初戦闘
「んーー……」
目覚めた建物を出て、ユリアンはしばらく歩いた。辺りにはまだ人影もなくようやく街道のようなものが見えてきた。
「やっと人に会えそうなところまで来た」
正直魔法で体を強化しているから疲れてはいないのだけれど流石に誰にも会えないのは精神的に辛いものがある。ユリアンはとりあえず道に沿って歩くことにした。
しばらくユリアンは道なりに進んで歩いていたが遠くに馬車が見えてきた。
「やった、やっと人に会えた!」
ようやくいろいろと今の現状について確認できる。ユリアンは心の中で喜びながらその馬車へと近づいていった。
「ん? なにか様子がおかしいな……」
近づいてみると馬車はどうやら魔物に囲まれていているようだった。ざっと数十体はいる、結構な数だ。馬車を守る護衛も必死に抵抗していたが相手のほうが数が多いため、押されていた。このままでは全滅してしまいそうな雰囲気だった。
「仕方ない、助けよう。せっかく情報を手に入れられそうなのに死なれたら困るしね」
人が魔物に襲われているのを見過ごすほど薄情でもない。ユリアンは一気に馬車の元へと駆け抜ける。
そのまま魔法を使ってまずは馬車の護衛と戦闘をしていた魔物達を焼き払った。紅蓮の炎に包まれた魔物達は断末魔をあげて絶命する。突然の出来事に馬車の護衛の人達は困惑した表情を浮かべていた。
「き、君は……」
「大丈夫ですか? あなた達が襲われているのが見えたもので」
「ああ、私は大丈夫だ。しかしこんなに簡単に魔物を倒してしまうなんて……」
「馬車の側から離れないでください、もし僕が内漏らした魔物がいたら対処をお願いします」
「待って、この数の魔物に一人で対処するつもりか!! いくら強くてもただでは済まないぞ!」
護衛の人が言うようにさっきユリアンが数体魔物を打ち倒したとはいえ、まだ魔物は大量にいた。魔物達は自分達の仲間を焼き払ったユリアンに一斉に敵意を向けていた。
「ああ、大丈夫です」
ユリアンは自信たっぷりに言い放つ。まるでそれがどうしたと言わんばかりに。
「これくらいの魔物の相手は何度もしてきたので」
ユリアンはそう言って魔物の群に駆け出す。魔物達は仲間を殺されたことでユリアンに標的を変えたようだった。
「うん、それなら好都合」
むしろそのほうがやりやすい。自分だけを狙ってくれるならこちらとしても戦いやすいというものだ。
「剣よ」
ユリアンが唱えると彼の両手に剣のようなものが形成される、マナを利用して作りあげたものだ。彼はそのまま魔物の群に突入し、その剣を振るった。
その様子はまるで嵐のようだった。魔物達は血飛沫と断末魔をあげながら次々と倒れていく、ユリアンを相手に出来る魔物はこの中にはいなかった。
「な、なんなんだ。彼女は……」
馬車を守っている護衛達はユリアンの強さに戦慄する。自分達はあの魔物の一体とやりあうだけでも苦労していたのにユリアンはその恐ろしい魔物をまるで掃除をするように斬り伏せていくのだ。
「よし、これで全部かな」
戦いは一瞬で終わった、立っていたのはすべてを斬り伏せたユリアン一人。魔物達は無惨に切り裂かれすべて死体になっていた。相当動いていたはずなのに彼は息を乱さず、悠然とその場に立っている。
「終わりましたよ」
魔物をすべて倒したユリアンは馬車のほうへ行き、護衛に声をかけた。
「あ、ああ……ありがとう。君のおかげで助かった」
護衛の人間はユリアンに戸惑いながらお礼を言う、彼はそんな護衛の様子を気にせず、会話を続けた。
「あの……すいません。僕、道に迷ってしまって……よかったら近くの街まで案内していただけないでしょうか。もちろんただとはいいません、今のように魔物に襲われたら僕が対処します。あいにく持ち合わせがないので護衛に協力することしか僕が出来ることはないのですけど」
「少し待っていてくれ。我らの主人と話しをしてみる」
そういって護衛は馬車の中にいる人物に話をしにいく、しばらくすると彼はこちらに戻ってきた。
「ぜひお願いしたいとのことです」
「よかった、ではよろしくお願いしますね」
これでなんとか情報を仕入れることが出来るようになったとユリアンは胸を撫で下ろした。
「時に君はとても強いのだな……あれだけの魔物をあっという間に倒してしまうなんて」
「いえ、大したことはないですよ。それでは街に辿りつくまでは同じ仕事をしますからよろしくお願いしますね」
さらっと言ってのけるユリアンに対して護衛は畏れを抱いた目線を向けた。