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ユリア先生の実践授業④

 リーシャは戦闘体制をとりながらアダムに語りかける。


「アダムさん」

「なんだ?」

「あの人形にどうやって戦えばいいと思いますか?」

「……今のところはなにも思い浮かばないな。もう少しやり合ってみる必要がある」

「なら定石通りに行ってみましょう。私が相手の気を引きますのであなたはその間に一撃を叩きこんでください」

「分かった。よろしく頼む」


 リーシャは頷くと炎を槍のような形にして生成し、人形相手に放つ。しかし放たれた炎の槍は相手を貫くことはない。人形は炎の槍を素早くかわすと距離を詰めてきた。


「ぐっ……やっぱり早い!」


 距離を詰められ焦るリーシャ。慌てて次の手を打とうとするも間に合わない。


「俺もいるのを忘れてもらっては困るな」


 人形が弾き飛ばされる。アダムの攻撃が命中したのだ。


「あ、ありがとうございます。助かりました」

「いや気にしないでいい。それよりも相手に集中しろ」


 アダムが人形が吹き飛んでいった方向に険しい視線を向ける。アダムに吹き飛ばされた人形は先程の攻撃のダメージをあまり感じさせずに立ち上がった。


「まったくダメージなしみたいですね」

「少々傷つくな、この結果は」


 アダムは少し落ち込んだように呟くが彼とてこの状態は予想通りだったのだろう。本心からそう言っているようには見えない。


「ねえ、あたしのこと忘れてない?」


 不満そうな声、最初に吹き飛ばされたシルヴィだ。


「シルヴィさん」

「あたしも最初は不意打ちくらったけどさ、もうあんな失敗はしないよ。それで見た感じ作戦はリーシャが惹きつけてアダムくんが攻撃をいれていく感じかな?」

「はい、おそらく小手先のテクニックは通じませんから。基本に忠実にいこうと二人で話ました」

「オッケー。ならあたしも囮をやるよ。アダムくん、ちゃんとキメてきてね」

「分かった」

「よーし! それじゃ行こうか!」


 先程吹き飛ばされたとは思えないくらい元気なシルヴィは楽しそうに敵と対峙する。


「爆ぜろ!」


 シルヴィの言葉とともに人形の周りで爆発が起きる。その爆発で人形が吹き飛ばされた、がすぐに人形も体勢を立て直す。


(きちんと対象と威力を考えて魔法を使ってる。いいね)


 がさつなように見えてシルヴィは魔法の行使をしっかり敵となる人形の周囲に絞っていた。きちんと自分の魔法をコントロールしている。

(リーシャさんはこの前利用していた炎の巨人を召喚、アダムくんは……)


 彼は魔法によって槍を作ってリーシャとシルヴィの攻撃で隙が出来るのを待っている。


(近接タイプの魔法士か。だとしたら魔法を肉体の強化に使っているね。後、武器の生成か)


 魔法は炎を生み出したりする他にも身体を強化することも出来る

これは人間にもマナが宿っていてそれに干渉することによって可能になる。魔法士の中にはそれを利用して近接戦闘を行うものも少なくない。また近接戦を行う魔法士は魔法で自分の使いやすい武器を作り出したりもする。


(見せてもらおうかな、君の近接戦闘の実力)


 ユリアは心の中で楽しみにしながらアダムが動くのを待つ。


「いい加減倒れてくれてもいいのよ、人形さん!」


 シルヴィが苛立って声をあげ、魔法を連続で放つ。爆発が起きてそれを人形が回避したところに炎の槍が降り注いだ。

 人形はそれをすべて叩き落とす。しかし間髪いれずにリーシャが作った炎の巨人による炎剣が人形に振り下ろされる。人形はそれをかわすがそこに隙が生まれた。


「今です!」


 リーシャの声とともにアダムが駆け出す。彼は人形に近づくと手に持っていた槍を素早い速度で突き出した。


(これならどうだ!)


 が、人形はアダムの突き出した槍を受け止めてしまう。


「なに!?」


 アダムの顔に驚愕の表情が浮かぶ。人形はそのまま槍ごと彼を地面に叩きつけると衝撃で身動きがとれなくなった彼に蹴りをいれた。アダムはそれきり動かなくなる。


「うげ……マジか……」

「アダムさん!」


 シルヴィは呻くように声をあげ、リーシャはアダムに呼びかける。

1人を倒した人形は2人へ標的を定めていた。


「どうする、リーシャちゃん、あいつこっちに攻撃目標を定めたみたいだけれど」

「……私の巨人とあなたの火力で一気に勝負をつけましょう。お互い近接戦闘の技術はありませんからこの状況では戦いが長引くと不利です」

 

 即座に判断を下すリーシャ。二人ともアダムのような格闘をこなせる魔法士ではない。この状況で近接戦闘の技術がある人形を懐に入れてしまってはまず勝ち目はないだろう。


(そのためにも一撃で決める!)


 リーシャの炎の巨人が炎を広範囲に吐き、相手を逃げられないようにする。人形は上空に飛び上がり炎を回避。


「もらい!」


 そこにシルヴィが生み出した爆発が襲いかかる。凄まじい音が鳴り響いた。


「どうかな!? 結構効いたとは思うんだけど」


 油断なく爆発が起きた場所を睨む2人。爆発による煙が晴れていく。人形は自分の周囲に土の壁のようなものを作り爆発を防いでいた。


「!? 魔法まで使えるの!?」

「……っ!」


 驚く二人に人形は反撃を開始する。凄まじい速度でシルヴィに接近すると彼女の鳩尾に一撃を叩き込んで意識を狩る。シルヴィはその場に膝をついて意識を失った。


「くっ……!!」


 炎の巨人で反撃するリーシャ、しかしその攻撃は相手には当たらない。人形は攻撃をかいくぐり、彼女の近くまで接近する。リーシャは反撃しようとするがそれよりも人形の攻撃が放たれるのが早かった。


「あっ……」 


 放たれた攻撃は容赦なくリーシャの意識を奪った。

 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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