実践演習①
「ゲルハルト校長、今日僕達が呼ばれた理由はなんでしょうか?」
ユリアは現在、ゲルハルトの部屋――校長室にやって来ていた。隣にはアリアもいる。2人ともゲルハルトに呼び出しを受けたため一緒に来たのだ。
「いや、2人とも忙しい中すまないね。少し話をしたいことが出来てしまってな」
ゲルハルトは侍女に紅茶を出させ、飲み始める。
「君達も飲み給え、美味いぞ。口に合うかは分からないが」
「ありがとうございます」
ユリアとアリアはお礼を言って出された紅茶を飲む。紅茶はゲルハルトの言うとおり、確かに美味しかった。
「それでゲルハルト様、今日私達を呼んだ理由をお聞かせ願えませんか?」
アリアが単刀直入に切り出す。
「君は本当に無駄話を嫌うな。アリアくん」
「すいません、ですが呼び出された理由が分からないのも居心地が悪いので」
「やれやれ、ゆっくりすることも覚えないと潰れてしまうぞ。まあ、よい。君達に頼みたいことがある」
「頼みたいこと?」
「王都の近くに大きな森林地帯があるのは知っているね?」
「はい」
「以前から魔物が生息していて危険のある地域だったがここに来て魔物の数が増えていてね。ユリアくんと君達の生徒に駆除を頼みたい。アリアくんにはそのための準備をお願いしたいのだ」
「僕の生徒達にですか?」
「そうだ。君の授業を受けているもの達は将来的に魔法士としてこのミストラル王国を守る存在になる者もいる。その中には魔物の討伐も仕事に入っているのだ。いい機会だから彼らに経験を積ませたいと思ってね」
「なるほど」
ユリアはゲルハルトの話に納得していた。確かに今から魔物討伐の経験を積むのは悪いことではないと思った。アリアも黙ってはいるがゲルハルトの話に頷いている。
「ユリアはどう思う? 私はゲルハルト校長の提案はいいことだと思うわ」
「僕もそう思う。生徒達も鍛えたから魔物と十分闘えると思うしね」
「では決まりかな?」
ゲルハルトの問いかけに2人は頷く。
「ありがとう、魔物の討伐へのユリアくんの同行に同意がとれれば私としても安心してこの話を進められるよ」
「はい、もちろんです。自分が教えている生徒ですから断る理由がありませんよ」
ユリアの返答にゲルハルトは満足そうだった。
「では魔物討伐はユリアくんが教えている生徒達で行い、君が同行することにするということで話をしておこう。アリアくん、この件を進めるために調整をお願いする」
「分かりました、ゲルハルト様。では私はこれで失礼します、執務が残っておりますので」
「分かった、忙しい中すまなかったな」
アリアは事務的にそう言うと席を立ち、部屋を出て行った。ユリアもそれに続いて出て行こうとする。
「待ちたまえ、ユリアくん」
ゲルハルトに呼び止められてしまった。彼はじっとこちらを見つめている、なにかを見極めようとしているように。
「なんでしょうか?」
「君は一体何者なのかね? 試験では若手の期待の星と言われていたウィルをあっさりと打ち負かした。君の授業を何度か見たが魔法のレベルもとてもその年齢で到達出来るものとは思えないのだよ」
ゲルハルトの視線を受けながらもユリアは不敵に微笑んで答えた。
「ただの一介の魔法士です、それ以上でもそれ以下でもありません」
それだけ答えるとユリアはゲルハルトに一礼し、部屋を出ていった。




