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追跡

「くっ……!?」


 ある男――ウィルは遠くからユリアと魔物の戦闘を観察していた。魔物はユリアに押されており、一方的にやられている状態だ。逆転することは敵わず、魔物は首を撥ねられあえなく絶命した。


「くそ!! 何故だ! なぜあいつが勝利するんだ!!」


 ウィルは忌々しそうに吐き捨てる。


「せっかくユリアを貶めるチャンスだったのに! これでは彼女の評価がまた上がってしまうじゃないか!」


 今回あの魔物を放ったのはウィルだ。理由はただ一つ、ユリアが魔物討伐で生徒達に死傷者が出れば生徒を守れなかった彼女の評価は確実に地に落ちて魔法学院にもいられなくなるからだ。そのために協力者の助けも得て生み出したあの魔物を生徒達に差し向けたのに。


「だというのにあの女はどうしてああもたやすくあの魔物を倒してしまう! これでは予定が狂ってしまうぞ!」


 ウィルの予想に反してユリアはあっさりと魔物を倒して生徒を救ってしまった、しかも負傷者を出さずに。


「これではあいつを倒す方法がなくなってしまう! お手上げじゃないか、ちくしょう!」


 悪態をつきながら自分の研究室に戻っていくウィル。彼は知らない、ユリアが天眼で彼が現場に来ていたことを把握していることを。



 あの魔物の一件があった後、ユリアはすぐに学院に戻った。アリアとゲルハルトに事の次第を報告してその日は生徒達もすぐに帰らせた。


「ユリア」


 レイクロードの屋敷に戻ってアリアと二人で食事をしていると彼女が声をかけてきた。


「なに、アリア?」

「今日の魔物討伐の件は本当にお疲れ様。あなたのおかげで生徒に負傷者を出さずに済んだわ」

「気にすることはないよ。僕は先生としてやるべきことをやっただけさ。それに今回の件の犯人はもう目星がついてる」

「えっ? それは本当なの?」

「うん」


 ユリアはアリアの言葉に頷いて結論を話し始めた。


「今回の魔物の一件、犯人はウィルだよ」


 ユリアの言葉を聞いた時、アリアは驚いた表情をした。


「嘘でしょう!? それは確証のあることなの?」

「間違いないよ、最後に学院に戻る時に最初はなかった彼のマナを天眼で確認したから。彼自体は隠れていたつもりみたいだけどね。僕の天眼は人間には色がついて見えるのは知ってるでしょ」

「ええ、それはそうだけど。でも信じられないわ、いくらあなたに恨みがあるからってそんなことに手を染めるなんて……」

「僕も彼のマナを確認した時は驚いたよ。でも間違いない、あれは彼のものだった」

「……だとしたら彼を止めないと」

「うん、その話し合いをちょっとしたいんだよ」

「まずあなたが天眼で見たというだけでは彼を捉えるのには根拠が弱いわ。そもそもそれはあなたに備わった反則じみた力だしね」

「まあね。だから誰の目にも彼が犯人だと分かるような証拠がいるってことだよね」

「ええ。でもそう簡単に尻尾を見せるとも思わないし……」

「……今、彼はどんな行動をしているのかな」

「ええっと……前にも言った通りよ。研究室に籠もりがちで授業の時以外彼を見かけることはなくなったわ。あ、ただ」

「ただ?」

「何度か夜に出かけているのを見かけた人がいるの。追いかけたりはしなかったからどこに行くのかまでは分からなかったそうよ」

「……」


 ユリアはアリアからもたらされた情報について考えこむ。魔物の合成なんて真似が出来るのはユリアの中では魔王の配下の一人であるある魔物しか出来なかった。難しい技術のため、あの魔物は彼が放ったものなのだろうけれどウィル一人であれを産みだしたとは考えにくい。

(奴自体が関わっている可能性もあるね)


「アリア、今回の魔物について僕が話したことを覚えてる?」

「……ええ」


 ユリアの言葉を聞いてアリアの表情が重くなる。


「あなたが言ったことが本当ならあの魔物は魔王の配下であったあいつが持っていた技術を用いて生み出されたことになるわ。あいつ自体も消息不明だし、関わっていてもおかしくないということになる」

「うん、そしてもし関わっていたらウィルは魔物と手を結んだことにもなる。さっき彼が夜に誰かに会いに行ったという話もあいつに会いに行っているかも知れない」

「じゃあ追うつもりなの?」

「うん。しばらくウィルに張り付いて彼を追う。大丈夫、無茶はしないから」

「……分かったわ。止めても聞かないでしょうし。なにか助けが必要なことがあったら私に言って頂戴」

「ありがとう」


(魔王配下の残党が関わっているなら、ここで潰してやる)


 決意を新たにユリアはウィルを捕まえるために行動を開始した。



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