試験②
「これで私のことを認めていただけましたか」
ユリアは模擬戦を見ていた魔法学院の教員全員に問いかける。誰もが言葉を発さず、静かにこの状況を見ていた。
(馬鹿な)
ゲルハルトは内心驚いていた。ウィルは決して弱い魔法士ではない、若い魔法士なのに王国の魔法士の頂点に立つ者達が集まるこの魔法学院で教員をやれているのだ。実際に他の同世代の魔法士達よりも実力はあった。
それをいきなり現れた謎の少女が倒してしまったのだ、これで驚くなと言うほうが無理だろう。
(一体何者なのだ、あの少女は。あれほどの実力があるのなら誰かの目に留まってもおかしくない。なぜ今まで誰も騒がなかった)
疑問がゲルハルトの頭の中を駆け巡るが答えは出ない。
「ゲルハルト様」
声をかけられ我に返る。声をかけてきたのはこの得体の知れない娘を連れてきたアリアだった。
「私の弟子、ユリアは十分に実力を示したと思います。教員として実力は申し分ないと思いますが」
「……ああ、そうだな」
悔しいが認めざるを得ない。実力者であるウィルを簡単に倒してしまったのだ、ここにいる試験を担当した他の教員からも文句が出ない以上、彼女の採用を認めるしかないだろう。
「ユリア・レイクロードを正式に魔法学院の教員として認める。他の者も異議はないな」
ゲルハルトの問いかけに反対するものはいない。満場一致でユリアの採用は決定された。
「ありがとうございます、ゲルハルト様。では試験の結果も出たことですし私とユリアはこれで失礼しますね」
アリアとユリアはやるべきことを済ませるとさっさと出て行ってしまった。試験を担当した教員達も退出し、残っているのはゲルハルトのみとなった。
「あのウィルの技を打ち消した時、あの娘は相手の魔法に干渉していたな」
ウィルは気がつかなかったようだがユリアはあの時ウィルの魔法に干渉することによって氷漬けになるのを防いでいた。しかしそんなことが出来るのは魔法士として相手より実力が上の場合だけだ。あの少女はその一点だけでウィルより実力があること示したのだ。
「ふうむ」
誰もいない部屋にゲルハルトの唸り声が響いた。
「あの娘が何者であるか興味が湧いてきたな。少し探ってみようか。まったくアリアの奴め、次から次へととんでもないものを連れて来てくれる」
言葉の内容は困っているように聞こえるがゲルハルトの表情はどこか楽しそうだ。そのまま彼はウィルを医務室に連れていくように外に待機していた部下に命じた後、校長としての仕事に戻った。
*
「お疲れ様」
王都のレイクロード邸に戻る馬車の中でアリアが労いの言葉をかけてきた。
「いや別に対して苦労はしていないよ。戦った相手もそれほど強くはなかったし」
「あなたからしたらそうでしょうけれどあのウィルだって相当の実力者よ。それを簡単に倒しちゃうんだからあなたのほうがおかしいのよ」
「そうなの?」
「まあ彼は私達と違ってあの戦いを経験していないから爪が甘いところがあるのは否定しないけれど。それでも弱い魔法士ではないのは確かよ」
「ふうん」
もしそうならこの時代の魔法士の実力はこんなものなのかなとユリアは少し残念な気持ちになってしまった。
「まあ彼はあの中では一番弱いからね。あまり調子に乗らないように」
「調子には乗ってないよ、ただ現代の魔法士の実力はこんなものかって少し残念に思っただけ」
ユリアの言葉にアリアは呆れたように溜息をついた。そんな反応をされても事実は事実なのだから困ってしまう。
「そういうところ本当に治らないわね。あまり周りと揉めないでよ。あなたも魔法となると見境がなくなるところがあるから」
「気をつけるよ」
「後さ」
「?」
「最初ありがとう。私のために怒ってくれて」
「別にいいよ、僕がむかついたから勝手にやったことだし」
ユリアの言葉を聞いたアリアは笑顔になる。どうやら嬉しかったらしい。アリアが笑ってくれるなら怒った甲斐があったなとユリアは思った。
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