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第11話:目覚めたら、団長の愛が100倍になっていた

「……う、ううん……」


 エマが重い瞼を開けると、そこは見慣れた騎士団本部の天井だった。

 体が羽毛のように軽い。黒龍の呪いは完全に浄化され、彼女の魔力は以前よりも澄み渡っていた。


「……起きたか」


 隣から響いた声は、驚くほど掠れていた。

 視線を向けると、そこには無精髭を蓄え、目の下に濃い隈を作ったアルドルフがいた。端正な顔立ちは青白く、まるで幽鬼のようだ。


「アルドルフ様……? ずっと、起きていらしたのですか?」

「丸三日だ。……君が息をしていないのではないかと、一分おきに心音を確認せずにはいられなかった」


 アルドルフはエマの手を両手で包み込み、縋り付くように額を押し当てた。その手は微かに震えている。


「エマ。……約束してくれ。二度と、私の前から消えないと。二度と、他人のために命を投げ出さないと」

「でも、あの子(黒龍)を助けないと街が……」

「街など、焼ければいい!!」


 アルドルフが吠えた。その瞳には、もはや騎士団長としての正義など欠片も残っていなかった。


「君を失うくらいなら、私はこの手で王都を滅ぼした方がマシだ……! エマ、お願いだ。私をこれ以上、狂わせないでくれ」


 アルドルフは立ち上がると、カチャリ、と不気味な音を立てた。

 彼の手には、細くしなやかな、だが魔法の刻印が施された「銀の鎖」が握られていた。


「……アルドルフ様? それは……?」

「護身用の魔道具だ。君と私の魔力を繋ぎ、君が私から百メートル以上離れようとすれば、私の元へ転送されるようになっている」


 彼はエマの手首に、宝石を散りばめた美しいバングルを嵌めた。

 それは見た目こそ豪華だが、実質的な「繋ぎ飼い」の宣言だった。


「……これで安心だ。君が寝ている間も、私がそばにいることがわかるだろう?」


 エマは、その重すぎる愛に怯えるどころか、彼のあまりの必死さに、母性本能をくすぐられてしまった。


「……わかりました。でも、お風呂の時などは、少しだけ緩めてくださいね?」

「……善処しよう」


 その頃。

 エマを呪いの種で殺そうとしたヴィルガストは、地下牢で震えていた。

 彼が次に連れて行かれたのは、裁判所ではなく――「黒龍の住処」だった。


「ひっ、ひぃいっ! なぜここに!?」

「お前が呪った龍だ。……その怒り、直接受け止めてもらう」


 アルドルフの部下たちが冷たく言い放つ。

 かつてエマを虐げていたヴィルガストは、今やエマを「女神」と崇めるようになった最強の龍の前に、生贄として放り出されたのである。

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