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実践演習④

「皆、お疲れ様」


 シルヴィは自分と一緒に行動していた生徒達に声をかける。あらかた魔物を討伐し終えたのか周囲に魔物の気配は感じられなかった。


「もう、ここらへんの魔物の討伐は終わったみたいね。少し休んだら次の魔物がいそうな場所に向かうわよ」


 シルヴィの言葉に皆が頷き、休息を取り始める。シルヴィもその場に座りこんだ。


「初めてにしてはうまくやっているほうなのかな? 今のところ誰も傷ついてないし」


 少し嬉しそうにシルヴィは呟く。この魔物討伐を始めてから今のところ誰も酷い怪我を負ったりはしていない。魔物を一カ所におびき出して魔法で仕留める作戦が功を奏していた。


「シルヴィ」


 組んでいた生徒の一人が声をかけてくる。


「なにかしら?」

「あの、君のおかげで魔物とうまく戦うことが出来たよ。ありがとう」


 お礼を言われて少し固まってしまったシルヴィだがすぐに気を取り直して相手に微笑む。


「ありがとう。お礼はありがたく受け取っておくわ」


 シルヴィの言葉に満足したのかその生徒は休憩に戻っていった。


「……ふふ、頑張って感謝されるってやっぱり悪くないわね」


 くすりと微笑んでシルヴィも再び休息に戻ろうとしたが、悲鳴がその場に響き渡る。


「何!?」


 その悲鳴が聞こえた方向へシルヴィは駆け出す。その場所では見たこともない魔物に生徒が襲われていた。


(なに!? あの魔物!? あんなの見たことがない!!)


 その魔物は狼の体に大きな翼を持っていた。普通の生き物ならありえないような姿をしている。その魔物が今休憩していた生徒達を襲い、喰らおうとしてたのだ。


「!? させない!」


 咄嗟にシルヴィは魔法を発動。魔物の横で爆発を引き起こして吹き飛ばす。魔法を受けた魔物はそのまま吹き飛んでいった。


「大丈夫!?」

「あ、ああ……助かったよ……」


 幸いなことに襲われた生徒は傷ついてはいないようだ。もう少し遅かったら危なかっただろう。


(いったい、あの魔物はなんなの? こんなのがいるなんて事前の情報にはなかったわよ)


 ユリアがわざわざ魔物の情報を隠すとは思えない。あの人は絶対にこんな重要な情報を隠したりはしないからだ。


(だとしたら不測の事態ってことだけど……こんなことって……)


 こんな魔物が自分達が魔物討伐の相当をしている時に出てくるなんて本当に運がない。だけどそんなことも言ってられない状況だ。


「ねえ」


 シルヴィは助けた生徒に呼びかける。


「あたしが時間を稼ぐ。皆をその間につれて逃げて。その後はユリア先生を呼んで来て」

「シルヴィ、無茶だ!」

「無茶でもしないと全滅するわよ!」


 シルヴィが叫ぶと同時に謎の魔物が起き上がる。シルヴィの魔法は相手を吹き飛ばしたものの大きなダメージを与えてはいない。むしろ怪物の戦意をかき立ててしまったようだ。


(やっぱりか、あたしじゃ力不足だ)


 こいつを倒すにはユリア先生の力がいる。そのためにもこの生徒には早く先生の元へと向かってもらわないと。


「あの魔物が立ち上がってるのを見て分かったでしょ。私達じゃあの魔物を倒せない、おそらくあれを今の時点で倒せるのはユリア先生だけ。だからあたしの指示に従って、お願い!」 


 シルヴィの剣幕に押されたのか助けられた生徒はそれ以上なにも言わずその場を去った。


「さてと」


 シルヴィは不気味な怪物と対峙する。正直逃げ出したい気持ちがいっぱいだけれど。


「皆が逃げる時間くらいは稼がないとね」


 怪物はシルヴィが自分を阻む気なのが分かったのか狙いを彼女に定めた。


「よし、そうだ。お前の相手はこのあたしなんだからしっかり狙いなよ」

 

 挑発するような言葉を魔物に投げかけるシルヴィ。ただ内心は酷く怯えていた。


(参ったな、思ってたより怖いや)


 死ぬということがシルヴィの頭の中をよぎる。けれど自分がここで逃げたら皆がこの魔物に襲われることになるのだ。だから絶対に退くわけにはいかない。シルヴィは覚悟を決めて悍ましい魔物と向き合う。 魔物が雄叫びをあげ、シルヴィに襲いかかってくる。もの凄い早さだった。


