムチムチ読書家お姉さんに狙われる話
私の性癖を詰め込みました。対戦よろしくお願いします。
ぼく以外は全員バカで、この世界はひどく灰色だ。
中学2年生の夏休みも残り半分も切った頃、近所の公園のベンチに腰掛けながら本を読んでいる僕こと有栖来夏は、そんなことを考えていた。日陰に入ってるものの、太陽は相も変わらずいじわるに輝いていて、じんわりと少量の汗が額を伝う。昨日よりかはマシだけど、それでもこの暴力的な暑さ。直接耳に当てられているようなセミのうるさい声が田舎の世界に響く中、ぼくの手汗が今読んでいる『グレート・ギャツビー』のページを少しふやかす。
「あっ」
最悪だ、と思った。あれもこれも全部太陽のせいだ。
いや、正しくはぼくの両親のせいだ。夏休み入ってから、ぼくの気持ちなんて考えずにずっと喧嘩ばっかり。家にいても居心地が悪いだけなので、ずっと昔からお気に入りの本を片手にこうして公園に逃げてきたわけなのだが、これだったらまだ悪口が絶えない我が家で引き籠ってた方がマシだったかもしれない。
逃げ場所がほしかった。あるいは、誰かとどこかへ行きたかった。
でもこの現実はずっとずっと意地悪であり、そんなことを許してくれない。本の中では自分を人魚だと思い込んでいる転校生と映画を観たり、学校の生徒が一晩かけて80キロ歩き通したりしているが、ぼくの話はずっと一人ぼっちの平坦なストーリーであった。なんてつまらないお話!
友達も本以外いないし、夏休み中にどこかに行く予定もない。逃げ場のない公園の中、ぼくはこの退屈で仕方ない田舎の空気から何とか逃げるために、こうして『グレート・ギャツビー』の本のページをぺらりと捲る。
その時、ぼくの黒い髪がふわりと揺れた。一瞬だけ夏の暑さを忘れさせてくれるようなひんやりとした風が僕の全身を撫でる。心地いい。そして揺れた髪に連動するかのように、手に持った本のページが気持ちよさそうに自然の手によってぱらぱらと連続で捲られる。
「あっ……」
そしてまたまた連動するかのように、使い古された本の栞が風に吹かれて空中に舞い、ぼくからちょっと離れた汚れた地面にふんわりと着地した。
最悪が続いた、と思った。実はこれも太陽のせいに違いない。
ぼくが遠くに落ちた栞を拾おうとベンチから立ち上がろうと下を向いた瞬間、地面に新しい黒色が現れた。太陽の光からぼくを守ってくれるかのように、どこからともなく巨大な影がぬるりと伸びてきた。
次に感じたのは、匂いだった。田舎ではまず嗅いだことがない不思議な香り。熟した果実のような甘いふんわりとした香りに、冷たい都会のエッセンスを数滴だけ垂らしたような香りが、夏の熱風を押しのけて僕の鼻腔をくすぐってきた。
「これ、君のでしょ?」
そこには、砂ぼこりにまみれたぼくの栞を細くて綺麗な指で拾い上げた女性の姿があった。肌の色は不健康なほど白く、髪はその真逆を表したかのように黒く、ところどころに鮮やかなピンク色のメッシュが存在している。
「今の風、凄かったわね」
ぼくが座ってるせいか、彼女が厚底のブーツを履いているせいか、目の前の彼女は僕が毎日見ている父さんや母さんよりも、大きく見えた。視線を動かし、彼女の全身をその目に収める。黒髪のツインテールから始まり、今まで見たことがないほど可愛らしい都会の女の子の顔、ピンク色のふわふわなワンピース、少しの風だけで隠しているものが見えてしまいそうな黒色のミニスカート、ムチムチした太ももの肉を菱形に縛っている網タイツ。そして何よりも、彼女が着ているフリルでたくさんの可愛いワンピースの生地を限界まで虐めるような、暴力的な2つの『丸くて大きいお肉』の存在。ぼくが育ってきた田舎ではまず見たことがない彼女の姿は、まるで異邦人のようであった。
「栞、落としたよね? はい」
