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実践演習②

「というわけで皆さんには魔物討伐をしてもらうことになりました」

 

 ゲルハルトから報告を受けた後、ユリアは生徒達に魔物討伐を行うことになったと伝えていた。


「皆さんの中にはこの学院を卒業した後、魔法士になる人がほとんどだと思います。魔物の討伐もその仕事の一つとしてこなさなければならないこともあるでしょう。いい機会だと思い、引き受けることにしました」


 ユリアの発表に対する反応は様々だった。やる気を見せる生徒、怯えている生徒もいる。


(始めて本当の魔物と戦うんだ、怖いと思うものもいて当然だ。ここは)


「皆さん」


 ざわつきだした生徒達にユリアは呼びかける、皆の注目がユリアに集まった。


「大丈夫です、皆さんのことは僕が守ります。あなた達のことは傷つけさせない」


 ユリアの言葉で怯えていた生徒も少し安心したのか表情がやわらかくなる。


(これで少しは不安を和らげることが出来たかな)


 ふとあのリーシャ、シルヴィ、アダムの3人が目に入った。3人は動じることなくユリアの話を聞いており、慌てた様子もない。


(ふふ、君達3人は存分に力を発揮してくれそうだね)


 ユリアは心の中で3人への期待を膨らませた。



「ついにこの時が来たって感じだね~」


 ユリアの講義を終えた後、リーシャ、シルヴィ、アダムの3人は一緒に食堂で昼食をとっていた。3人はあの訓練の後、一緒に行動することも多くなり、いまではこうして食事も一緒にとるようになっている。


「ええ。先生の授業を受けた成果を見せる時です」

「魔物って聞いてもあの人形に比べたら全然弱そうなんだけれどね」

「シルヴィ、油断は禁物だ。想定外のことが実戦では起こる。先生が生徒である俺達を見捨てることはないだろうが万能ではないんだから期待はしないほうがいい」


 もっともな指摘をしたアダムにシルヴィは頬を膨らませて抗議する。

「そんなことは分かってるよ~。アダムくんは本当に固いなあ、いちいち言われなくてもそれくらいあたしも肝に銘じてるよ」

「ならいい」


 最初はシルヴィにもう少し口うるさかったアダムだが彼女と接しているうちにその性格に慣れてきたのか必要以上には追求しなくなった。

「皆さん、頑張りましょう。先生の授業で学んだことを今こそ生かす時ですから」


 リーシャの言葉にシルヴィとアダムは強く頷いた。



「……」


 そんな3人を影から見ている人物が一人いた。目の下には酷い隈があり、全身が痩せている男――ウィルだ。


「なんだ、あの森林地区の魔物討伐はあいつらが受けることになったのか」


 あのユリアが教えている生徒達に魔物討伐をさせるとはゲルハルトも思い切ったことをするなとウィルは思った。


「ちっ……! どいつもこいつもあの女のことばかり評価しやがる……!」


 ウィルは歯ぎしりして食堂を去った。研究室に戻る間にもユリアとその生徒達が魔物討伐をすることが話題になっていた。


「ねえ、聞いた? ユリア先生の教えてる生徒達が魔物討伐に行くんだって」

「あの先生の授業受けてる生徒って元から優秀な人達だったけれどユリア先生が教え始めてからさらに強くなったみたい」

「俺もあのクラスに入りたいなあ」

「ていうかユリア先生、美人で可愛いよな。おまけに教えるのも上手いとかどれだけの逸材だよ」


 などという会話が道行く生徒達から聞こえてくるのだ。


(……くそっ!)


 苛立ちながらウィルは自分の研究室を目指す。研究室に向かっている途中で生徒の何人かは何事かと思ったのかこちらを見ていたがウィルは気にしなかった。

 

「くそ、どいつもこいつもユリア、ユリア、ユリアと!」


 怒声を上げながら研究室の中を歩き回る。頭を掻きむしりながら

彼は叫んだ。


「ええい、あの忌々しい女の評判を地に落とすことが出来る方法はなにかないのか!」

「あるじゃん」


 暗がりから聞こえる声、ウィルは声の聞こえたほうへと視線を向ける。顔は暗くて見えないがそこには誰かがいた。


「なに? なにかいい方法でもあるのか?」

「君、冷静さを失ってない? それこそ今こそ絶好の機会じゃないかな?」

「なに?」

「だって魔物討伐は彼女――ユリアの責任の元で行われるんでしょう? ならそこで生徒になにかあったら彼女は終わりだよ」

「あ……」


 指摘を受けたウィルは歪んだ笑みを浮かべる。


「そうか、魔物討伐で彼女の責任になるようなことが起きればいいんだ」


 うわごとのように呟き、ウィルは暗がりに目を向ける。誰かがいるその奥からはうなり声が聞こえてきた。


「ようやく気がついたね。ちょうどいいじゃない、君の研究成果も試せるんだし一石二鳥さ」

「そうだな、お前の言うとおりだ。感謝するよ。待っていろよ、ユリア・レイクロード、お前を必ず失脚させてやる。そして僕が栄光を取り戻すんだ!」


 不気味な笑いとともにウィルは高らかに宣言する。暗がりから冷ややかな目を向けられていることにも気づかずに。


 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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