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第2話 観測対象者(プラッシー)

第2話 観測対象者


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今日は、昨日の子を探してみよう。

会えるかな?

そんな気持ちで、僕は街へ出た。



色んな道があって、色んな店があって、所狭しと並んでいる。

魔界も人間界も、基本はそう変わらない。

でも――ひとつだけ、大きく違うところがある。


人間界の街は、建物がやけに密集しているのだ。


魔界では、種族の違いが大きい。

大型種や翼を持つ者も多いから、建物の間には余白がある。

でもここは、違う。

建物がぎゅうぎゅうに詰まっていて、空が狭い。


その違いが、なんだか面白く感じる。

僕は胸を躍らせながら、街を歩いた。



ふいに、鼻が空気の変化を捉える。

……スンスン。……スンスン。


焼いた肉の匂い。

甘い油の香り。

これは、きっと――

人間界のごはんの匂いだ。

美味しそう。

よだれが出そう。

人間界で一番楽しみなのは、きっと食事だ。

作物の種類は魔界と似ているけど、調理の仕方が違う。

お母さん達が言っていた。

「人間界の料理は、魔界のより美味しいかもしれないよ」って。

人間は工夫を沢山するらしい。

正直、まだよく分からない。

でも、なんとなく――期待してる。


……あ、そうだ。宿に行かなきゃ。



さっき見つけておいた場所へ向かうと、すぐに辿り着いた。

宿は、ここだ。


中に入って、話をして、お金を払う。

それだけなのに、妙に長く感じた。


「両親はどうしたの?」

「お金は持ってる?」

「遠くから来たの?」


いろいろ聞かれたけど、全部テレッツ様から教わった通りに答えた。

すると、朝ごはんのサービスが付いた。


「僕は家族の大黒柱だよ」って言ったら、さらに優しくなった。

……なんでだろう?


人間界は、魔界と違う。



宿も確保できたし、まだお日様は眠っていない。

もう一度、街を回ってみようかな。


テレッツ様は言っていた。


「人間界に溶け込み。

 スキルを、たくさん集めてくるのだ」


直属の部下であるコールさんから、集め方と溶け込み方は教わっている。

ただ、難しいことはあまり覚えていない。


「羽を出すな」

「目立つ行動を取るな」

「空を飛ぶな」


これは覚えている。だから、きっと大丈夫だ。


最初の危機も、閃きで回避したんだ。

……ただ、偉い人に怒られたくないだけだけど。



そんなことを考えていたら、目の前に見知った背中があった。


あっ。プラッシーだ。


今日はどこへ行くんだろう。

少し、後を追ってみる。


プラッシーは屋台で食べ歩きをしていた。

店主と楽しそうに話している。


僕は片手に飲み物と、屋台の串焼き。

美味しくて、いくつも食べられそうだ。

魔界の料理とは変わらないけどタレが食欲を刺激する。

美味しく食べて健康を保とう。

一石二鳥だ。


何を話しているのか気になって、少し近づいて耳を澄ませた。


「今朝、教会で“効果不明だけど二つのスキルを持つ特別な子が出た”らしいね」

「あと勇者の卵がこの年で現れたそうだよ。仲間になっておくと出世できそうでうらやましい」


……特別な子として、自分の噂を聞きに来たんだな。


こういう話は、どんどん尾ひれがついて、勝手に変わっていく。

魔界でも僕の噂は沢山追加されて、別の噂になったかと思ったくらいだ。

キミは今しか聞けない、楽しい時間だ。


うん、お互い、情報収集は大切だ。



「これからも見てるよ」

「最初にスキルを使った、君のこと」


相手は見ていない。

でも、僕は手をふる。

君の動きに、注目してくよ。


不安。

興味。


いろんな気持ちが、この行為に込められていた。



魔界から人間界へ飛んできて、今日一日。

さすがに、疲れた。


宿に戻ろう。


重くなった足取りで歩きながら、ふと思い出す。


「やったことは、全部報告するのだ」


テレッツ様の声が脳裏に響いて、背筋が伸びた。


……でも、あんまり細かくは覚えてないや。

忘れることは、人生を楽しく生きるコツだ。


悪魔の道具を取り出し、意識を流し込む。


潜入成功!

宿確保!

ご飯美味しい!

お金、もっと欲しい!


今日一日、街を歩いて、見て、食べて、ちゃんと報告もした。


「完璧だ」


満足して、布団に潜り込む。


「明日は、何をしようかな……zzz」

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