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第24話:世界一幸せな聖女の、わがままな結婚式

 王都の大聖堂。かつてエマを「不気味な女」と呼んでいた人々は今、色とりどりの花を手に、沿道を埋め尽くしていた。


 エマが身に纏うのは、アルドルフが私財を投じ、隣国のセドリック王子が「負け惜しみだ」と言って贈った、魔力を帯びた純白のウェディングドレス。


「エマ、緊張しているか?」


 隣に立つアルドルフは、魔力を失いながらも、その圧倒的な存在感で周囲を圧倒していた。黄金色に輝く髪を短く整え、騎士団長の礼装ではなく、一人の「夫」としての穏やかな微笑みを浮かべている。


「……はい。でも、みんなが来てくれたから」


 エマが視線を向けると、聖堂の屋根には黒龍が鎮座し、バージンロードの脇にはオルトロスが大人しく座り、空にはグリフォンたちが祝砲の代わりに美しい旋律で鳴き交わしていた。


 人間と魔獣が共存する、まさにエマが夢見た光景がそこにあった。

 誓いの言葉。


「私、アルドルフは……この命ある限り、エマを愛し、守り、彼女の『よしよし』の奴隷となることを誓おう」

「……ちょっと、アルドルフ様! 誓いの言葉が変です!」


 エマが顔を赤くして小声で突っ込むが、アルドルフは大真面目だった。


「変ではない。私は君なしでは、もはや呼吸の仕方も忘れてしまうほどなのだから」


 アルドルフはエマの腰を強く引き寄せ、参列者(と魔獣たち)の前で、熱い、それでいてどこか独占欲を感じさせる深いキスを交わした。


 「ウォォォォォー!!」


 魔獣たちの遠吠えと、民衆の歓声が王都を揺らす。

 披露宴の最中、かつての副団長やセドリック王子がエマに挨拶に行こうとしたが……。


「……悪いが、今日の彼女は一秒たりとも渡すつもりはない」


 アルドルフが、魔力がないはずなのに凄まじい眼力で男たちを追い払う。


「団長……。結婚しても、そのヤンデレ気質は治らないのですか?」

「治るわけがない。……エマ、逃げるぞ」

「えっ!? 披露宴の真っ最中ですよ!?」


 アルドルフはエマをひょいと抱き上げると、裏口から黒龍の背中に飛び乗った。


「主役がいなくなっては困ります!」と追いかける騎士たちを尻目に、龍は夕焼けの空へと舞い上がる。


「……二人きりになりたかったんだ。……エマ。今日から、君は名実ともに私のものだ」


 雲の上、二人だけの空間。

 アルドルフの囁きに、エマは幸せそうに目を細め、彼の胸に顔を埋めた。

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