年賀状・オンライン
こんにちは。
◯◯・オンラインシリーズ……。
最後は、あまりゲームっぽくなりませんでした。
第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞への応募作です。
よかったら、ぜひ読んでやってください。
俺の名前は金岡玲央。
ゲーム好きの高校生だ。
最近はいろんなVRゲームを遊んでいるんだが、ひとつ悩みができちまった。
お医者様にも草津の湯にも直せないっていう、あの手のやつだ。
きっかけは、ある音ゲーだった。
それまで無敵を誇っていた俺が、最初の対戦でコテンパンにやられた。
最初は少し陰のある感じの相手だったのに、対戦を重ねるうちに、彼女は楽しそうに笑うようになった。
その笑顔が、どうしても忘れられない。
別のゲームで知り合ったホットケーキ好きのおっさんに相談すると、「告白しろ」と発破をかけられた。
ホラー音ゲーで知り合った指揮者のおっさんにも話してみたが、相手の名前――ネネちゃんだ、と言った瞬間、なぜか微妙な顔をされた。
ネネちゃん。可愛い名前だろ? 多分、年も近いと思う。
自転車ゲームで知り合った少年にも相談すると、そいつはニヤニヤしながら、あるタイトルを勧めてきた。
『年賀状・オンライン』
まずは連絡を取り合うきっかけを作れ、ってことらしい。
……いや、俺、ネネちゃんの宛先も知らないんだけど。
途方に暮れていると、
『はーい♪ ナビAIのピコちゃんでーす! 年賀状・オンラインへようこそー!』
ウサ耳の小妖精が現れた。事情を説明すると、
『宛先は個人情報なのでお教えできません(素)』
いつもより事務的な返答だった。
――詰んだ。
* * *
私は神楽坂音々。音楽一家の長女です。
今日も弟のVRギアを無断で借りようとしたんだけど、なぜか弟の方から押し付けられた。
自室に戻ってギアをかぶると、いつものタイトル一覧は出ず、いきなり虹色の輪が迫ってきた。
『ネネさん、年賀状・オンラインにようこそー♪』
いつものウサ耳小妖精が浮かんでいる。
年賀状・オンライン?
年賀状を2026枚書くバトルとか?
『そうそう……って、そんなゲーム売れるかーい!』
AIって乗りツッコミするんだ……。
『ネネちゃん、あなたを、ある人がお待ちです』
首をかしげて振り向くと、見覚えのある人が立っていた。
* * *
突然現れたネネちゃんに、俺はドギマギしていた。
「あー、キンキングじゃん。また何か勝負する?」
「年賀状……書く……宛先……いい?」
言葉を絞り出す。
「やっぱり年賀状2026枚書く勝負?
じゃあ、私も書くね。キンちゃんのアドレスも教えて」
「お、おう……」
キンちゃんって……まあ、いいか。
赤、緑、水色。
何かが始まる音がした。
(おわり)
最後までお読みいただきありがとうございました!
もし、少しでも気にいってくださったら、★やリアクションをいただけると嬉しいです。
シリーズのURLも貼っておきますね。
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞応募作』
https://ncode.syosetu.com/s8251j/
『オルゴール・オンライン』
『ホットケーキ・オンライン』
『サバイバル・オンライン』
『ギフト・オンライン』
『舞踏会・オンライン』
『風鈴・オンライン』
『自転車・オンライン』
『木枯らし・オンライン』
『雨宿り・オンライン』
『合い言葉・オンライン』
『年賀状・オンライン』




