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第6話 配達任務

昨日、カゲインの冒険者登録を済ませた。

だから今日は、一緒に冒険者ギルドへ向かうことにした。


ギルドの建物は相変わらず大きくて、近づくだけで人の気配が多い。

中に入ると、掲示板の前に人だかりができていた。


「今日は何選ぶ?」


そう聞きながら掲示板を見上げると、真っ先に目に入ったのは魔物討伐の依頼だった。

他にも護衛や同行など、種類は豊富だ。


やっぱり、やるなら派手なのがいい。

そう思っていたら――


「……配達デス」


カゲインが指差したのは、地味な紙切れだった。


「えー、配達? それ地味じゃない?」


「でも、効率はいいんデス」


首を傾げる僕に、カゲインは淡々と説明する。


「いろんな場所を回れますし、人も多く見られるんデス」


「……あ」


なるほど。

刈れるやつを探すには、確かに向いている。


「カゲイン、頭いいな」


素直に言うと、少しだけ照れた顔をした。



建物の外に出て、移動手段を考える。

禁止されてるけど、羽を出して飛べば早いよね?


「……こっそりならダメ?」


「だめデス」


間を置かずの即答。


「だよね」


しぶしぶ、地上移動。



人混みの中で、見覚えのある背中が目に留まった。

まるで、意識の端を引っ張られているみたいだ。


「あっ」


プラッシーだ。

教会で見た、あの眼鏡の子。


その隣に、同じくらいの年齢の男の子がいる。


……この人間も、嫌な感じがする。

見ているだけで、胸の奥がじわっと重くなる。

追いかけてくる質が、前のとはまた違う。


「あれ、何?」


思わず足が止まる。

スキルは、反応してない。

刈れない。


「……今じゃないってことか」


少し悔しい。

でも、ふと思い出す。


――上司の背中を見て、部下は学ぶ。


コールさんが言っていた。

僕は今、上司だ。


だったら、今やるべきことを放置するわけにはいかない。

背中をアピールする、よい機会だ。


「カゲイン、仕事戻ろ」


「はいデス」


プラッシーと、その隣の男に一瞬だけ視線を残す。


(ジュンシ……だったかな? 次は刈る)



配達の仕事は、二人でやると意外と早かった。

荷物を運んで、受け取って、また運ぶ。


「……おお」


手元に残った金袋を見て、ちょっと驚く。


「こんなに?」


「はい。分配はこうなるデス」


きっちり丁寧に説明される……。


「え? 偉い人とか上司って、お金持たないの?」


「基本、お小遣い制デス」


「……そうなんだ」


部下の言うことをちゃんと聞ける。

そんな“できる上司”なんだ、僕は。


それにしても、いい部下がついた。

いろいろ知ってるし、近くにいても嫌じゃない。


「じゃあ、帰って報告だ!」


悪魔の道具を取り出して、意識を流す。


> ヤバいスキルはジュンシ!

> 刈れなかった!

> カゲイン頭いい!

> お金稼いだ!


……うん。いい感じ。

部下を褒めたし、成果もある。

お小遣いももらえた。


「何食べようかな」


そういえば、カゲインも悪魔の道具を持っているらしい。

でも、きっと自己主張は苦手だろう。


「僕がカゲインの活躍も報告しといたよ」


僕は気遣いができる上司。

そして、部下を守れる上司。



――その頃のテレッツ。


「おー、きたきたなのだ」


届いた報告を眺めながら、テレッツは頷く。


「ジュンシ……ああ、勇者の卵なのだ」


配達をしながら、刈れる対象を探す。

判断としては、悪くない。


「カゲインかぁ。テンチの名付けは好みなのだ。センスいいのだ」


闇属性の回復。

両親は亡くなっている。幼い頃に。


スキルの芽生えの流れを思い返し、

胸の奥に、言いようのない熱が宿る。


「……久しぶりに、親のところに寄るのもいいかもしれないのだ」


テンチ・コール・カゲインから送られた内容。

悪魔の道具から紙に文字が移り、不穏が形になる予感を報告書として結ぶ。


読み返し、小さく息を吐く。


「本当に、いろいろと助けられているのだな」


そう呟いて、

不穏の種はすくすくと成長していく。

紙に、黒を残しつつ。

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