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【後編】 気づいた

 顔や表情を観察する時間はほとんどなかったが、目は血走っていて感情も高ぶっていた。

 不穏な空気を感じて後ずさりするうちにそいつも明確にこちらに向かってきていたから、今みたいな鬼ごっこ状態へと。


 さっき、男の方からナイフのような光が目に入った。

 あらら、ヤバいな。

 とにかく必死で走る。

 普段からランニングで鍛えているが全然安心できない。捕まったら死ぬかもしれないんだ。


 何度入り組んだ路地を曲がったか分からない。たまに男の姿は見えなくなるが、少しでもスピードをゆるめると姿が見える。

 しつこい。

 息もキツくなってきた。急に走り出したわりには足は今んところ何とかなっているけど疲労は感じていて、いつまでもつか。


 くそっ。

 悪い予感はしてたけど行き止まりだ。

 ここは資材置き場か何かか、乱雑に物が散らばっている。

 古びた工具や中身が何か見当もつかない発泡スチロール、木材やコンクリートブロックも大量にあった。

 壁はそれなりに高く、相当な身体能力がないと登り切れそうもない。

 男の足音が身近に迫ってきた。だけどかなり乱れた状態だった。


 逃げ道はない。

 足を止めてちょっとは回復したこちらと比べて、男は息も絶え絶えで足元もおぼつかない様子だ。手の中にあるおもちゃぐらいのサイズのナイフも手からこぼれ落ちそうだ。

 足元にあるコンクリートブロックは、こぶし大ぐらいに砕けて掴みやすくなっているやつもゴロゴロしていた。

 手ごろなハンマーやノミのようなものもある。


 さてどうするか。

 ――俺は察しがいいから気づいた。


          終わり

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