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第23話:愛は魔力を超える? 団長、まさかの再覚醒

 ヴィルガストの父が遺した最後の呪印――自律型暗殺魔導具『影のかげのくさび』が、エマの心臓を正確に狙って飛来した。

 魔力を失ったアルドルフには、それを弾き飛ばす衝撃波も、防壁も展開できない。


「……っ、アルドルフ様! 下がってください!」


 エマが咄嗟に彼を庇おうとした、その瞬間。


「…………私の、愛しい人を……汚すな」


 アルドルフの銀髪が、一瞬で眩い黄金色に輝いた。

 彼は魔力ではなく、エマへの「執念」と「情熱」だけで、実体化した『影の楔』を素手で掴み取った。


 メキメキッ……!


 本来、魔力を持たない者が触れれば一瞬で呪い殺される暗殺具が、アルドルフの握力だけで粉々に砕け散っていく。


「ば、バカな……! 魔力がないはずの人間が、魔導具を物理で破壊しただと!?」


 遠くで様子を伺っていた残党たちが叫ぶ。

 アルドルフは、驚くエマを抱き寄せ、優しく頭を撫でた。


「エマ。……魔力なんて、いらなかったんだな。君を守りたいという意志こそが、私の真の剣だ」


 アルドルフが放ったのは、攻撃魔法ではない。エマの「よしよし」の魔力と共鳴し、彼女の力を何十倍にも増幅させる『共鳴の聖域(共振)』。


 二人が手を繋いだ瞬間、湖畔一帯に癒やしの光が広がり、潜んでいた暗殺者たちの殺意が、一瞬で「……自分たちは、なんてバカなことをしていたんだ……」という深い後悔へと浄化された。


 その頃。

 逃げ延び、ゴミ捨て場の影で震えていたヴィルガストは、かつて自分が捨てた「エマの調教道具」の成れの果て――呪われた鞭の残骸を拾い上げようとしていた。


「ひ、ひひっ……。これさえあれば、あの女を……。俺の店を……」


 だが、その背後に巨大な影が差す。

 それは、エマを「母」と慕う、王都最強の黒龍だった。


「……あ、あぁ……」


 ヴィルガストは叫ぶこともできなかった。

 龍は彼を食い殺すことすらしない。ただ、エマを侮辱した「穢れ」として、彼を深い深い「孤独の闇」へと閉じ込めるブレスを放った。

 かつて栄華を極めた傲慢な男は、誰にも認識されず、誰の記憶にも残らない、永遠の「透明な存在」として街を彷徨い続けることになった。……これこそが、エマを無視し、道具として扱った彼への最大の皮肉だった。


 夕暮れ時のコテージ。


「アルドルフ様、今の力は……?」

「わからない。だが、君と触れ合っている時だけ、この力が湧いてくるようだ」


 アルドルフは、少し意地悪く笑ってエマをベッドへ誘う。


「……つまり、君を守るためには、常にこうして密着していなければならない、ということだな?」

「もうっ! アルドルフ様ったら、すぐそうやって……っ」

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