表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第3話 冒険者登録

この街にも、だいぶ慣れてきた。

魔法書の店、武器屋、道具屋、防具屋、服屋、魔道具屋。

外から眺めただけでも分かる。

人間の生活は、思ったより複雑だ。


「今度、ゆっくり見て回ろう」


そう思いながら歩いていると、視界の端に見覚えのある後ろ姿が映った。


「あっ」


あの眼鏡の子――プラッシーだ。

気づけば、自然と後を追っていた。

別に理由はない。強いて言えば、気になるだけだ。



プラッシーが入っていったのは、これまで見たどの建物よりも大きな施設だった。

中に入ると、ざわめきと汗と酒の匂いが混じった空気が鼻を突く。


「冒険者ギルド、か」


そういえば、コールさんが言っていた。

人間界では、ここで金を稼ぐのが手っ取り早いらしい。


中には、いかにも強そうな人間が多かった。

武器を背負った者、傷だらけの者、視線だけで威圧してくる者。


――でも。


「……嫌な感じ、しないな」


あれだけ集まっているのに、教会で感じた“居たくない”って感覚はない。

何人かは、はっきり分かる。

僕より、強い。


「人間って、弱いんじゃなかったっけ」


少し、考えを改める必要がありそうだ。



受付の前で、プラッシーが手続きをしている。

途中、後ろにいた大柄な冒険者に頭を軽く叩かれていたけど、そいつからは嫌な感じはしなかった。


……不思議だ。


ギルド内で、試しに《権能調律》を意識してみる。


「……反応、しないのか」


誰にも引っかからない。

刈れない。


つまり、ここにいる人間たちは、少なくとも“簡単には刈れない側”だ。


「僕が弱いのか、人間が思ったより強いのか……

 それとも、油断している相手しか刈れていないのか」


考えるのは後だ。

来たついでに、僕も登録しておくことにした。



用意していた偽装用の身分を書いて提出する。

受付の――人間が、書類を見て目を細めた。


「まぁ……ご両親が病気で、あなたが大黒柱なのねぇ」


なぜか、頭を撫でられた。


「大黒柱って、強くて偉い大人のことじゃないのか?」


疑問は口に出さず、冒険者カードを受け取る。

E級。


「……下からか」


でも、ここから始めるのが人間界のセオリーなんだ。

目指すはてっぺんだ!


気分はこうだけど、僕にはやらなきゃいけないことがある。

強くならないといけないらしい。



ギルドを出て、街を歩く。

昨日出会った“嫌な感じ”を探しながら。


やっぱり、教会の周辺だけだ。

あの感覚があるのは。


しばらくすると、教会の外で神父と話している人間が目に入った。


「……いた」


神父はいつもの通り、嫌な感じがする。

でも、それ以上に気になるのは隣の男だ。


これまでとは違う、嫌な大きな波が押し寄せてくる気配。

身体つきは神父より弱そうなのに。



「神父様のお話を聞けて、とても良かったです」

「いえいえ。本当は、あなたのような強いスキルを持った方が、聖職者になるべきなのですが」

「私には家族がいますから。……そういえば、この前の子は奇跡だと」

「ええ、あれも神の御心ですね」


――強いスキル。

なるほど。

弱そうな人間。あいつは、危険だ。



隙を伺いついて行く。

男は一人になった。

教会の外の椅子に座り、気を抜いている。


……反応している。


「……今だ」


《権能調律》(闇)

刈り取る。


男は、がくりと前に倒れた。

同時に――


「――っ!?」


何かが、体の中に流れ込んでくる。

闇と聖が反発してるだけじゃない。

身体そのものが、拒絶している。


何かが、体の中を逆流してくる

背中を伝う悪寒が、内側で何かが変わったことを告げていた。

冷や汗。脂汗。

触れてはいけないものを掴んだ感覚。


視界が揺れて、意識が飛びかける。


「……っ、くそ」


数秒後、ようやく呼吸が落ち着いた。

周囲を見る。


刈られた男は、何事もなかったかのように立ち上がり、歩き出していった。


「……死なないし、気づかないのか」



スキルを確認する。


《聖光》(聖)

――聖なる光が周囲を照らす


「……使ってみるか」


意識を向ける。

――何も起きない。


「使えないじゃないか!」


それどころか、思い出しただけで気分が悪い。


「嫌な気分を味わっただけじゃないか……でも」


身体の中……かな?

属性の問題……かな?

よく分からないけど、使えなかった。


でも、直感が告げている。

これは、危険だ。

そのままにしてはいけない気がした

「……刈らないと、ダメだ」



危ない目には遭ったが、標的ははっきりした。

僕は悪魔の道具を取り出す。


「聖光、刈った!

 聖なる光が周りを照らすらしい!

 死にそうになった!

 助けて!」


……よし。


自分の弱さを知っている僕は、きっと強い。

危ないスキルを刈った報告もした。

テレッツ様の評価も、きっと爆上がりだ。


そう思いながら、僕は街の灯りの中へと溶け込んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