第3話 脱っ!!
昨日はあの後、
学校に戻ってギリギリ授業にも、間に合ったから良かったけど、あんなことになっちゃうなんて。
そう実は、私が先輩たちと学校を出ていくところを思いっきり目撃されてたらしくて、
クラスの女子、もれなく学校中の女子に目の敵みたいにされて、
先輩を使った友達作戦とかも失敗だよ。
「トホホ…ホ」
ため息をついて白目を剥いた絶望していると、ふと私の頭の中はお花畑になった。
でも先輩からお声かけてくれて、嬉しかったな、激辛好きとか、イメージとは少し違ったけど。
でも、入学早々こんなに近づける子、私以外いないでしょ、まあその所為でもあるんだけど、入学早々の腫れ者扱い。
めん子は分かってはいるはずが、それでも懲りずに、先輩かっこよかったなと、漠然と思いながらボーっとしていた。
その表情は上の空のまま、辛くも無い、普通な朝ごはんをいつも通り食べて。
学校に行く朝の準備をし始めた。
洗面台に行き洗顔、歯磨き、鏡の自分と睨めっこをし髪を櫛で整え、自分唯一のチャームポイントのツルツルの丸い髪にする。
そして自分の部屋に戻りクローゼットを開けると、昨日と同じセーラー制服に着替えて、胸元の赤いリボンを締める。
そしてめん子はコレから学校に行くという、最後におトイレに入った。
カチッ バサ、スルッと下に履いていた衣服を脱ぎ、少し冷えた座面にグッと耐えて座る。
寒さに少し体がブルっと震えるが、その後はじんわりと暖かくなってくる。
「でも先輩に色々教えてもらっちゃって
変なところはあったけど、何はともあれ、」
アレ?
言葉を繰り返して、確認する。
確かに今、私には暖かい感覚があったが、
こんな、お腹に違和感は無かった。
そんなこと考えている一瞬の隙に、急激に襲う、お尻だけ炙られてるみたいな
猛烈な灼熱。
そして突然、頭の中にフィードインしてくる、激痛のイメージ。
キーンコーンカーンコーン…
「よし校門を閉めるかなっと、ん?アレは!?」
通学道は静かになって、先生も校門を固く鍵をつけた、そして戻ろうとした屈強な体育顧問がいる門の前にいる、堅牢な守りに見えた校門も。
暴走族なりの大型バイクに乗った集団には、
圧倒的な数で勝てるはずがない。
その暴走族達は個々に武器を振り回し、
《《こうもん》》にスピードを上げて突っ込んで来る。
「ぎゃーーーー!!!」
家の壁を越えて、町中にも響くめん子の声、電線に止まっていたカラスたちも、飛び去る声。
「どうしたのめん子、便秘?」
そんなトイレからの声に、呑気に質問する母。
「こんなの昨日のアレに決まってる!」
痛みの正体が、痛んだ瞬間に理解できた、
でもそれは予感というか、感覚でわかる。
昨日のいつもと違うことは、あの激辛ラーメンを食べたこと、しか思いつかない。
私は部員全員と部長と激辛部活自体に確実な怒りを覚えた。
お腹とお尻を手で抑えためん子は、学校に着くと教室にもよらず、真っ直ぐに別塔のあの一室に向かう。
未だに、ヒリヒリとし続けているお尻を庇いながら?走って向かう、その姿は滑稽でそれを知ってる、めん子は顔を赤らめながら扉を勢いよく蹴破る。
「てめーら!」
大きな声で分かる、怒りの一喝したはずが、
「おおやっと来たか。」
と白髪の男の子が当然のように言う。
「脱ケツアナファイヤー、おめでとう。」
激辛気絶部、部員の全員から、次々におめでとうとただただ拍手される。
一人乗り込んできた、般若の顔をした女子を囲んで、ずいぶん穏やかな表情で拍手を続ける面々は。
「おめでとう」「おめでとう…」
「おめでとう」……と連呼する。
私はその場の空気が、一切と言って意味がわからず、今まで持っていた怒りの気が抜ける。
「はあ?」
いやおかしいのはこの人たちだけ!
こんな時、あの優しい先輩なら、またラーメン屋の時みたいな、優しい言葉をかけてくれるはず、「先輩!」
すると今の今まで静かに、両肘を机について寄り掛からせ合い、手を口元で組んだ、
生徒会長の姿を見せていたのに。
突如強い口調で声を上げた。
「みんな女子にそんな酷いことを言うもんじゃない!それにケツアナファイヤーは、」
辛子先輩!…なら分かってくれると…思ってまし、
「脱するものじゃ無い!最後に来る最高なご褒美だろ!」
途中まではまともだと思ってた、言葉がいつのまにか、意味不明なことになって、部長、張本人が近づいてくる。
「めん子ちゃんの言いたいこともわかるよ。
僕もそう思ってるから、それが一番きもちいんだよね。」
笑顔で肩を叩いて、下を見ているめん子に手の親指グッと立たせて見せる。
……そんな事をしたら、普通の女の子じゃ無くなる……そんな事をしたら,そんな事…
ブチッ
ツッコミ女子の宿命と言うべき葛藤と
頭の何かが切れる音がした。
めん子は俯いていた顔から、一度目が光ったかと思うと、固めていた拳で目の前の顔をぶん殴る。
先輩は拳の当たった、右頬から顔面が歪み、学校一のイケメンと言われる顔が台無しになる程の、力でパンチされる。
その時、言いかけていた言葉も一瞬だけスローモーションに聞こえて、そこで、止まる。
「そうなーんだーよーねーー〜ンボフッ」
「知らねーよーー!!」
拳を振り上げたまま、私は声を張り上げる。
友達もいない、女子から目の敵にされた、自分にコレから何が待ち受けるのか、そんなの知るか!、とでも言わんばかりにツッコミをした。
空を舞って落ちた先輩は、消えゆく意識の中、かろうじて上げた顔は、右頬から大きく腫れていて、鼻から血まで出ている。
そして、
「このパンチかなりスパイシーだね、
降りて来たぞ、君の香辛料の名前はクミンだ、ガクッ」
と最期にめん子の香辛料を、言い残して、完全に意識を刈り取られて倒れる。
「部、部長ーー!!」
倒れた部長に部員の全員は、忙しなく集まって呼吸の確認をしたり、AEDを探したりしていたが。
めん子はそれを尻目に、自分の意思で振り上げた拳を見つめて涙を流した。
その涙の中には、どんな思いが詰まっているのか一切分からない、だが、コレだけは分かる。
めん子の巻き込まれた激辛気絶部の物語は
始まったばかりであった。
短編って形で、一旦終わりにします。
気が向いたらまた投稿するので
気長に待っていてください。
ここまで激辛をメインに話を進めてきましたが、実は作者の私は、激辛が苦手です。
本格的なのは麻婆豆腐も食べれないですから。
では最後までご愛読、ありがとうございました。