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第7話 戦略的行動

起きる。身支度をする。

カゲインと合流。

朝から、なかなか忙しい。


でも、もう身支度は一人でできるようになった。

きっと、大人の階段を一段登った証拠だ。


今日も変わらず、配達だ。

最近は評判がいいらしく、新しい配達先が増えている。


「小物はいつも通り、僕が行ってくるよ」


こういう分担をすると、効率がいいんだよね?

さすがカゲイン。頭いい!



街を歩いていると、たまに大きな声で話す人間がいる。

でも、そういう人の話は大抵難しくて、よく分からない。


それに、ホントの顔で笑っているところを、ほとんど見たことがない。


「ほら、あそこの家の息子さん、こないだ怪我して魔法医さんのとこ行って治ったのに、回復詐欺だーとか言って暴れたらしいわよぉ。……その魔法医って闇だったんじゃないのぉ? あーはっはっはは」


こういうデカい声の人間。

楽しい話じゃないのに、笑っている。


カゲインが聞いてなくて良かった。



小物の配達をあらかた終えて戻ると、カゲインももう終わっていた。


「ご飯にいきましょう。今日はこれで終わりデス」


いつの間にかギルドに寄っていたみたいで、お小遣いを渡される。


ご飯。

道具屋。

本屋。

たくさん買い物をした。


上司はお金を払わない。ものすごく楽だ。



宿に戻ってベッドで転がっていると、カゲインが話しかけてきた。


「配達先で、教会の近くの噂話があったデス。

 悪魔が嫌いな、怖い人間が、小さな悪魔を食べちゃうお話しデス」


「……そんな人間がいるのか!」


「危ないですから、一人で行動しちゃだめデス。

 二人でいれば来ないそうデス。

 お互いを守る行動は、戦略的行動といいますデス」


戦略的行動。

カッコいい!


しばらくは教会には行けないな。

配達をしながら、情報集めだ。



とりあえず、報告をしよう。


> デカい声の人間!

> 悪魔を食べる人間!

> カゲイン守った!

> 戦略的行動!


報告も、だいぶ慣れてきた。

今日は悪い人から、ちゃんとカゲインを守れた。

カゲインも、報告している。


僕は、守れる上司だ。



――その頃のテレッツ。


「全部、順調なのだ」


報告を読みながら、静かに頷いていた。



――その頃のプラッシーたち。


〈プラッシー視点〉


勇者の卵、イケメナント=ジュンシの後ろに隠れていれば、

スキルの複製は「神の加護」で通せるのでありまっす。


ギルドで、たまたま同い年ってだけで声をかけてくれて、

実に幸運でありまっす。


ジュンシのおかげで、効率よく魔物からスキルを複製できているのでありまっす。


ただ、あのキレーナ=ツンデレーノ。

最初は魔物から助けたのに、「魔物も生き物だから」とか言い出して、

動物愛護でありまっすか。


こういうの、意識高い系貴族娘にありがちでありまっす。

没落しかけた貴族の娘だけありまっす。


「あなた達より沢山討伐したので、この配分でいいでありまっすか?」


「そうだね。僕はこれだけあれば文句ないよ」


……ん?

なぜ、こちらを見るでありまっすか?


ツンデレーノが、何か言いたそうにこちらを見つめてくる。


「違う! あんた頭いいんだから、分けるにしても仲間の活動資金とか配分考えなさいよね。

 隙あらば多く持ってこうとするよね、あんたは」


耳につんざくような高い声に、思わず肩がビクッと反応する。


「生意気でありまっす!」


「私だって言いたくもなるわよ。組んでから、もうどのくらい経ったと思ってるの?」


「うるさいでありまっす!」


感情をお互いに制御できないでいる。


「効率……そう、効率でありまっす。

 貰える時に、お互い納得すればウィンウィンでありまっす」


ツンデレーノは少し呆れた顔でこちらを見る。

だが向こうは、話を終える気がない。


「あなたは顔が整ってるのに、いろんなパーツが小さいでありまっす。

 心も顔も体も身体も! 全部ナノでありまっす!」


熱くなって、ついつい本音が出てしまい、目線が特定部位にいかないように注意する。


「何よ! 褒めてるの? けなしてるの?

 あと、背のこと強調しないでよね!」


「まぁまぁ。ナノはいい子だよ。小さくて可愛さもありながら、凛としてて、すごく綺麗ってことだよ」


ジュンシに目配せされる。

自分の計画の方が大切。

悔しさを滲ませつつ、今回は降りる選択をする。


「仲間の活動資金も含めてなら、ナノもいいでありまっすか?」


「えっ? ナノ……は、それでいいよ」


耳を赤らめて、ゴニョゴニョと口ごもる。



記録は静かに積み重なり、

まだ誰も、それを因果とは呼ばなかった。

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