「……!?」


 対処出来ない、頭の中で本能的に感じ取ってしまった。死が自分の目前に迫ってきている。シルヴィは恐怖で目を閉じてしまった。


「まったく。自分の命を投げ出すようなことはしてはいけませんよ」

「えっ?」


 声にシルヴィは驚く。次の瞬間、凄まじい轟音が鳴り響き魔物が吹き飛ばされていった。


「大丈夫ですか、シルヴィさん?」

「せ、先生!?」


 シルヴィの目の前にはユリアが立っていた。シルヴィのほうを見て穏やかに微笑んでいる。


「な、なんでこんなに早くここに……!?」

「まあちょっとした魔法を使ったんです。それよりも」


 ユリアはシルヴィの元へと歩みよる。


「怪我は……ないみたいですね。本当によかった」


 ほっとしたように息を吐いたユリア、彼女はシルヴィが無事なのを確認すると魔物と対峙する。


「まったく……いきなり現れて私の生徒達を傷つけようとするなんて。絶対に許さない」


 凄まじい殺気にシルヴィまで怯んでしまう。ユリアはかなり怒っていた。


「シルヴィさん、離れていてください。巻き込まれないようにね」

「は、はい」


 シルヴィは返事をするとそそくさとその場を後にする。彼女が去ったのを見届けるとユリアは魔物を睨みつけた。


「さて、これでこの場に残っているのは僕とお前だけになったね」


 ユリアはにやりと笑うと地を蹴った。一瞬で魔物との距離を詰めると魔物に拳を叩き込む。魔法で強化された拳は魔物を吹き飛ばしてしまった。


「さっさと倒そう。皆を無事に連れて帰るのが僕の仕事だから」


 ユリアは攻撃の手を緩めない。魔物に近づくと今度は顔に蹴りをいれる。再び魔物の体は地面を転がっていった。

 一方的にやられていることに腹を立てたのか魔物が雄叫びをあげて襲いかかってくる。鋭い牙が閃き、ユリアの肉体をかみ砕こうと迫った。


「でかい口をあけて下品だよ」


 しかしユリアは動じない。彼女は迫りくる牙をかわすとカウンターで魔法を叩き込んでいく。魔物はそれでも怯まずユリアに攻撃を仕掛けてきた。


(しぶといな、異様なまでに体力がある。やっぱりこれは……)


 戦いながらユリアは思考を巡らせる。大本になっているのはグレイウルだろうか、大幅に巨大化させられているけれど。それに飛行能力のある魔物を混ぜ込んだみたいだ。


 やっぱりこの魔物は……。


(おそらくあいつが生み出したんだろう。魔王の配下でも魔物を研究していたあいつ。だけど今は目の前の魔物を倒すのが先決だ)


 思考を切り替えて再び戦闘へと集中する。


「凍れ」


 周囲の気温が一気に下がり、魔物の巨体が一気に氷漬けにされる。

しかし魔物のほうもこれだけでは止まらない。今度は周囲に炎が生まれ、氷が溶けていく。氷の呪縛から解放された魔物は再びユリアへ向けて突撃を仕掛けてきた。


「芸のない攻撃が通じるとでも」


 光り輝く剣のようなものがユリアの周りに生成される。マナを凝縮させて生み出したものだ。それをそのまま魔物へ向かって放つ。

 剣は魔物へと突き刺さり、傷を負わせていく。痛みからか魔物は苦しそうな雄叫びをあげた。


「まだまだ。爆ぜろ」


 ユリアの言葉と同時に魔物に突き刺さったマナの剣が爆発する。爆破によって魔物の肉は抉られ、血が飛び散った。

 それでも魔物は止まらない。怒り狂った魔物はユリアへと魔法で生み出した火球を放ってきた。


「無駄だよ」


 放たれた火球はユリアへと届くことなく、雲散霧消する。魔物は打つ手がなくなったのか最後の力でユリアに突撃を開始した。


「最後の攻撃はやけくそか。まあ、いいや。これで最後だよ」


 突撃してくる魔物の足下が爆発する。そうやって体勢を崩した魔物がその場へ倒れ込んだ。


「剣よ」


 かけ声とともにユリアの手にはマナで生成された巨大な剣が握られる。彼女は地を蹴って魔物へと接近し、魔物の首をその剣で撥ねた。

断末魔を上げる間もなく、魔物は絶命した。


「よし、これで終わり」


 ユリアは生成した剣を解除し、周囲を確認する。これ以上魔物は確認できなかった。


「とりあえずはこれで終わりかな」


 ぽつりと呟いてユリアはその場を後にする。


(まあ今回の犯人が誰かは検討がついた。学院に戻ったらアリアに今後の対処を相談しよう)

 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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