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勝利

「さて」


 ウィルのとの会話の後、ユリアは自分の授業を行っていた。今彼女の前にいるのはリーシャ、アダム、シルヴィの3人だ。


「今日も皆さんにはあの人形と戦ってもらいます」


 あの授業から彼らはまだあの人形に勝ててはいなかった。しかし3人とも諦めず勝つために試行錯誤している。


「あー! 今日こそは絶対に勝ちたい!」


 シルヴィがやる気を見せる。いい加減に負けてばかりで鬱屈が溜まっているのだろう。


「そうですね、今日は絶対に勝ちたいです」


 普段シルヴィの押さえに回っているリーシャも今はシルヴィの意見に同意する。


(おや、これだけ言うということは勝つ算段がついたのかな)


「2人共、今日は勝てると思えるなにかがあるようですね」


 ユリアの言葉に2人は不敵に笑う。アダムは黙ったままだ、しかしその目には勝ちに行くという意思が宿っていた。


「まあね、それは見てのお楽しみよ」

「先生は楽しみにしておいてください」

「ふふ、期待していますよ。君達がどうやってあの人形に勝つかじっくり見させてもらいます」


 ユリアが人形を召喚して3人と人形から距離をとる。リーシャ、シルヴィ、アダムも戦闘態勢に入った。


「それでははじめ!」


 ユリアの号令とともに3人が仕掛ける。人形のほうはその場から動かず3人をじっと観察していた。


「さて、どう出てくるかな」


 どうやって3人があの人形を倒すかを楽しみにしながらユリアは演習を観察する。

 まず仕掛けたのはアダムだった。


「いくぞ」


 魔法で槍を生成、同時に肉体を強化し一気に人形へと攻めかかる、人形は持っている剣を振り下ろしてアダムを迎撃しようとした。


「させません」


 人形の剣を持った腕が凍りつく。やったのはリーシャだ、振り下ろされようとしていた腕の動きが止まる。

 

「隙が出来たな!」


 動きを止めた人形の隙を逃さず、アダムが槍で強烈な突きを放つ。しかし人形もこの程度ではものともしない、放たれた槍を空いた腕で受け止める。


「今だ、シルヴィ!」

「オッケー!」


 シルヴィが一気にかけ出す。彼女の腕に握られていたのは一本の剣だ。


「……!? へえ……アダムくんから教えてもらったのかな」


 魔法はイメージの世界だ。だから同じ現象を起こすとしてもその結果は人によって違うし、同じ現象が起きたとしても人によっても威力や生成物の強度が違ったりする。そこで個人個人に差が出るのだ。


「人の魔法を真似するのってなかなか出来ないことなんだけど……」


 シルヴィはこの演習の間に曲がりなりにもアダムの魔法を使えるようになった。見よう見まねだから本家より劣化はしているだろうけれど。


「ふふ、素晴らしいね」


 自然と笑みが浮かんでくる。本当に優秀な生徒達が揃っているなとユリアは思った。


「うりゃああああああああああああああああああ!」


 人形に接近したシルヴィが槍を掴んでいる腕目がけて剣を振り下ろす。凍った人形の腕が砕け散るが同時にシルヴィの剣も砕けて虚空に消えた。


「今だよ! 2人とも!」


 シルヴィが叫ぶ、腕を切りおとされたことで大きく隙が出来た人形にアダムが再び突きを放つ。放たれた槍は人形を見事に貫いた。


「こいつ……!」


 それでも人形は倒れない。体勢を立て直した人形はアダム目がけて蹴りを放とうとする。

 しかし、人形の足下がいつの間にか凍らされていた。そのせいで人形は身動きがとれない。


「目の前に気をとられすぎですよ」


 リーシャの静かな声が響く。彼女の背後には炎の巨人。


「これで止めです」


 炎の巨人が人形をわしづかみにし、燃え上がらせる。人形は巨人の手の中でしばらくもがいていたがやがて動かなくなった。


「うん、見事」


 綺麗な勝利を修めた3人にユリアは心からの賛辞を送った。



「皆、お疲れ様」


 演習を終えた3人にユリアはねぎらいの言葉をかける。


「どう? 先生、ちゃんと勝てたわよ」


 シルヴィが得意げに胸を張る。勝てたことが余程嬉しかったらしい。

「うん、見事な勝利でしたね。シルヴィさんはよくこの短期間で物質の生成を覚えました」

「アダムくんに相談したの。でもまだ駄目ね、彼みたいにきちんとした形にはならないわ」

「それでも形にはしたのだから立派ですよ。一朝一夕に習得できるものでもありませんから」


 ユリアの言葉にシルヴィは嬉しそうに笑顔を浮かべる。


「リーシャさんも炎以外の魔法を扱えるようになったんだね」

「ええ。今回の作戦では相手の動きを止める役割をすることが大事でしたから。だから氷を生み出せるように練習したんです」


 リーシャも自分の努力が結果を実らせたおかげか満足げだ。普段は落ちついているが今日は喜びが全面に出ている。


「アダムくんはよくあの人形と渡り合うまで近接戦闘の腕を上げたました」

「あの人形自体が超えるべきいい目標になってくれました。自分の技術を大きく成長させることが出来たと思うので先生には感謝しています」

「それならよかったです。私もこの授業をやった甲斐がありました」


(この子達なら……将来的に魔王の配下だったもの達とも戦えるようになるかもしれないね)


 もしかしたら僕と同じくらいになれるかもね。

 ユリアは内心で生徒達の成長に期待しながら授業を終えた。



 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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