10 助っ人は強いがアホ
グラスとタコ松は、神山組の事務所へと足を踏み入れた。
玄関先で軽く一礼を済ませ、案内されるままに組長室へ向かう。
扉の向こうにいたのは、神山組の組長。
分厚い机の向こうで腕を組んでいた、
「よぉ来たの」
その一言に、グラスが静かに頭を下げた。
「組長、青木開成の居場所を教えてください」
組長は軽く目を細める。
「教える前に、一つだけ言いたいことがある」
「なんでしょうか」
「アイツはな、王海会の残党だけでなく凄腕の殺し屋を雇って身を固めている」
その言葉にタコ松の顔が引きつる。
グラスは平然と応じた。
「そんなの、敵じゃありませんよ」
組長は肩をすくめるように言う。
「残虐王クラスが、何人もいるって話だ」
グラスの目がわずかに鋭くなった。
「青木開成はなぜ、そんな殺し屋を雇えるんですか?」
組長は深く息を吐いて、煙草を灰皿に押しつけた。
「あいつは王海会の中で金庫番をやっていた。組織が壊滅する前に、裏金をごっそり持ち逃げしたって話だ。その金を使ってるんだろうよ」
「……それで、居場所は?」
組長はポケットからメモを取り出し、机に滑らせる。
「〇〇倉庫だ。郊外にある、今は使われてねぇ古い施設だ」
「ありがとうございます」
グラスはそれだけ告げると、無言で立ち上がる。
タコ松もそれに続いた。
部屋を出た2人は、神山組の敷地から出て、軽自動車へ乗り込む。
エンジン音が静かに鳴り始めると、タコ松がつぶやいた。
「凄腕の殺し屋かぁ……俺らだけで大丈夫か?」
グラスは窓の外を見たまま答える。
「助っ人がいるから大丈夫だ」
「誰だよそれ」
グラスはにやりと笑った。
「お前もよく知ってるあいつだよ」
その言葉に、タコ松の目が見開かれる。
「まさか……あいつか!? あいつ強いけどよぉ、俺よりアホじゃん!」
「まぁ、大丈夫だろ」
軽自動車は静かに発進し、小屋へと帰る。