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不穏②

アリアとの朝食を終えてユリアは魔法学院にやって来ていた。


「あれは……?」


 ユリアの視線の先にいたのは今朝のアリアとの食事でも話題に上がったウィルだった。前に見た時よりも少し痩せていて目の下には酷い隈が出来ていた。


「……貴様……」


 ウィルがこちらに気づいて視線を向けてくる。明らかに敵意の感情が込められていた。


「こんにちは」


 直接的に揉めるわけにもいかないのでユリアは形式的に挨拶をする。一応は魔法学院の同僚でもあるのだ、今朝の話もあるし揉めごとは避けたい。


「ふん、ここに来てから貴様は随分と楽しそうだな」

「ええ、おかげ様で。ここの生徒は優秀ですし皆向上心がありますから教え甲斐があります。楽しいですよ、見ていて成長しているのが分かりますし」

「……っ!」


 ユリアの言葉を聞いてウィルは忌々しげと言いたげな表情になる。ああ、これはなにを言っても駄目かもしれないとユリアは思った。


「……そうか、それは良かった。この魔法学院での生活を楽しむといい」

「はい、ありがとうございます」


 心にも思っていない言葉を吐いてウィルは去っていく。もう少し絡まれるかと思ったけれど思っていたほどではなかった。


「……確かにあまりいい雰囲気じゃないね」


 自分が彼から恨まれているのを差し引いても今の彼はなにか異様な空気を纏っていた。周りが懸念するのも分かる。


(魔法士にとって魔法の研究に取り組むこと自体は悪いことではないんだけれど)


 アリアが懸念していたようによくないことが起きないといいななどと思いながらユリアはその場を後にした。



「ユリア・レイクロード……!」


 あの日、自分を一切の容赦なく打ち負かした相手の名を口にしながらウィルは廊下を歩いている。


「本当に忌々しい奴だ。この学院に来てから一ヶ月も経っていないのに楽しそうにしやがって」


 吐き捨てるようにウィルは呟く。彼女が来てから1ヶ月、ユリアに対する評価は高い。彼女が担当している生徒達は魔法の腕があがり、他の生徒達よりも格段に魔法の扱いがうまくなっているという。


「それに比べて僕は……」


 ウィルは唇を噛みしめる。彼女がやって来る前までは皆口々にウィルの才能を称えたものだ。それがいまや皆ユリアの話題ばかりになっている。研究室にたどり着いたウィルは思い切り机を叩いた。


「くそ! お前のせいで今の僕の評価は地に落ちているんだぞ!」


 誰もいない研究室にウィルの怨嗟の籠もった怒声がこだまする。


「それなのにお前は楽しそうに過ごしてやがる! 腹立たしい!」


 ユリアに負けて以来、ウィルの評価は落ちている。若手の中で優秀という彼は得ていた立場や評価は今やユリアのものとなっていた。


「おや、協力者。荒れているねえ」


 研究室の暗がりからかけられた声、相手の姿は見えない。


「貴様か、お前の計画は本当に上手くいくんだろうな」

「うん、君がよくやってくれているからねえ。このまま行けば近いうちに決行できると思うよ」

「そうか」


 ウィルは口の端をつり上げて笑う。それは歪んだ笑みだった。


「見ていろ、ユリア・レイクロード……! 貴様に思い知らせてやる……! 選ばれた才能の持ち主はこの僕であることをな!」

 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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