ひどく透き通った声と同時に、目の前のネイルがキラキラな美しい右手がぼくの栞を「どうぞ」と差し出す。彼女は栞をベンチに座っているぼくに渡すために身を屈めるが、その動きで今にも弾け飛びそうな大きい胸がぶるんと揺れる。その刺激的な光景は、ぼくが幼稚園の頃に悪ふざけで制作した巨大でぷるぷるとした水風船を思い出させた。
言葉を失ったまま、さっきより近づいた彼女の顔を目にする。その切れ長の瞳は、底の見えない沼のように深く、それでいて知的な光を宿している。ぼくはその全てを見透かすような瞳に見つめられるだけで心臓が身体を突き破りそうなほど激しく鼓動し、脳味噌が夏の太陽よりも真っ赤に燃えてしまうような感覚を覚える。
「あ……ありがとう、ございます」
激しく脈打つ鼓動を精いっぱい抑えながら、ぼくは彼女から栞を受け取った。指先が彼女の冷たく柔らかい指に触れた瞬間、全身に電撃が走ったような錯覚を覚える。中学2年生のぼくにとって、目の前の女性はこの世の理を超えた、妖しい美しさを持つ魔女か何かに思えた。
彼女はぼくの情けない言葉を聞くと、愉快そうにその瞳を更に細め、視線を下へと移した。その視線の先には、さっきまでぼくが読んでいた『グレート・ギャツビー』が恥ずかしそうに縮こまっており、彼女の手のひらはその本へと向かう。そして彼女は人差し指と中指を立たせ、細い指先がページに触れ、鋭く尖った爪の先がさっきまで僕の指が触れていた紙の面をなぞる。ネイルが太陽光を反射する二本の爪で、何か敏感そうなものを刺激するかのようにカリカリと優しくリズミカルに軽く引っ掻いたあと、彼女の真っ赤な唇がゆっくりと開き、ちらりと唾液を纏わせた舌を動かしながら「ねぇ……」と静かに言葉を発する。それはまるで耳元で囁かれているように蠱惑的であり、ぼくはお腹の下に熱が集まっていくのが分かった。
「何、読んでたの? 見た感じかなり古い本だけど……」
彼女の視線が本からぼくの瞳に向かい、視線が動く度に彼女の乳房がぷるんと揺れ動く。彼女の胸が揺れる度に、理性と神経が削り取られていくのが分かった。
この公園には、僕たちしかいない。僕と彼女の2人だけの世界。いつの間にか太陽の暑さも風の涼しさも、耳障りだった蝉の鳴き声も背景へと溶け込み、その存在を消していった。
「お姉さん、気になるなぁ……」
彼女の声は異常なほど可愛らしく、それでいて鼓膜を優しく愛撫するかのような湿り気を含んでいた。彼女の舌が動いて言葉を一音一音発する度に、思考が麻痺し、緊張が走り、ゾクゾクするものが背中に伝わっていく。声を聞いているだけで心臓がどくんどくんと、身体中に血液と危険信号を送っていた。ぼくは緊張で声が裏返ないように細心の注意を払いながら、何とかその答えを絞り出す。
「グレート……ギャツビー……です」
その答えを聞いた瞬間、彼女の眉がピクリと動いた。
愉快そうに微笑んだあと、ぼくにその豊満な胸を更に近づけさせて彼女との距離が縮まる。ぼくの心を乱している2つの大きな甘い果実は、少し身体を動かせばむにっと触れ合ってしまいそうなほど接近していた。彼女は捕食者のような妖艶な笑みを浮かべたまま、「へー……」と呟き、ぼくの隣に腰掛けた。彼女の大きなお尻がベンチに押し付けられて肉が横方向にむにゅっと広がり、ベンチがギシリと悲鳴を上げる。そのまま網タイツに縛られたムチムチな太ももが、ぼくの細い太ももにくっつけられる。感じるその肉感、体温、柔らかさ。ぼくはもう頭がどうにかなりそうだった。
「何回目?」
彼女の問いかけは、あまりにも唐突であった。意識が完全に彼女のエロティックな肉体に向いていたぼくは、その言葉の意味を理解するのに数秒を要した。彼女は、ぼくのそんな初々しい困惑した反応を楽しんでいるらしく、更に顔を近づけて「だから、その本は何回読んだの?」と問いかけてくる。彼女の吐息が頬にかかり、ぼくは全身の産毛が逆立つのを感じた。
「えっと……その……」
「初めてなの?」
