11 正義感が強いバカ
グラスとタコ松は小屋へと戻ってきた。
タコ松が腕を組みながら渋い顔をする。
「マジであいつに頼むのか?」
「あいつしかいないだろ」
「……あの、あいつとは誰ですか?」
千冬が恐る恐る尋ねる。
「俺らと同じ殺し屋狩りだ。バカだけどな」
「バカ……ですか」
「まぁ信頼できる奴だな」
そう言ってグラスはスマホを取り出し、電話をかける。
「いけるってよ」
タコ松が頭を抱える。
「あいつが来んのか〜」
数時間後、小屋の扉がコンコンとノックされた。
グラスは椅子から立ち上がり、扉の前に立つ。
「来たみたいだな」
ギィ……と扉を開けると、そこに立っていたのは黒のスーツに身を包んだ男。
鋭い目つき、太い眉毛、そして堂々とした立ち姿──義田正守、通称【ジャスティス】だった。
「久しぶりだな!グラスとタコ松!」
「よぉ、ジャスティス」
グラスが応える。
ジャスティスは周囲を見渡し、不意に視線を千冬へ向けた。
「ん?そこの女性は誰だ?」
「剣崎千冬です」
次の瞬間、ジャスティスの目が見開かれた。
「なに!! 剣崎だと!あの剣崎家か!」
「えっと……はい」
ジャスティスは歯を食いしばり、拳を握る。
「俺は悪を許さん!」
「待て」
グラスが即座に止める。
「千冬は剣崎家の人間だが、悪じゃねぇ。俺たちの仲間だ」
ジャスティスはしばらく沈黙したあと、頭を下げた。
「なるほど……すまなかった」
「いえっ、大丈夫です」
千冬は微笑みながら応える。
「それより中に入れ」
グラスは扉を開け放ち、ジャスティスを招き入れた。
四人は囲むようにして座り、作戦会議が始まった。
「〇〇倉庫に行って敵を倒せばいいんだろ?」
「そんなに簡単じゃねぇぞ」
グラスが眉をひそめる。
「凄腕の殺し屋が何人もいるらしい」
「殺し屋だと!!悪を許さんぞおおおお!!」
ジャスティスは拳を振り上げて吠えた。
「わかったから。とりあえず座れよ」
タコ松が呆れながら言った。
ジャスティスは素直に椅子へと腰を下ろす。
「まぁ、ジャスティスに突撃してもらって、俺とタコ松が後からカバーするって流れでいいだろ」
「了解した。悪は、必ず成敗する」
千冬は不安に思う。
(そんな作戦で大丈夫なのかな)
その夜。
グラスたちは車に乗る。
グラスは窓を開けて千冬に話しかける。
「留守番頼む」
「任せてください」
グラスは車を発進させた。