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24話 包むこと、見守ること

チュチュン……チュチュン……

今日は朝から魔鳥が鳴いている。

鳴くときは、曇りか雨になることが多い。

二回鳴いたら、だいたい曇りだ。

カゲインにそう教えると、魔界は不思議で便利なことが多いと言われた。

人間界は不便で、複雑で、少し窮屈だった。

「プラーナさんが待ってるから行こう。昨日は楽しかった」

予定より早い時間だけど、

何か掴めそうで掴めない感覚があったから、少しでも前に進みたい。

「あら、テンヤ君は今日も元気ね。カゲイン君も、おはよう」

プラーナさんは動きが綺麗で、上品だ。

手を振られたから、振り返した。

もう仲良しだと思う。

「プラーナさん、今日もよろしくお願いしますデス。魔界のことや魔族の話も、また教えてほしいデス」

なんて言っても、物知りさんだ。

カゲインも聞きたいことが多いみたいで、三人でいると楽しい。

「じゃあテンヤ君、昨日と同じ“ギュッ”はそのままで。

止めるんじゃなくて、抱きしめる感じをイメージしてみて。

闇さんも、聖さんも、包み込んであげてね」

分かりやすいけど、難しい。

お母さん達が毎日ギュッてしてくれた、あの感じだと思う。

昨日、プラーナさんがスキルに何かしてくれたから、

指先のモヤは少し動かせるようになっていた。

「少しはイメージできたかしら?」

包み込む、という言葉の意味は分かった。

でも、見えていない背中の方は、消えたかどうかも分からない。

そのことを二人に伝える。

「テンヤ様は、見えないところが暴走するデス。

見えないとイメージしにくいのは、人間の自分にも分かるデス。

解決にならなくて、すみません……」

「大丈夫よ。テンヤ君は感覚が鋭いから。

また明日、少しずつやりましょう」

挨拶をして別れた。

帰り道、手応えはあった。

でも同時に、大きな壁が立ちはだかっている気もした。

早く任務をこなして、大人にならなきゃ。

できるようになったら、きっとみんな喜んでくれる。

だから、頑張らなきゃ。


 −−教会へ行く冒険者ボム

神聖な空気が漂う教会。

ステンドグラスの色が床に落ち、静かな儚さを作っている。

手を合わせ、いつものように祈る。

空気が、わずかに揺れた。

誰にも感知できないが、分かる者には分かる揺れだ。

(……おう。分かった)

祈りを終え、顔を上げる。

神の像に軽く頭を下げた。

「ボムさん。おはようございます」

肩が跳ねる。

前にも会った神父だ。

「今日もお祈りが長かったですね。

あなたのような敬虔な信徒は、歓迎されますよ」

ボムは焦ったように汗を拭った。

「そんなに有名ですか。

祈りたいことが多いだけなんですよ」

神父の目と空気で分かる。

目的は寄付だ。

「各地の教会でも有名ですよ。

名前も、冒険者として旅をしていることも」

このままじゃ長引く。

ボムは話を切り上げる。

「そうですか。では、そろそろクエストの時間なので」

そのまま出口へ向かう。

空気の揺れは、誰にも気づかれないまま消えた。

「……なんで俺が、いつも戦わなきゃいけねぇんだよ……変わってくれよ……」

声のトーンに疲労とやるせなさが混じる。

行き先を決めながら、ぼやく。

「さて……勇者の卵君と、その仲間を見に行くか」

その前に腹ごしらえだ。

串焼き肉を頬張る。

「おっちゃん。この街、雰囲気重いな。

こんだけ大きいのに、活気がねぇ」

焼き台の男は、目で語ったあと口を開く。

「よそ者か。

噂じゃ、勇者だったやつが裏切ったらしい」

内緒だぞ、という顔。

「スキルの種は神の試練なんだとよ」

こういう奴ほど、話したがる。

ボムは礼を言い、いくつか店を回った。

どこでも似た噂を聞いた。

「……今はタイミングじゃねぇな」

空を見上げ、奥歯を噛む。

「教会も……すげぇことやるな」

ひと息ついて、歩き出す。

「ま、ギルド行くしかねぇか」

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