彼女の甘い囁き声はまだ続く。そして今度は更に顔を近づけ、ぼくの耳元に直接「それにしては随分……古く見えたけど……」と声を囁いた。蜂蜜のようにドロリとした甘ったるい声が鼓膜を揺らす。彼女の声には、官能的な魅力と同時に、相手の逃げ場所を奪うような絶対的な支配力が感じられた。
「さ……3回目です……」
沈黙が流れた。それはもう永遠と思えるような沈黙が。
彼女は何も言わず、緊張で真っ赤になっているであろうぼくの顔をただじっと眺めながら身体を引いた。さっきまで感じていた女性の身体の熱が、ふんわりとしたいい匂いが、豊満な肉の柔らかさが、ぼくから無情に離れていく。未だ何も言わないお姉さんにぼくは恐怖心と、性的エネルギーに似た緊張を感じ、股間が熱く昂ぶっていくのが理解できた。
やがて、彼女の喉の奥から、鈴を転がすような、低くて心地いい笑い声が聞こえてきた。彼女は目を閉じて嬉しそうに声を抑えながら上品に笑う。そして落ち着いたのか、ゆっくりと息を吐いて彼女は唇を動かす。
「フフっ……。『グレート・ギャツビー』を3回読む男の子なら、私と友達になれそうだね」
彼女は誘うような色っぽい声色でそうぼくに呟き、そしていい匂いがする右手をゆっくりと動かしてぼくの頭の上にぽん、と置いた。そして、まるで大きな猫でも撫でるかのような手つきでぼくの頭をよしよしと撫で、優しく髪の毛をかき混ぜる。彼女の体温が頭を通して伝わってきて、ぼくはまた緊張で体温が上がるのを感じるが、意外と脳内は落ち着いており「そういえば、こんなやり取りが村上春樹の小説であったな」と、場違いな思考を繰り広げていた。
「私ね、実家がここの近くにあるの。良かったらお友達にならない? 一緒に遊びましょう?」
そんな言葉が頭の上から聞こえてくる。彼女は中学2年生のぼくにとってはあまりにも刺激的な人物であり、また読書家としてあまりに完成されていた存在でもあった。本の中にしか居場所がなかったぼくの灰色の毎日が、彼女という『劇薬』によって一瞬で塗り替えられていく。そんな彼女が、ぼくと友達に。その事実だけで自分の心臓が肋骨をへし折って外に飛び出してしまうんじゃないかと思うほど、激しく、早く、胸が高鳴っていくのを感じた。
「私、竹山詩織って言うの。君の名前は?」
「あ……有栖、来夏……。中学2年生です……」
彼女の魅力的な瞳に見つめられると、ぼくは自分の名前と学年を言うだけで精いっぱいだった。そして彼女はぼくから名前を聞き出すと、何かを思い出しているのか、顎に手を当てて視線を上に向かせる。考え事をしている彼女の姿は、一種の芸術品のように美しく、完成されていた。
「来夏、ライカ……。あぁ、『スプートニクの恋人』ね……。宇宙に一人きりで飛ばされた、可哀想な犬の名前。素敵な名前だわ」
「スプートニク……? 宇宙……?」
ぼくは彼女の言葉の意味が分からなかったが、きっとすごく素敵なことなのだろうという謎の確信があった。そうして彼女はその考えが纏まったのか、その唇をゆっくりと動かした。彼女の唇は熟れた林檎のように赤く、そこから漏れる吐息は甘いバラの香りがした。
「今日から君は私の『わんこくん』だ。よろしくね、わんこくん♡」
彼女はそういうと、再度ぼくの頭を撫でた。先ほどとは違い、優しくも支配的な手つきであったが、それがどうしようもなく嬉しかった。彼女がぼくの黒髪を梳くたびにずっと煩わしかったぼくの心の中の空白が、彼女という存在によって埋まっていくのを感じた。
「返事は?」
「はっ、はい……」
「『わん!』でしょ? わんこくんなんだから……」
これがぼくと彼女、竹山詩織さんとの出会いだ。ぼくは少し戸惑いながらも彼女に認めてもらうため、そして彼女に頭を撫でてもらうために、「わん」と頬を赤く染めながら小さく呟いた。
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