第7話 戦略的行動
起きる。身支度をする。
カゲインと合流。
朝から、なかなか忙しい。
でも、もう身支度は一人でできるようになった。
きっと、大人の階段を一段登った証拠だ。
今日も変わらず、配達だ。
最近は評判がいいらしく、新しい配達先が増えている。
「小物はいつも通り、僕が行ってくるよ」
こういう分担をすると、効率がいいんだよね?
さすがカゲイン。頭いい!
*
街を歩いていると、たまに大きな声で話す人間がいる。
でも、そういう人の話は大抵難しくて、よく分からない。
それに、ホントの顔で笑っているところを、ほとんど見たことがない。
「ほら、あそこの家の息子さん、こないだ怪我して魔法医さんのとこ行って治ったのに、回復詐欺だーとか言って暴れたらしいわよぉ。……その魔法医って闇だったんじゃないのぉ? あーはっはっはは」
こういうデカい声の人間。
楽しい話じゃないのに、笑っている。
カゲインが聞いてなくて良かった。
*
小物の配達をあらかた終えて戻ると、カゲインももう終わっていた。
「ご飯にいきましょう。今日はこれで終わりデス」
いつの間にかギルドに寄っていたみたいで、お小遣いを渡される。
ご飯。
道具屋。
本屋。
たくさん買い物をした。
上司はお金を払わない。ものすごく楽だ。
*
宿に戻ってベッドで転がっていると、カゲインが話しかけてきた。
「配達先で、教会の近くの噂話があったデス。
悪魔が嫌いな、怖い人間が、小さな悪魔を食べちゃうお話しデス」
「……そんな人間がいるのか!」
「危ないですから、一人で行動しちゃだめデス。
二人でいれば来ないそうデス。
お互いを守る行動は、戦略的行動といいますデス」
戦略的行動。
カッコいい!
しばらくは教会には行けないな。
配達をしながら、情報集めだ。
*
とりあえず、報告をしよう。
> デカい声の人間!
> 悪魔を食べる人間!
> カゲイン守った!
> 戦略的行動!
報告も、だいぶ慣れてきた。
今日は悪い人から、ちゃんとカゲインを守れた。
カゲインも、報告している。
僕は、守れる上司だ。
*
――その頃のテレッツ。
「全部、順調なのだ」
報告を読みながら、静かに頷いていた。
*
――その頃のプラッシーたち。
〈プラッシー視点〉
勇者の卵、イケメナント=ジュンシの後ろに隠れていれば、
スキルの複製は「神の加護」で通せるのでありまっす。
ギルドで、たまたま同い年ってだけで声をかけてくれて、
実に幸運でありまっす。
ジュンシのおかげで、効率よく魔物からスキルを複製できているのでありまっす。
ただ、あのキレーナ=ツンデレーノ。
最初は魔物から助けたのに、「魔物も生き物だから」とか言い出して、
動物愛護でありまっすか。
こういうの、意識高い系貴族娘にありがちでありまっす。
没落しかけた貴族の娘だけありまっす。
「あなた達より沢山討伐したので、この配分でいいでありまっすか?」
「そうだね。僕はこれだけあれば文句ないよ」
……ん?
なぜ、こちらを見るでありまっすか?
ツンデレーノが、何か言いたそうにこちらを見つめてくる。
「違う! あんた頭いいんだから、分けるにしても仲間の活動資金とか配分考えなさいよね。
隙あらば多く持ってこうとするよね、あんたは」
耳につんざくような高い声に、思わず肩がビクッと反応する。
「生意気でありまっす!」
「私だって言いたくもなるわよ。組んでから、もうどのくらい経ったと思ってるの?」
「うるさいでありまっす!」
感情をお互いに制御できないでいる。
「効率……そう、効率でありまっす。
貰える時に、お互い納得すればウィンウィンでありまっす」
ツンデレーノは少し呆れた顔でこちらを見る。
だが向こうは、話を終える気がない。
「あなたは顔が整ってるのに、いろんなパーツが小さいでありまっす。
心も顔も体も身体も! 全部ナノでありまっす!」
熱くなって、ついつい本音が出てしまい、目線が特定部位にいかないように注意する。
「何よ! 褒めてるの? けなしてるの?
あと、背のこと強調しないでよね!」
「まぁまぁ。ナノはいい子だよ。小さくて可愛さもありながら、凛としてて、すごく綺麗ってことだよ」
ジュンシに目配せされる。
自分の計画の方が大切。
悔しさを滲ませつつ、今回は降りる選択をする。
「仲間の活動資金も含めてなら、ナノもいいでありまっすか?」
「えっ? ナノ……は、それでいいよ」
耳を赤らめて、ゴニョゴニョと口ごもる。
*
記録は静かに積み重なり、
まだ誰も、それを因果とは呼ばなかった。




