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第13話 森の異変(勇者側:ナノ視点)

私は、キレーナ=ツンデレーノ。

没落しかけたとはいえ、れっきとした貴族の娘。


今の仲間とは、魔物に襲われたときに出会った。

助けられた。……それが、どうしようもなく恥ずかしい。


貴族の集まりで聞きかじった言葉を、私は口走ってしまった。

「動物愛護」とか、「魔物も生き物」とか。

……分かってる。襲ってきたら、倒さなきゃいけないって。


でも、助けられた直後に言うことじゃなかった。

ああ、今思い出しても、顔から火が出そう。


「おい!ナノは何を考えてるでありまっす?」


プラッシーが、いつもの調子で声をかけてくる。


「まぁどうせ根に持つから、過去の失敗とか頭から離れないタイプでありまっす。

 昔付き合ってた彼女がそうでありまっす」


……え?


昔?

そんな早くから?

「ありまっす」口調に惹かれる人なんて、いるの?


私たち貴族は、婚約者を親に決められる。

でも、庶民は自由恋愛よね?


私は、友達すら初めてなのに。


没落は回避したけれど、貴族界隈では“没落貴族”として扱われ、ほとんど相手にされていない。

濁してもしょうがない、実際は拒絶されているの。

今回、勇者の仲間に入れてもらったのも、打算がなかったとは言えない。


でも――おかしいのよ。


私は外見を褒められるし、貴族というアイデンティティもある。

それなのに、“メガネで効率主義で語尾が変な人”に、負けてる気がするなんて。


……悔しい。

でも、負けた気がするのも事実。


決めたわ。

私も、語尾をつける。


今日から。


(まずは、心の中で練習……)



「そういえばでありまっす。なんでも昨日、光る鳥が羽を落としたらしく、

 その羽を拾うと願いが叶うと言われてるでありまっす」


「願い事に彼氏ができますようにと祈るでありまっす」


(効率の悪い嘘は後で否定するでありまっす。

 効率のいい嘘を回すでありまっす。

 光る羽ならジュンシも食いつくでありまっす)


「光る羽? 願いが叶う羽とは、見てみたい。僕は賛成だね。

 なぜ光るのか? それは僕に見つけてほしくて光ってるはずだから」


……。


ジュンシって、こういう少し変わったことを言わなければ、本当に素敵なのデスわ。


あら、「デスわ」とかも……素敵ね。



光る羽を探しに行くことは、暗黙の了解で決まった。


発見されたのは森の中。

そこまで広くはないらしい。


「発見されたのはこの辺りでありまっす。では、別れて探すでありまっす」


私は、正直あまり信じていない。

でも、二人は信じている。


……これは違う。

これも、違う。


探しても、見つからない。


ジュンシを見つけた。

声をかける。


「ねぇ、ジュンシは見つけれた?

 そもそも、本当に願い事とか叶うのかしら?」


ジュンシは、少し驚いたようにこちらを見る。

一瞬だけ俯いてから、顔を上げる。


……いつもの顔。

でも、気のせいかしら。

一瞬だけ、何か暗かった気がした。


「本物かどうかより、

 皆が信じてるってことが大事なんだよ」


……違和感。


さっきの反応と、この言葉。

貴族社会で何度も見てきた、“裏に何かを含んだ言い方”に、少し似ている。


そのとき、プラッシーの笛が鳴った。

集合の合図。


成果なし。


でも、なぜだか二人は、とても残念そうに見えた。


もし、見つけていたら――

二人は、何を願うつもりだったのかしら。



光る鳥の正体は、

後に大きな波紋となる。


世界の「序列」システムを変える、

歴史の始まりを――私はまだ知らない。


――システム修正箇所、確認。

排除ではなく、調整にて対応中……

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