第13話 森の異変(勇者側:ナノ視点)
私は、キレーナ=ツンデレーノ。
没落しかけたとはいえ、れっきとした貴族の娘。
今の仲間とは、魔物に襲われたときに出会った。
助けられた。……それが、どうしようもなく恥ずかしい。
貴族の集まりで聞きかじった言葉を、私は口走ってしまった。
「動物愛護」とか、「魔物も生き物」とか。
……分かってる。襲ってきたら、倒さなきゃいけないって。
でも、助けられた直後に言うことじゃなかった。
ああ、今思い出しても、顔から火が出そう。
「おい!ナノは何を考えてるでありまっす?」
プラッシーが、いつもの調子で声をかけてくる。
「まぁどうせ根に持つから、過去の失敗とか頭から離れないタイプでありまっす。
昔付き合ってた彼女がそうでありまっす」
……え?
昔?
そんな早くから?
「ありまっす」口調に惹かれる人なんて、いるの?
私たち貴族は、婚約者を親に決められる。
でも、庶民は自由恋愛よね?
私は、友達すら初めてなのに。
没落は回避したけれど、貴族界隈では“没落貴族”として扱われ、ほとんど相手にされていない。
濁してもしょうがない、実際は拒絶されているの。
今回、勇者の仲間に入れてもらったのも、打算がなかったとは言えない。
でも――おかしいのよ。
私は外見を褒められるし、貴族というアイデンティティもある。
それなのに、“メガネで効率主義で語尾が変な人”に、負けてる気がするなんて。
……悔しい。
でも、負けた気がするのも事実。
決めたわ。
私も、語尾をつける。
今日から。
(まずは、心の中で練習……)
*
「そういえばでありまっす。なんでも昨日、光る鳥が羽を落としたらしく、
その羽を拾うと願いが叶うと言われてるでありまっす」
「願い事に彼氏ができますようにと祈るでありまっす」
(効率の悪い嘘は後で否定するでありまっす。
効率のいい嘘を回すでありまっす。
光る羽ならジュンシも食いつくでありまっす)
「光る羽? 願いが叶う羽とは、見てみたい。僕は賛成だね。
なぜ光るのか? それは僕に見つけてほしくて光ってるはずだから」
……。
ジュンシって、こういう少し変わったことを言わなければ、本当に素敵なのデスわ。
あら、「デスわ」とかも……素敵ね。
*
光る羽を探しに行くことは、暗黙の了解で決まった。
発見されたのは森の中。
そこまで広くはないらしい。
「発見されたのはこの辺りでありまっす。では、別れて探すでありまっす」
私は、正直あまり信じていない。
でも、二人は信じている。
……これは違う。
これも、違う。
探しても、見つからない。
ジュンシを見つけた。
声をかける。
「ねぇ、ジュンシは見つけれた?
そもそも、本当に願い事とか叶うのかしら?」
ジュンシは、少し驚いたようにこちらを見る。
一瞬だけ俯いてから、顔を上げる。
……いつもの顔。
でも、気のせいかしら。
一瞬だけ、何か暗かった気がした。
「本物かどうかより、
皆が信じてるってことが大事なんだよ」
……違和感。
さっきの反応と、この言葉。
貴族社会で何度も見てきた、“裏に何かを含んだ言い方”に、少し似ている。
そのとき、プラッシーの笛が鳴った。
集合の合図。
成果なし。
でも、なぜだか二人は、とても残念そうに見えた。
もし、見つけていたら――
二人は、何を願うつもりだったのかしら。
*
光る鳥の正体は、
後に大きな波紋となる。
世界の「序列」システムを変える、
歴史の始まりを――私はまだ知らない。
――システム修正箇所、確認。
排除ではなく、調整にて対応中……




