13 ブラックの情報
シャーロンは拳銃を構えたまま、冷たい声で言い放った。
「早撃ちで私に勝てた者はいない」
その言葉に、グラスはニヤリと口元を吊り上げた。
「奇遇だな。俺も得意なんだよ」
だが、次の瞬間。
「いや、俺が行く」
前へ一歩、静かに進み出たのはジャスティスだった。
「なに……」
ジャスティスは爆発的な速度で地を蹴った。
「正義の裁きを受けろおおおお!!!」
シャーロンが反射的に引き金を引く。
パンッ!
だがジャスティスは腕で弾丸を受け止めた。
そのまま一直線に突進する。
「っ速い……!」
すでにジャスティスの拳が目前まで迫っていた。
シャーロンは咄嗟に身を引き、もう一発撃とうとした。
しかし間に合わなかった。
ズガァン!!
ジャスティスの拳が彼女の腹部を捉える。
衝撃でシャーロンの体は宙を舞い、地面に落ちた。
「ぐっ……!」
激しく咳き込みながら立ち上がろうとする。
グラスが眉を上げる。
「やるじゃねぇか……」
タコ松も口笛を吹く。
「さすが、脳筋野郎だ」
立ち上がったシャーロンだったが、ジャスティスはすでにその前に立っていた。
「俺は悪を許さない。立ち上がっても、倒すだけだ」
青木は怒りを爆発させた。
「何をしている、シャーロン!そいつらを倒せ!」
しかしシャーロンは力尽き、地面に倒れ込んだ。
グラスは青木にじり寄り、冷たい目で見据えた。
「頼みの綱はもういなくなったな」
青木は慌てて身を引き、叫ぶ。
「近づくな!」
グラスは静かに問い詰める。
「王海会を潰されたからか?俺たちを狙った理由はそれだろ?」
青木は憎しみを込めて答えた。
「そうだ!お前らのせいだ!」
タコ松が割って入り、声を荒げた。
「お前らが静山さんを殺したからだろ!」
青木は拳を握りしめ、怒鳴り返す。
「うるさい!あいつは邪魔だったんだ!」
グラスは一気に間合いを詰めると、青木の顎を鋭く蹴り上げた。
「黙れ」
青木は気絶し地面に倒れる。
数時間後。
神山組の車両が倉庫に到着し、組員たちが処理に動き出した。
その間、グラスは三人の殺し屋を縄で縛り、うつ伏せになっていたシャーロンの肩を乱暴に揺さぶる。
「起きろ!」
シャーロンがうっすらと目を開ける。
「ん……あんた達は……」
グラスはポケットから何かを取り出した。
タコ松の歯ブラシ、使用済み、かつ殺人級の悪臭を放つ、あの伝説の拷問具である。
「ブラックって殺し屋を知ってるか。答えないと、これの臭いを嗅がせる」
その一言に、シャーロンの表情が一変する。
顔面が蒼白になり、唇が震える。
「ブ……ブラック……? そ、その名前を出すなんて……」
「知っているのか!」
シャーロンは目を伏せ、声を絞り出すように語った。
「ブラックは……恐ろしい男よ。奴には関わらないほうがいい。本当に命を落とす……」
グラスは目を細めた。
「居場所は知ってんのか」
「わからない……でも、奴には協力者がいるの。そいつが依頼を取り次いでる」
「誰だ。どこにいる」
シャーロンは一瞬躊躇するが、すぐに観念した。
「スターロック……っていうバーがあるの。そこの店主が……ブラックと繋がってる」
グラスはメモを取る。
「なるほど。とりあえずそれが本当か分かるまでお前を神山組に預ける」
タコ松はグラスを見ると口を開ける。
「次の目的地は決まったな」
ジャスティスも腕を組んで頷く。
「俺も行くぞ」
三人の戦いはまだ終わりそうにない。