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最終話 青山さんは私の彼女です!




「ちょっ!ちょっと待って!!一旦ストップ!!しのぶちゃんっ!!」



 そう言われてハッとして我に返る。



 気づくと私はえみりちゃんの両手をベッドに押さえつけ、はだけたシャツの間に顔を突っ込み、ピンクのブラジャーをめくり上げてえみりちゃんを夢中で愛していた。


「わぁっ!!ごめんっ!!」


 覆いかぶさっていた体から慌てて降りた。


 どうなってるの!?

 確かついさっきまでえみりちゃんがシャツのボタンを外しているのを見ていたはずなのに……。なぜかそこから記憶が飛んでる。手を離したえみりちゃんの両手首は指の跡が残るほど赤くなっていた。


「しのぶちゃん……いきなり激しいよ……」


 起き上がったえみりちゃんはそう言って開いたシャツを手で抑え、目を伏せた。



 どうしよう……絶対嫌われた……



「ご、ごめんね……」



 怖くて顔が見れない。



「……しのぶちゃん、もしかして誰かと経験あるの……?」

「えっ!?そんなのないよ!!」

「嘘……。全くの初めてであんなこと……お願いだから本当のこと言って!」

「本当にないって!!キスだってしたことなかったのに!現実でこんな経験あるわけないよ!!」


 私がそう言うと、疑い100%だったえみりちゃんの表情は、喜びと得意気が混じった表情へと変わっていった。


「……じゃあ、現実じゃないところではいっぱい経験あるんだ?」

「…………それは……」

「誰と?誰とそんなにえっちなことしたの?」

「……それは……もちろん、えみりちゃんと……」

「でも、たまには他の人のことも想像したりしたでしょ?」

「してないよ!えみりちゃんとだけ!!」


 前のめりになって断言すると、えみりちゃんはもっと嬉しそうに笑った。そして、ご機嫌なまま再び体をベッドに預け、私に向かって左手を伸ばした。



 「しのぶちゃん……来て……」



 大きなベッドの上を膝で歩きえみりちゃんに近づく……。



 目の前までいくと、えみりちゃんは両手を広げ、胸の中に私を包んで抱きしめてくれた。その腕の力強さから想いの強さが伝わってくる。私は、酸素の薄い息苦しささえ気持ちいいと感じていた。


「ねぇ、しのぶちゃん、お願いがあるの」

「……なに?」


 ロックされたように体に回された腕の中から、なんとか上を向いて恐る恐る聞き返した。


「……しのぶちゃんが妄想の中の私にしたこと、今から全部、現実の私にもして欲しいの……」

「……そ……そんなことしたら、今度こそ私本当に死んじゃうよ!!」


 私が本気でそう言うと、えみりちゃんは吹き出すように笑った。


「大丈夫。そしたら私がまた生き返らせてあげるから……」



 えみりちゃんはそう言うとすぐにキスをしてきた。それは今まで何度もしたキスの中で一番えっちなキスだった。


 舌が入って来た時、今までずっと想像してきた感覚よりももっとすごくてびっくりした。キスだけでこんなに気持ちいいなんて初めて知った。やり方も分からないけどやめて欲しくない気持ちで唇が勝手に開き、えみりちゃんともっと一つになるために必死に応えた。


 長いキスが一度おさまった後、えみりちゃんが申し訳なさそうに口を開いた。


「本当はちゃんとシャワー浴びて綺麗な体差し出したいんだけど、もう我慢出来ないや…ごめんね、汚くて……」

「汚くなんかない。……私はいつも、想像でそうゆうえみりちゃんとしてたよ……その方が……いいと思ってた……」

「しのぶちゃんて……結構変態的だよね」

「えっ!?わっ、ごめんねっ!!」  

「違うの。すごく嬉しい……。私もそうだもん!……ただでさえこんなに好きなのに、どうしよう、私、もっともっとしのぶちゃんのこと好きになっちゃうよ……」



 その言葉を最後に、私の意識はまたゆっくりと薄れていった。



 最後の記憶では、今まで一人で妄想してきたことを次々と現実のえみりちゃんにしてゆく自分がいた。顔を見るだけで、話すだけで、それだけでも十分に嬉しかったえみりちゃんの肌に触れ、匂いに包まれていると、心がどんどん満たされていった。見よう見まねの下手な舌使いと拙い指使いで快感を与えていると、えみりちゃんの息は上がり、可愛い声を聞くことが出来た。とんでもない幸福感を感じながら、完全に私は自分を失った……







***








「……あれ?……私、生きてる……?」



 意識を取り戻し、天井を見ながら思わず独り言を言うと、隣から大好きな可愛い笑い声がした。


「大丈夫、ちゃんと生きてるよ」


 横を向くと、体ごとこっちを向いて寝っ転がるえみりちゃんがいた。余韻の残るその顔を見ていると、だんだんと濃厚な記憶が蘇ってきた。



 あれは夢じゃない……?

