第16話:ゴミ掃除の後は、たっぷり甘やかされます
轟音と共に瓦礫と化したエマの実家。その中心で、アルドルフは震えるエマを壊れ物を扱うように抱きしめていた。
「……もう大丈夫だ、エマ。私を裏切り、君を傷つけた有象無象は、この世から一匹残らず消し去った」
「ア、アルドルフ様……。あの、お父様たちは……?」
「……気にするな。彼らはしかるべき場所(奈落)へ送った。二度と君の視界に入ることはない」
アルドルフの瞳はまだ据わったままだ。彼はエマを黒龍の背に乗せると、王都へ戻る道中、一度も彼女を離そうとはしなかった。
騎士団本部へ戻った夜。
エマが案内されたのは、以前の自室ではなく、アルドルフの寝室と直結した、窓一つない「隠し部屋」だった。
そこには、最高級の毛皮のベッド、エマの好きな甘いお菓子の山、そして見たこともないほど豪華な調度品が揃っていたが……。
「……あの、アルドルフ様。ここには窓がありませんし、扉に大きな鍵がついているようですが……」
「当然だ。外には君を狙う輩が多すぎる。……君の慈悲は、これからは魔獣と、私のためだけに使いなさい」
アルドルフはエマの前に跪き、彼女の細い足首に、銀のチェーンがついた美しいアンクレットを嵌めた。
「これは位置を把握するだけではない。君が少しでも不安を感じれば、私の胸元にある魔石が熱を放つようになっている。……いいかい、エマ。君が望むなら、私はこの騎士団を、君一人を守るための要塞に変えてもいい」
その言葉は、もはや騎士団長の職務を超えた、一人の狂った男の告白だった。
エマは、彼があまりにも深く、暗い愛を自分に向けていることに気づく。
「アルドルフ様……。私、閉じ込められるのは少し寂しいです。魔獣さんたちも、私を待っていますし……」
「……っ。……わかった。ならば、魔獣の方をここへ運ばせよう。君が外に出る必要はない」
アルドルフはエマの首筋に深く顔を埋め、独占欲を確かめるように何度も甘噛みした。
エマは困り果てたが、彼の背中が微かに震えているのを感じて、そっとその頭を撫でた。
「……よしよし。私はどこへも行きませんよ、アルドルフ様」
その瞬間、最強の騎士団長は、エマの膝の上で子供のように安らかな吐息を漏らした。
一方、王都の地下。
実家襲撃の際、かろうじて逃げ延びたヴィルガストの父親が、禁忌の魔導書を手に、ある「最悪の召喚」を試みていた。
「……こうなれば、伝説の『魔王獣』を呼び出すしかない。エマの喉元を喰いちぎり、あの団長を絶望させてやる……!」




