第6話 配達任務
昨日、カゲインの冒険者登録を済ませた。
だから今日は、一緒に冒険者ギルドへ向かうことにした。
ギルドの建物は相変わらず大きくて、近づくだけで人の気配が多い。
中に入ると、掲示板の前に人だかりができていた。
「今日は何選ぶ?」
そう聞きながら掲示板を見上げると、真っ先に目に入ったのは魔物討伐の依頼だった。
他にも護衛や同行など、種類は豊富だ。
やっぱり、やるなら派手なのがいい。
そう思っていたら――
「……配達デス」
カゲインが指差したのは、地味な紙切れだった。
「えー、配達? それ地味じゃない?」
「でも、効率はいいんデス」
首を傾げる僕に、カゲインは淡々と説明する。
「いろんな場所を回れますし、人も多く見られるんデス」
「……あ」
なるほど。
刈れるやつを探すには、確かに向いている。
「カゲイン、頭いいな」
素直に言うと、少しだけ照れた顔をした。
*
建物の外に出て、移動手段を考える。
禁止されてるけど、羽を出して飛べば早いよね?
「……こっそりならダメ?」
「だめデス」
間を置かずの即答。
「だよね」
しぶしぶ、地上移動。
*
人混みの中で、見覚えのある背中が目に留まった。
まるで、意識の端を引っ張られているみたいだ。
「あっ」
プラッシーだ。
教会で見た、あの眼鏡の子。
その隣に、同じくらいの年齢の男の子がいる。
……この人間も、嫌な感じがする。
見ているだけで、胸の奥がじわっと重くなる。
追いかけてくる質が、前のとはまた違う。
「あれ、何?」
思わず足が止まる。
スキルは、反応してない。
刈れない。
「……今じゃないってことか」
少し悔しい。
でも、ふと思い出す。
――上司の背中を見て、部下は学ぶ。
コールさんが言っていた。
僕は今、上司だ。
だったら、今やるべきことを放置するわけにはいかない。
背中をアピールする、よい機会だ。
「カゲイン、仕事戻ろ」
「はいデス」
プラッシーと、その隣の男に一瞬だけ視線を残す。
(ジュンシ……だったかな? 次は刈る)
*
配達の仕事は、二人でやると意外と早かった。
荷物を運んで、受け取って、また運ぶ。
「……おお」
手元に残った金袋を見て、ちょっと驚く。
「こんなに?」
「はい。分配はこうなるデス」
きっちり丁寧に説明される……。
「え? 偉い人とか上司って、お金持たないの?」
「基本、お小遣い制デス」
「……そうなんだ」
部下の言うことをちゃんと聞ける。
そんな“できる上司”なんだ、僕は。
それにしても、いい部下がついた。
いろいろ知ってるし、近くにいても嫌じゃない。
「じゃあ、帰って報告だ!」
悪魔の道具を取り出して、意識を流す。
> ヤバいスキルはジュンシ!
> 刈れなかった!
> カゲイン頭いい!
> お金稼いだ!
……うん。いい感じ。
部下を褒めたし、成果もある。
お小遣いももらえた。
「何食べようかな」
そういえば、カゲインも悪魔の道具を持っているらしい。
でも、きっと自己主張は苦手だろう。
「僕がカゲインの活躍も報告しといたよ」
僕は気遣いができる上司。
そして、部下を守れる上司。
*
――その頃のテレッツ。
「おー、きたきたなのだ」
届いた報告を眺めながら、テレッツは頷く。
「ジュンシ……ああ、勇者の卵なのだ」
配達をしながら、刈れる対象を探す。
判断としては、悪くない。
「カゲインかぁ。テンチの名付けは好みなのだ。センスいいのだ」
闇属性の回復。
両親は亡くなっている。幼い頃に。
スキルの芽生えの流れを思い返し、
胸の奥に、言いようのない熱が宿る。
「……久しぶりに、親のところに寄るのもいいかもしれないのだ」
テンチ・コール・カゲインから送られた内容。
悪魔の道具から紙に文字が移り、不穏が形になる予感を報告書として結ぶ。
読み返し、小さく息を吐く。
「本当に、いろいろと助けられているのだな」
そう呟いて、
不穏の種はすくすくと成長していく。
紙に、黒を残しつつ。