 こんな可愛い子に私は、本当に現実であんなことをしたの……?思い出すだけで全身の血が煮えたぎってきて、内臓が爆発しそうになる。



「……幸せだったな」



 えみりちゃんが私の手を握った。



「な、なにが……?」

「しのぶちゃんが……やっと私の体に触ってくれたこと……」


 私は恥ずかしすぎて何も言えず、掛け布団をかぶった。


「あっ!だめ!可愛い顔隠さないで!」


 すると、えみりちゃんは私の上に上半身を軽く乗せ、布団をめくって顔をチョンとキスをした。


「私たちがこんなことしてるなんて知ったら、マネージャーと千堂さん、びっくりするかな?……てゆうか、私のせいですでにバレちゃってるかな……?」


 私の前髪をかきあげるように撫でながら、えみりちゃんがは少しだけバツが悪そうに言った。


「どうかな……。でも確かに、昨日のえみりちゃんは珍しくけっこう表に出しちゃってたよね……?」

「しのぶちゃんに偉そうなこと言ってたくせに本当にごめんね……。でもどうしてか私、途中からもうバレちゃってもいいかなって思っちゃったんだよね……」

「えっ!?」

「バレちゃってもっていうより、バレたい……の方が近かったかも」

「どうして!?」

「だって、私がこんなにしのぶちゃんを好きな気持ち、誰かに聞いてほしくなるんだもん!」


 そんなことを言われたら胸がぎゅっとなる。


「痛いっ!」


 突然えみりちゃんが顔を歪めた。


「どうしたの?!」

「なんか今、足に何か硬いものが当たったの……なんだろ?」

「えっ!?」


 二人して起き上がり布団をめくったけど何も見当たらず、私はさらに足元を覗いた。すると、そこには細い棒のようなものが見えた。手を入れてそれを掴んだ時、その感触に私は忘れていたことを思い出した。


「これ!昨日のお店で店員さんが渡してくれたえみりちゃんの忘れものだ!」

「え?」 


 私はそう言って、掛け布団の中から出したボールペンを、えみりちゃんに手渡した。


「ポケットに入れてたんだけど、忘れてていつのまにか落ちちゃってたみたい……。ごめんね!!怪我してない?!」 

「うん、大丈夫!でもこれ、私のじゃないよ?」


 少し見ただけでそう判断し、えみりちゃんは私にボールペンを返した。


「えっ!うそ!?でもここにほら……」


 そんなはずはないと、ボールペンの側面を指さして見せる。


「……Aoyama……」


 えみりちゃんは紺のボールペンに刻まれた金色のローマ字を読み上げた。


「ね?」

「でも、Aoyamaの前に『R』って書いてある……そっか!これ、伶・青山だよ!」


 えみりちゃんが謎を解いた探偵のように言った。


「てことは、マネージャーのってこと?!そっか!マネージャーも()()()()だってこと忘れてた!」

「いつもマネージャーって呼んでるからね!私ですらけっこう忘れがちかも」

「あーあ、間違えて持ってきちゃったよ……マネージャー、ボールペン見当たらなくて今頃困ってるかなぁ……」


 すると、えみりちゃんは突然私の手から奪うようにボールペンを引っこ抜いて、照明の台の上に置いた。


「どうしたの?」

「しのぶちゃんがマネージャーのことをやらしい目で見てたこと思い出した」


 頬を膨らませ、ムスッとした顔で私を睨む。


「だから!それは誤解だって!!」

「今もすごい心配してたし……。次のバイトの時に渡せばいいだけなのに……」

「それは!特別に大切なものだったらって思っただけだよ!」

「…………」

「私はいつもえみりちゃんしか見てないのに……」


 こんなに好きなのに疑われてばっかりで、私は少ししょげた気持ちを全面に出してしまった。そんな私を、えみりちゃんはコテッとベッドに横になって見上げる。


「……なら、私が安心出来るようにもっともっといっぱいして……?」



 さっきあんなにしたのに、まだ足りなさそうに体をよじっている……私の頭の中で何かがパーンッ!とはじけた。



 だめだ……

 やっぱり可愛すぎて死にそうだ……



 えみりちゃんが私の彼女だなんて、やっぱりいまだに信じられない…… 



 信じられないけど、でも本当にえみりちゃんは私の彼女なんだ……


 


 あー!!

 誰かに言いたい!

 叫びたい!!

 誰かれ構わず宣言したい!!!

 私は世界一幸せだって言いふらしたい!!




 あぁそっか……えみりちゃんが言ってたのは、こうゆうことなんだ……




 ただ純粋に相手が好きな気持ちを、男女のカップルみたいに普通に口に出来たなら、どんなに幸せだろう。今、身に沁みてえみりちゃんの気持ちが分かった。



 私はえみりちゃんの体にしがみつくようにきつく抱きついた。



「……どうしたの?」

「……いつか、本当に言えたらいいね……私たちのこと……千堂さんとマネージャーに……」

「……そうだね」

「なんとなくだけど、あの二人なら理解してくれそうな気がする……」

「私もそう思う!もしもいつか話せたらさ、しのぶちゃんがすっごい変態でえっちだってこと自慢していい?」

「そっ、それはやめてよ!!っていうか、それって自慢なの?!」

「自慢だよ?それだけ愛されてるってことだもん!」 

「…………えみりちゃん」

「うん?」

「……大好き」

「私も、しのぶちゃんが誰より大好きだよ……」




 私はもう一度その体に重なった。そして、世界一可愛い私の彼女に初めて自分からキスをした。




 いつの日か堂々と宣言したい言葉を、今は胸に閉じ込めて……。













         【青山さんは私の彼女です!】



                  おわり











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